アンテナの歴史と未来 寄稿 安達 三郎 氏
第4回:展開
10. マイクロ波アンテナ
b )マイクロ波アンテナの種類
マイクロ波アンテナの代表的な3つの分類を図18に示す。同図(a)は導波管の切り口を徐々に広くして自由空間に整合させるようにしたホーンアンテナ、(b)は小形ホーンアンテナ(この場合1次放射器と呼ぶ)からの放射波を反射鏡で反射させて平面波に変換させるリフレクタアンテナである。 ヘルツはこの形のアンテナを用いて実験を行った。(c)は1次放射器からの放射波を、光におけると同様にレンズを通して平面波に変換するアンテナである。
ホーンアンテナには図19に示すように方形導波管の1つの面内(H面内またはE面内)にのみフレアした扇形ホーン(図a、 b)と、両面内にフレアした角錐ホーン(図c)がある。図(d)は円形導波管で給電された円錐ホーンアンテナである。これらのホーンアンテナはマイクロ波アンテナの最も基本的なアンテナで、その基本的特性は最初にバローらとサウスワースによって研究された(1939年)。 ホーンアンテナの出口である面を一般に開口(面)と呼び、このようなアンテナを開口(面)アンテナという。リフレクタアンテナやレンズアンテナに対しても開口を考えることが出来るのでこれらも同様に開口アンテナの一種である。 開口アンテナからの放射波を求めるには、開口上の分かった電磁界を基にして理論的に計算することが出来る。それをホイヘンスの原理という。
図20に、よく用いられるリフレクタアンテナの種類を示す。(a)は最も標準的なパラボラアンテナである。(b)は一次放射器がパラボラ反射鏡からの反射波を遮るのを防ぐ目的で、パラボラ反射鏡の上側の一部だけを使うアンテナでオフセットパラボラアンテナと呼ばれる。 (c)はオフセットパラボラとホーンアンテナを組み合わせたものでホーンリフレクタと呼ばれる。(d)、(e)、(f)はパラボラ主反射鏡と副反射鏡の組み合わせからなる複反射鏡である。 (d)と(e)の副反射鏡は双曲面となり、(f)では楕円面となる。前者のアンテナはカセグレンアンテナ、後者はグレゴリアンアンテナと呼ばれる。カセグレンアンテナはこれまで衛星通信用の地上局アンテナとして特に広く用いられて来た。
電波においても光学レンズと同様にレンズ媒質を用いたレンズアンテナが考案された。その例を図21に示す。レンズ媒質の等価屈折率、nが1より大きい場合(誘電体レンズ等)、レンズ曲面は双曲面となり、1より小さい場合(平行金属板導波管からなるレンズ等)は楕円面となる。 レンズが厚く、そして重くなるのを避けるため光学レンズと同様に、(c)のようにゾーニングを施したものも用いられた。
特色あるレンズアンテナとして図22に示すルーネベルグレンズアンテナがある。 レンズの誘電率が球の中心で2、表面で1となる2乗分布をしているとき、レンズの表面(焦点)に置かれた一次放射器からの電波はレンズ内の屈折によって平面波に変換され反対方向に放射される。 したがって1次放射器をレンズの表面に沿って移動させることによりアンテナビームを走査することができ、逆に違った方向から到来する複数個の電波をそれぞれに対応する複数個の1次アンテナで同時受信することが出来る。 誘電率が連続的に変化するレンズを製作するのは容易ではないので、ふつう誘電率が階段状に変化する複数個の均質層レンズを重ね合わせて近似することが行われる。