HOMEテクニカルレポートCAEと品質工学

CAEと品質工学寄稿 芝野 広志 氏  高木 俊雄 氏  平野 雅康 氏

実践編:CAEと品質工学を融合した事例

2005/08/24

4. ポイント2:パラメータ設計の計画とデータ解析
―ノイズの取り方、SN比の利用―

 シミュレートする特性値が決まったら次は設計定数である制御因子とバラツキの原因になるノイズ(誤差因子)を決める。
  基礎編に述べたが、制御因子とは設計者が自由に選択決定できる要因で、設計定数などである。これはできるだけ多くのものを取り上げるのが望ましい。ノイズ(誤差因子)はこれと対照的に設計者が自由にできない要因で、ユーザーの使用環境や劣化などである。応用編で述べたが、CAEの場合は設計定数の水準値の前後にノイズを採れば良い。

表2 制御因子と水準 直交表L18に割り付けた、研究する制御因子を表2に示す。制御因子は紙が通る経路の寸法緒言である。
表3 調合誤差因子 直交表の外側に割り付けた誤差因子を表3に示す。誤差因子は制御因子の前後に水準をとり、調合した。
表4 データ例 以上の計画に従って直交表実験番号ごとに解析されたデータ例を表4に示す。数値は実験番号1の結果である。

 基礎編のポイント2で述べたが、品質工学では目的の特性値を如何に達成するかということよりも先に、ノイズの影響による機能のバラツキをなくす(品質工学では安定性、機能性と呼ぶ)検討を勧めている。これを2段階設計と呼ぶが、機能のバラツキをなくしてから機能のバラツキとは関係ない制御因子で目的特性に合わせ込むのである。

表5 偏差表 従って、得られたデータからまず安定性を検討する。表4に示したデータを使って、安定性の評価尺度であるSN比の計算を示す。その後、基準線の位置ごとに平均値を計算して、各データの平均値からの偏差(表5)を求める。

 続いて表5を使って、SN比(ゼロ望目特性)を計算する。

 
 

 この事例では目的特性への合わせ込み(チューニング)は必要ないので感度計算は行わなかった。

図4 SN比の要因効果図 以上の計算を全18実験に施し、得られた18個のSN比から制御因子毎に水準別SN比の平均値を求める。その結果をグラフにして図4に示すが、これを要因効果図と呼んでいる。




前へ <1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19> 次へ