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アンテナの歴史と未来 寄稿 安達 三郎 氏

第3回:探究

8. マイクロ波技術の発達

 マイクロ波とは、3GHzから30GHz、波長にして10cmから1cmのいわゆるセンチ波を指すことが多いが厳密な定義はない。場合によっては1GHzから3GHzのあたりの波もマイクロ波に含められることもある。

 1920年、バルクハウゼンとクルツが真空管で40cmの波長帯の発振に成功して以来マイクロ波の研究が次第に盛んになった。マイクロ波技術にとって不可欠な伝送路はいわゆる導波管である。 導波管とは多くは直方形あるいは円形の断面を持つ金属の管でこの中に電磁波を閉じ込めて効率良く伝送することが出来る。 金属パイプ内の電磁波の伝送については古くは1897年のレーリーの理論があり、パイプの径で決まる 固有の周波数より高い周波数でのみ伝搬が可能であることが知られていたが、その後長い間金属パイプを電磁波の伝送媒体として使用しようという積極的な考えは生まれなかった。 理論的な研究に関してはMITのバローやベル研究所のカールソン、シェルクノッフ等が先駆的であった(1936年)。実験的研究ではベル研究所のサウスワースの研究が光っていた。導波管だけでなくマイクロ波の測定に必要な種々のコンポーネントの開発に大いに貢献した。

図14:クライストロンの原理 1939年、バリアンによるクライストロンの発明によって発振源の入手が容易となるとともにマイクロ波技術が急速に発展した。 これが最初に威力を発揮したのが第2次世界大戦における電波兵器だったことはまことに皮肉なことであった。図14にクライストロンの動作原理を示す。電子ビームの速度変調による集郡作用を利用したものである。



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