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アンテナの歴史と未来 寄稿 安達 三郎 氏

第6回:波及

14. 光ファイバ長距離通信の出現と隆盛

 レーザは1960年、メイマンによってはじめて実現された。また、1970年には林(ベル研)らが半導体レーザの常温連続発振に成功した。光ファイバの考えはカオ(英、1968)によってもたらされ、1972年米国コーニング社の研究者によって、石英ガラスを用いた20dB/kmという当時としては画期的な低損失ファイバが開発された。これらによって光ファイバによる長距離通信の可能性が急激に高まったのであった。

図26:単一モード光ファイバの構造と光の伝播機構

以後幾多の開発努力があって、1979年には今日のNTTによって理論的限界に近いとされる0.2dB/km(1.6μm波帯)のファイバが作られるようになった。図26は長距離通信用の単一モードファイバの構造と光の伝搬機構をわかり易く図示したものである。

 関連する多くの光エレクトロニクスの発展により1980年代後半には電波による通信をはるかにしのぐ大容量の長距離光通信が可能であることが明らかとなった。さらに驚くべきことには、大陸間の海底光ファイバ通信方式が実現するに至って、性能、経済性、安定性において衛星通信を凌駕することになった。静止衛星における時間遅れが無いことも大きなメリットであった。このように光による有線通信の優位性が一般に喧伝され、将来無線通信は災害時のための補助的役割を担うに過ぎないものになるであろうとまで言われた。

 以上のように、光通信は始めに長距離通信においてその偉力を発揮したのであるが、今日ではそれにとどまらずインターネットの爆発的な普及に伴って光LANが広く実用され、近い将来一般家庭にまで光ファイバが導入(FTH)され、双方向高速光通信が日常的なものになることが予想される。


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