レーザー照射による超音波伝搬シミュレーション
目的
試験体へレーザーを照射した際に、照射部分の熱弾性効果により超音波が発生する。これを利用すれば超音波センサを接触させることなく試験体へ超音波を励起することができる。これは超音波を利用した非破壊検査の分野において、手の届かない場所、効果的にセンサを設置することが難しい曲面上、高温等危険な試験体への検査を行うための技術として注目されている。
今回、鉄材の平面上にレーザーを照射し、それによる熱励起および生じた超音波伝搬をComWAVEによりシミュレーションする。また同一の条件でレーザーを照射した際に生じる超音波の指向性を理論的に算出した文献[1]との比較を行い、妥当性を検証する。
使用した機能
不等間隔要素設定
レーザー励起振動解析機能
解析モデル
2つのステップに分けて解析を行う。
- レーザー熱励起解析
レーザー照射部分周辺をモデル化し、熱荷重解析を行う。
入力:レーザー熱入力
出力:温度、熱荷重 - 超音波伝搬解析
熱荷重により生じた超音波の伝搬を解析する。
入力:熱荷重
出力:変位、圧力ほか

材質の物性値
縦波速度 | 5.842e+3 [m/s] |
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横波速度 | 3.251e+3 [m/s] |
密度 | 7.8e+3 [kg/m^3] |
減衰 | 無し |
熱伝導率 | 33.5 [W/(m・K)] |
比熱 | 481.4 [J/(kg・K)] |
線膨張係数 | 20.2e-2 [m/m・K] |
レーザー設定
パルス幅 | 10e-8sec |
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周期 | 2.0e-6sec |
光源位置 (x,y,z) | (0,0,2.5) [mm] |
照射位置 (x,y,z) | (0,0,2.0) [mm] |
照射半径 | 0.5mm |
熱流密度 | 1.0e+11 [W/m^2] |
吸収率 | 1 |
解析条件
要素サイズ | 2e-2mm |
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要素数 | 25,000,000 |
伝搬時間 | 2e-6sec |
ステップ数 | 2,000 |
マシンスペック
OS | Windows 10 |
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CPU | Intel(R)Core™ i7-8750H CPU @ 2.20GHz 2.21GHz |
GPU | なし |
計算時間 | 3567.28s |
解析結果
レーザー熱励起解析
熱励起解析の結果を以下に記す。

10ns時の温度分布

10nsにおける熱荷重分布
超音波伝搬分析
参考文献による、超音波の指向性の理論解、ComWAVEによるシミュレーション結果を以下に記す。縦波および横波指向性分布図と結果がよく対応していることが分かる。



まとめ
今回、ComWAVEによって鉄材へのレーザー照射による超音波伝搬のシミュレーションをを行った。参考文献[1]上の理論解とシミュレーション結果との比較を行ったところ、縦波および横波指向性において近い様子が見られた。ComWAVEを利用して超音波伝搬の様子を可視化することで、最適な条件設定に役立てられると考えられる。
参考文献
[1] C B SCRUBY and L E DRAIN, LASER ULTRASONICS, Taylor & Francis Group, 1990.