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CAEと品質工学寄稿 芝野 広志 氏  高木 俊雄 氏  平野 雅康 氏

基礎編:品質工学の考え方と活用のポイント

2005/06/20

2. 品質工学の目的

-品質工学はマネジメントの道具-

 筆者が品質工学に出会ったのは10年前であるが、品質工学を実際の業務に活用する設計技術者の立場で勉強してきたことで、品質工学の目的や狙いが、技術者の考えている点とは少し違うところにある事が理解できた。品質工学は我々に新しい製品や技術を確立・改善させるためにあるのではなく、無駄な仕事をさせないことが目的なのである。

 多くの技術者は、世の中に無い新しくて魅力的な技術や製品を生み出すことに生きがいを感じている。そのために毎日新しいアイデアの創造と具現化への評価テストを繰り返している。

 品質工学には新しいものを生み出す力はない。品質工学をいくら勉強しても、新しい技術や製品を創造することは出来ない。品質工学は、技術開発や製品開発を効率よく進めるための方法論であり道具である。これは技術者が無駄な仕事をしないようにするために活用するのもので、マネジメントのための道具だからである。実際に技術者の日常業務を調べると、結構無駄な仕事に携わっている時間が長いことがわかる。

-市場対応や量産対応も無駄な仕事-

 たとえば工場の出荷段階では問題の無かった機械が市場でトラブルを起こす、小スケールでは問題の無かった設備が大型の量産設備になると良品を予定通り作れない、といった問題は現場や市場では対応できず、すべて担当の技術者に跳ね返ってくる。市場対応や量産対応と言った業務は、一見すると技術者の正当な仕事のようだが、すべて無駄な仕事、本来なら取り組みたくない仕事である。なぜなら、製品を市場へ出すために取り組んだ時間やお金、小スケールでの実験がすべて無駄になっているからである。そればかりか、本来なら取り組めたはずの新しい仕事が遅れてしまうことによる損失/ロスが発生する。



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