衝撃波の科学寄稿 高山 和喜 氏
第1回:衝撃波はどこに現れるか
2005/09
2. 衝撃波類似現象(その2)
底の浅い流路を伝わる水波の伝播も衝撃波類似現象として知られている。この波動に現れる等価音速は水深の平方根に比例するので、岸に近づくほど等価音速は小さくなる。その結果、波の伝播速度はほぼ一定なので、波の伝播速度は岸近く超音速になり、切り立った衝撃波類似の形態を示す。津波もこのような底の浅い水路を伝わる水波で近似され、津波の挙動は海底の地形を考慮に入れた数値模擬法が確立している。1997年、奥尻島の西岸が北西方向から押し寄せた大津波に襲われ大勢の人が死亡した。藻内では、30mを超える高さの電線に海藻が掛かっていた。局所的に津波の波高は30mに達したと思われる。しかし、藻内以外のところで計測された津波の波高は20mを超えなかった。藻内の海岸は岩礁地帯で、海底地形が影響して異常波高が生じたとの説明もあるが、水波が斜めに底の浅い岸に押し寄せると、岸で波が反射するとき、空気中で斜め衝撃波が反射して現れるマッハ反射(図2-4)と言う特異的な形態になる。空気中では、形態は反射波背後の圧力を増大させるが、水波では波高が高くなるので、藻内で起こった異常波高は局所的な水波のマッハ反射の出現ではないかと推定している。 |
私達の身の回りには衝撃波類似現象がある。特に、株価の暴落や急騰に代表される人間の経済活動は非線形波動と共通の挙動を示し、もし、経済活動を記述する数理モデルがあったとしたら、複雑な連立方程式の形をとり、随所に非高次の非線形項を含んでいるに違いない。
|