アンテナの歴史と未来 寄稿 安達 三郎 氏
第6回:波及
15. パーソナル無線通信の勃興と隆盛
固定無線通信の基幹回線は光有線通信に置き換えられ、無線通信は次第に衰微するかと思われた時まさに救世主のように現れたのが今日隆盛を極めている移動体通信、特に個人を対象としたいわゆるパーソナル通信である。“いつでも、どこでも、だれとでも”の標語に表されるように、時間と空間の制限を越えてあまねく個人が通信の利便性を享受したいと言う欲求を満たしてくれる象徴としての携帯電話が、あたかも忽然と社会を席巻したように思われた。 しかし、移動体通信の研究の歴史は最近に始まったのではなく、もともと無線通信の特長は実は移動通信にあったと考えられる。なぜなら、送受信の端末が自由に移動する限り、そこでは無線に頼らざるを得ないからである。
1970年代後半から、自動車電話、携帯電話、無線呼び出し方式などの移動通信の地道な研究が行われていた。当初、端末装置は大掛かりのもので携帯と呼べるものではなかった。携帯無線端末の小形軽量化を可能にしたのは、半導体集積回路を始めとするマイクロエレクトロニクスなどのハード面の発達に加えて無線通信方式、信号処理技術、帯域圧縮技術、変復調方式、フェージング対策技術、誤り訂正技術、暗号技術など多くのソフト面の技術開発があったればこそである。 1980年代後半にサービスが開始され たアナログ携帯電話を第一世代、90年代に始まったデジタル携帯電話を第2世代(日本のPDC方式など)、日本・欧州方式のW-CDMA(広帯域符号分割多元接続)や米国方式のCDMA-2000携帯電話などを第3世代と呼んでいる。携帯電話には、現在電話だけでなく、インターネット接続(Iモードとよばれる)が盛んに行われeメールの他、位置情報や画像伝送など各種データ通信サービスが付加されその発展はまことにめまぐるしい。
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