アンテナの歴史と未来 寄稿 安達 三郎 氏
第2回:萌芽
5. 短波通信の発達
アメリカでは1918年に波長200m以下の中短波帯をアマチュアに開放した。これがもとで短波が意外にも遠方通信に適していることが発見され、短波帯全盛時代のきっかけを作った。短波帯の遠距離伝搬は電離層反射によることがまもなく明らかとなり(1921年)、その特性が調べられた。それまでの大電力長波帯海外通信は急速にすたれ短波海外通信が主流となった。
短波通信では波長が短いことを利用した指向性配列アンテナが多く用いられた。これは半波長程度のダイポールアンテナを多数、平面カーテン状に配列し、各アンテナからの信号を受信機に寄せ集める構造になっている。このようなアンテナはビームアンテナと呼ばれていた。波長が長波に比べて短いだけに指向性を高めることが容易で、その結果電離層の変動によるフェージング軽減対策には有利となる。
また、図9に示すような菱形アンテナ(ロンビックアンテナ)も用いられた。ウェーブアンテナと同様に600オーム程度の抵抗で終端すると、アンテナ導体にはほぼ進行波電流が流れ、指向性は大地に対してある仰角をもって前方に鋭く向く。
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