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CAEと品質工学寄稿 芝野 広志 氏  高木 俊雄 氏  平野 雅康 氏

基礎編:品質工学の考え方と活用のポイント

2005/07/19

7.まとめ

 品質工学は、技術者に無駄な仕事をさせないための道具であると述べた。自然現象の解明や原因を突き止めるための道具ではない。それらは科学者の仕事であり、そのためには化学や物理学、数学や統計学が役に立つ。高校や大学で勉強してきた自然科学は、科学者が仕事をするための道具と考えればよい。

 技術者は、科学者が見出した自然界の法則や原理を利用して、自然界に存在しない製品やシステムを創造することで、人々の生活を改善し、社会の発展に寄与している。したがって、技術者の仕事には経済性やスピードが要求される。科学者とは仕事の内容が異なっているのであるから、使う道具も違って当然である。

 研究開発の初期の段階で基本機能を考え、量産工程や市場でも再現する信頼性の高い仕事を技術者が日常業務として実行するようになれば、設計変更や市場対応といった無駄な仕事は減り、技術者が本来取り組むべき創造性の必要な業務に時間を費やせる。

 品質工学の原点、その目的は我々技術者に無駄な仕事をやめさせる事である。そして、技術者達が新しいものを生み出すための、自由な発想を膨らませる時間を増やすことにあると思う。そのことを技術者が理解できれば、品質工学を使った開発業務に違和感無く取り組むことができ、品質工学も広く技術の世界に普及すると確信する。

 さて、ここまで品質工学の根底にある理念や効用について述べてきたが、品質工学の研究は日進月歩の勢いで進められている。とくに最近の品質工学を使った研究では、実物の試作も無駄な仕事と考えられるようになってきた。コンピュータシミュレーション(CAE)を利用した技術開発である。しかし、CAEを利用するだけでは無駄な仕事は減らないのである。なぜなら、まずいマネジメントの下でCAEを使うと、無駄なCAE業務が増えるからである。無駄なCAE業務を防止するには、3つのポイント、

(1)実験に用いる特性値の問題
(2)2段階設計の考え方
(3)直交表を使う目的

が大きく関係しているのである。このことを次編に詳しく述べる。



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