高圧ガス設備等における配管系の耐震設計と解析寄稿 本橋 賀津彦
第3回(最終回):ノズル接合部の耐震評価について
2005/05/16
3.2 当て板
当て板がある場合、容器厚さに当て板厚さを加えた厚さでノズル接合部の評価を行なうほか、当て板外縁では容器厚さのみで評価を行ないます。

3.3 ノズル高さ
配管系の解析では、ノズルとの取り合い点までをモデル化し、この点を固定点とする場合が多いと思います。固定点で得られる反力(ノズル荷重)はノズル先端部での荷重となります。バイラード法では、ノズルと容器との接合点での荷重が必要であるため、ノズル先端部に作用するせん断力(V)とノズル高さ(H)からなるモーメント成分(V・H)を加算しておく必要があります。

3.4 ASME規格との比較
内圧応力算出式
バイラード法は、外力による応力の算出方法を示すものであり、内圧による応力の算出式は示されていません。高圧ガス設備等耐震設計指針では、特定設備検査規則より算出式を引用しています。以下にASME Section VIIIのDivision 1および2と合わせて、内圧応力の算出式を示します。高圧ガスはASMEのDiv. 1と同じになっています。
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合成応力算出式
バイラード法では、それぞれの応力成分を合成して最大せん断応力理論により応力強さを算出しています。高圧ガス設備等耐震設計指針でも同様に最大せん断応力理論により応力強さを算出しています。以下にASME Section VIIIのDivision 1および2と合わせて、合成応力の算出式を示します。なお、ASME Div. 1は最大主応力説を採用しています。
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3.5 適用範囲
前述の3.1節のようにバイラード法にはすべての形状寸法に対する図表が示されている訳ではなく、その範囲には制限があります。つまり、極端な薄肉や厚肉の場合や、容器径に対してノズル径が極端に大きな場合や小さな場合などにはバイラード法は適用できません。また、図表によっては、γの値によってβの適用範囲が違うものもあります。その例として図表1Cを以下に示します。この図表ではγの値が大きくなるとラインが短くなりβの適用範囲が狭くなっています。したがって、極端な寸法でなくても、形状パラメータが図表の範囲外となる場合があります。このような場合は、有限要素法等による詳細解析が必要になる場合があります。あるいは、円筒胴であればWRC 297で対応できる場合もあります。

3.6 座標系の違い
バイラード法(WRC 107)やWRC 297では、独自の座標系が用いられています(WRC 107と297とでも座標系が異なります)。したがって、WRC 107やWRC 297でノズル接合部の応力算定を行なう場合には、配管系の解析で得られたノズル荷重値をそれぞれの座標系へ変換しなければならないため、十分注意が必要です。

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