電磁超音波センサ(EMAT)による超音波送受信シミュレーション
概要
電磁超音波センサ(EMAT)とは電磁誘導を利用した超音波センサであり、静磁場を発生させる永久磁石と、磁場変動を励起あるいは検出するコイルから構成される。現在よく用いられている圧電センサと比較して、EMATは試験体に接触することなく超音波の送受信が可能なため、高温や放射線下などの特殊な環境での使用が可能という利点がある。そのためEMATは原子力機器に対する非破壊検査手法の一つとして注目を集めている。加えて、磁石とコイルの配置・構造の設定によって縦波、横波、表面波など多様な超音波パターンを送受信することができる。一方でEMATによる超音波の発生メカニズムは複雑であり、発信される超音波の把握が難しいという欠点がある。
センサ | 長所 | 短所 |
---|---|---|
圧電センサ | EMATよりも効率的に超音波を発生させられる | 検査対象物への接触および水や油などの接触媒質が必要 高温や放射線下などの特殊な環境では使用困難 |
電磁超音波センサ (EMAT) |
非接触で超音波の送受信が可能 高温や放射線下などの特殊な環境で使用可能 磁石・コイルの配置によって縦波、横波、表面波など多様な超音波パターンを送受信可能 |
圧電センサに比べ信号が弱く電気ノイズに影響されやすい 超音波の発生メカニズムが複雑で把握が難しい |

コイル・永久磁石の配置例
次に、電磁超音波センサ(EMAT)のしくみを詳しく説明する。
送信
送信EMATのコイルに電流を印加することで、電磁誘導の法則により磁場変動が起こり、試験体表面上に渦電流Jが起こる。永久磁石による静磁場(磁束密度B)と試験体の渦電流Jによりローレンツ力J×Bが発生し、その力による振動が超音波として試験体内部を伝搬する。
受信
超音波が受信EMAT側の試験体表面を振動させると、振動(速度v)と受信EMATの永久磁石による静磁場Bによって誘導電界が生じる。この誘導電界の時間変化により磁場変動を起こし、受信EMATのコイルに電圧変化v×Bが生じる。このコイルの電圧変化が超音波の受信信号となる。

EMATの送受信メカニズム