高圧ガス設備等における配管系の耐震設計と解析寄稿 本橋 賀津彦
第3回(最終回):ノズル接合部の耐震評価について
2005/05/16
3. バイラード法の概要
バイラード法(WRC 107)とは、薄肉シェル理論に基づいた簡易手法で、無次元化された形状パラメータを基にグラフから読み取った応力係数を用いてノズル接合部の応力を算出します。以下にバイラード法の概要を示します。
3.1 バイラード法
応力算定箇所(円筒胴/球形胴)
バイラード法では、下図に示すノズル接合部近傍の内外面の応力を算出して評価を行ないます。評価点はAからDの4点あり、それぞれ容器の外面(U)と内面(L)の計8点での評価を行ないます。
![]() 円筒胴ノズル |
![]() 球形胴ノズル |
形状パラメータと適用範囲(円筒胴/球形胴)
バイラード法では、容器やノズルの寸法から無次元化したパラメータを求め、このパラメータをもとに図表より応力係数を読み取る必要があります。以下にバイラード法で使用する形状パラメータを示します。図表にはすべての形状寸法に対する図表が示されている訳ではなく、その範囲には制限があります。つまり、極端な薄肉や厚肉の場合や、容器径に対してノズル径が極端に大きな場合や小さな場合などにはバイラード法は適用できません。
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ro:ノズル外半径、 *1) 円形アタッチメントの場合 |
応力係数とその読み取り(円筒胴/球形胴)
バイラード法では、外荷重の種類や応力成分の種類にしたがって個別の応力係数があり、それにしたがって多数の図表が用意されています。以下に応力係数の種類と関連する図表番号を示します。なお、球形胴については中空アタッチメントの場合の図表番号を示してあります。
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P:半径方向荷重、MC:円周方向の曲げモーメント(円筒胴)、ML:長手方向の曲げモーメント(円筒胴)、M1, M2:第1および第2方向の曲げモーメント(球形胴)
バイラード図表の読み取り(例:円筒胴、図1B-1)
容器内径975mm、容器板厚25mm、ノズル外径308mmの場合の塔槽類ノズルを例にとり、円筒胴における応力係数の読み方を以下に示します(容器平均半径Rm:500mm、ノズル外半径ro:154 mm)。参照しなければならない図表は多数ありますが、ここでは、図1B-1を例にとり説明します。形状パラメータは以下のようになります。


図表にはγ=20のラインは示されていませんが、γ=15およびγ=25のラインの中間にあると想定します(下図の点線部分)。β=0.27の縦線とγ=20の点線が交差するポイントの縦方向のグラフ値(0.028)を読み取ります。この値が応力係数です。
![]() ![]() |
なお、上記は円筒胴の場合の図表の読み取り方法ですが、球形胴の場合は図表の形式が全く異なり、読み取り方法も異なります。
応力算出(円筒胴)
円筒胴の応力算出シートの例を以下に示します。それぞれの項目について応力算出式にしたがって求めた値を右側のAUからDLの欄に埋めていきます。その際、シートに示した符号(±)を乗じます(符号のない欄には記入しません)。応力算出式の×記号の左側が図表より読み取った応力係数になっています。せん断については応力係数に関係なく算出できます。なお、内圧応力の算出方法については後述を参照してください。
次に、円周方向、長手方向、せん断ごとにシートの値を合計し、円周方向応力σφ、長手方向応力σχ、せん断応力τの欄に記入します。
最後に、求められた円周方向応力σφ、長手方向応力σχ、せん断応力τから、応力強さSを算出します。
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VC:円周方向のせん断力、VL:長手方向のせん断力、MT:ねじりモーメント
![]() |
<1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12> | ![]() |