電磁超音波センサ(EMAT)によるアルミ材中の超音波伝搬解析
目的
今回、EMATによる超音波送受信実験および数値解析を行った文献[1]を3次元モデルとしてComWAVE上で再現し、超音波伝搬のシミュレーションを行った。文献とシミュレーション結果の波形を比較し、シミュレーションの妥当性を検証した。
解析モデル・解析条件
次の図に試験体、EMATの配置条件を、表にパラメータを記す。

解析モデル
磁石
残留磁束密度 | 1.3 [ T ] |
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磁化 | 1034507 [A/m] |
コイル
直径 | 0.4mm |
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層数・巻数 | 1層7回巻 |
印加電流 | 1MHz,11Appの正弦波を1周期 |
アルミ
電気伝導率 | 4e7 [S/m] |
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縦波音速 | 6.42e6 [mm/s] |
横波音速 | 3.12e6 [mm/s] |
密度 | 2.7e-6 [kg/mm3] |
解析条件
マシン環境
項目 | 設定値 |
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OS | Windows Server 2012 R2 |
CPU | Intel Xeon CPU E5-2650 v2@2.60GHz 2.60GHz |
メモリ | 128GB |
静磁場解析(送信・受信共通) 解析条件
項目 | 設定値 |
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節点数 | 194824 |
要素数 | 574273 |
自由度(実数) | 574273 |
計算時間11分、使用メモリ11GB
渦電流解析(送信・受信共通) 解析条件
項目 | 設定値 |
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節点数 | 194840 |
要素数 | 574305 |
自由度(複素数) | 661248 |
周波数 | 1MHz |
計算時間14分、使用メモリ28GB
超音波伝搬解析 解析条件
項目 | 設定値 |
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要素サイズ [mm] | 0.05~0.25 |
要素数 | 6912000(=200×144×240) |
時間ステップΔt [s] | 6.23053e-009 |
ステップ数 | 4814 |
全解析時間 [s] | 3e-5 |
計算時間1.5時間(CPU4並列)、使用メモリ3.6GB
使用している機能
ComWAVE-EM(ComWAVE EMATオプション)
- 電磁場解析(静磁場解析、渦電流解析、ローレンツ力算出)
ComWAVE本体
- 不等ピッチメッシュ
- ローレンツ力による超音波励起
- 誘導電界v×B出力
EMAT解析機能
解析モデル
EMATのモデルを作成し、静磁場解析、渦電流解析、ローレンツ力計算を行う。今回ComWAVEの標準機能である不等ピッチメッシュ生成機能を使用し、アルミ表面の厚さ方向のメッシュサイズを表皮深さ相当に対し数分割するよう細かくした。

送信側のデータとして磁場解析のメッシュファイルとローレンツ力密度分布データをComWAVEに入力する。受信側のデータとして磁束密度、渦電流密度のメッシュデータと結果ファイルを入力する。

解析結果
ComWAVEによるシミュレーション結果と参考文献における計算結果を以下に記す。図中のS-Sとは横波が横波のままモード変換せずに反射した成分、P-Sは縦波が反射により横波にモード変換された成分、Sは送信EMATから発信した超音波の成分を表している(詳細は文献[1]を参照)。文献の計算値を再現できていることが分かる。

各時間の解析結果画像およびアニメーションを以下に記す。
超音波伝搬図(縦波)


超音波伝搬図(横波)


受信EMATによる誘導電界の波形を以下に記す。

まとめ
ComWAVEによって電磁超音波センサ(EMAT)を利用した超音波伝導のシミュレーションを行った。今回、参考文献の2次元モデルを3次元モデルとして再現し、シミュレーションを行った結果、伝搬モードについて高い精度で参考文献による結果を再現することができた。ComWAVEを利用して高精度に超音波伝搬を計算することで、超音波信号の把握が難しいEMATセンサおいても最適なセンサの条件を検討できると考えられる。
参考文献
[1] 丸山真一,杉浦壽彦,吉沢正紹,電磁超音波探触子による超音波受信過程に関する研究,日本機械学会論文集C 編, Vol. 66, No. 642, pp.390–397, 2000