HOMEテクニカルレポート衝撃波の科学

衝撃波の科学寄稿 高山 和喜 氏

第1回:衝撃波はどこに現れるか

2005/09

1.非線形波動

 流体力学のハイライトは、流れに現れる様々の非線形現象を解明し、宇宙機、航空機や様々の流体機械の実用設計のデーターベース構築に貢献することである。しかし、非線形と言う術語はあまりに抽象的である。あるとき、アメリカとドイツの友人に、流体力学に視点を置いて「非線形と言う言葉を誰にでも分かるように説明できるだろうか?」と聞いた。ドイツの友達は理論家だったので、「紙とペンが必要だ。基礎式を書かなければ・・・」と言った。アメリカの友達は「倒立振り子の振動がそれだ。」と実験家の立場で主張した。私は「非線形と言うのは、金持ちがさらに金持ちになる原理だ。」と言った。

図1-1 社会生活に現れる非線形効果 非常に貧しい暮らしで収入が増えれば食べ物を買う。さらに収入が増えれば生活の質を向上させ、収入増加は豊かな生活を指向させ財政投資が始まる。物欲の目指す所は果てしなく、収入の増加は暮らし向きばかりではなく時に人生観すら変える。金持ちがますます金持ちであり続けることは、社会生活に現れる非線形効果である(図1-1)。

 歴史の流れも顕著な非線形を示す。人類が約4~5百万年前にアフリカに出現した後世界各地に進出し、自給自足の採取経済から潅漑技術と農耕の進歩に伴って原始社会に農民以外の職種を作るゆとりが出来て、国家が形成され王権が確立した。王朝の勃興と没落、侵略と征服を繰り返し、異種文明の相互干渉を経て近世に至り、人類は自らを滅ぼす技術を持つ現代にまで発展した。これはエネルギーが連続的に注入され続ける系の進化に類似し、系は複雑になり非線形効果を発現する。

 なお、流体力学者は既に出来上がった数理モデルを通して現象を解釈するよう訓練されているので、数理モデルのない衝撃波類似現象は避けている。





前へ
目次    
第1回 01 02 03 04 05
第2回 06 07 08 09 10
第3回 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
第4回 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
第5回 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44
第6回 45 46
     
次へ