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建設系エンジニアのための地下構造物三次元FEM事始め伊藤忠テクノソリューションズ(株) 野口 利雄

第1講 ボックス地中構造物の3次元設計アプローチ

三次元解析での隅角部外側地盤領域への影響(Step4)

はじめに

矩形構造物の三次元解析を行う場合、壁の法線方向に作用する荷重を考慮することが一般的です。しかし、実際の三次元形状、周辺地盤を考えてみると図1に示すように壁隅角部の外側にも地盤は存在します。壁に対して法線方向の荷重のみ考慮する場合は、この隅角部外側の地盤は荷重として加味されないことになります。その状態は図2に示すような状態と同じです。

(1)棒(トラス)要素
(2)ばね要素
 
(3)三次元ジョイント要素
(4)ソリッド要素
図1 周辺地盤を含めた三次元形状(1/4領域) 図1 周辺地盤を含めた三次元形状
(1/4領域)
図2 壁隅角部外側の地盤を考慮しない状態(1/4領域) 図2 壁隅角部外側の地盤を考慮しない状態
(1/4領域)

ここでは、この壁隅角部外側地盤の有無により、地中構造物に発生する断面力の影響について調べてます。この場合、壁隅角部外側地盤を考えた荷重を構造物へ直接作用させることは困難ですので、上図のような2つの解析対象について、地中構造物の周辺地盤をFEMソリッド要素でモデリングし、自重を作用させて載荷します。

モデリング及び条件設定

解析対象は図3のような地中構造物で、設計条件を表1のように設定しました。

図1 解析対象構造物の形状、荷重 図1 解析対象構造物の形状、荷重 
表1 設計条件
土質  
粘性土
地下水位 GL-(m)
2
N値  
40
内部摩擦角  
35
単位体積重量 (kN/m3)
18
弾性係数 (kN/m2)
100000
側圧係数  
0.43
載荷幅 (m)
8
地盤反力係数 (kN/m3)
35738
土被り (m)
6
躯体高 (m)
6
剛域 (m)
0.4
Pv1 (kN/m2)
108.0
Ph1 (kN/m2)
29.0
Ph2 (kN/m2)
49.5
Phw1 (kN/m2)
40.0
Phw2 (kN/m2)
100.0
Pv2 (kN/m2)
100.0

上記の解析対象を1/4対称でモデル化し、以下の条件(2ケース)のモデルを用意しました。地盤のモデル化範囲については、上下方向に構造物高さの1倍を、水平方向に構造物幅の3倍を設けました。隅角部外側に地盤があるケースをS1、地盤がないケースをS2とします。

図4 壁隅角部外側の地盤があるモデル ケース名 ; S1
 
図5 壁隅角部外側の地盤がないモデル ケース名 ; S2
図4 壁隅角部外側の地盤があるモデル
ケース名 ; S1
  図5 壁隅角部外側の地盤がないモデル
ケース名 ; S2

解析結果

図6、7に両ケースの曲げモーメント図を示します。 (周辺地盤を除き、地中構造物のみポスト処理しています。)

 
     
図6 ケースS1の曲げモーメント分布
 
図7 ケースS2の曲げモーメント分布
図6 ケースS1の曲げモーメント分布   図7 ケースS2の曲げモーメント分布

図8、9に両ケースの軸力図を示します。(周辺地盤を除き、地中構造物のみポスト処理しています。)

 
図8 ケースS1の軸力分布
 
図9 ケースS2の軸力分布
図8 ケースS1の軸力分布   図9 ケースS2の軸力分布
図10 ケースS1の変形図
 
図11 ケースS2の変形図
図10 ケースS1の変形図   図11 ケースS2の変形図
 

解析結果のまとめとして、図13に上下スラブ及び側壁の曲げモーメント分布グラフを、図14に軸力の分布グラフを示します。

着目断面位置は右図に示す位置です。



図12 隅角部外側地盤の有無による曲げモーメントの差 図12 隅角部外側地盤の有無による曲げモーメントの差
図13 隅角部外側地盤の有無による軸力の差 図13 隅角部外側地盤の有無による軸力の差

考察

解析結果より以下の事柄が言えます。

  • 曲げモーメントは断面1、2ともにほとんど変化はありません。
  • 軸力は断面2ではほとんど変化はありませんが、断面1では、最大値が最小値に対して16%大きく算出されています。
  • 軸力の増加は上スラブ、側壁、下スラブの順に大きくなっており、深度が深くなるほど増大することが読み取れます。

隅角部外側地盤は構造物に対して曲げには影響せず、軸力を増加させることがわかります。今回の解析で算出された軸力の増加量は設計に反映させるべき値には至らないと考えられますが、大深度構造物の設計時には検討が必要となる場合も想定できます。


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