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地震予知新時代 電波の繊細な信号を見落とすな寄稿 福島 毅 氏

2003/09/08

電波はどこからやってきているのか

さらに、震源で大電流あるいは電波放射が発生したとして、どのような伝搬経路をとるのであろうか?
次のような仮説が考えられる。

  1. 震源域からの直接波。
  2. 山や島などの突起帯、あるいは断層などが送信アンテナの役割をして、電波を中継される。
  3. 対流圏に生じる局所的な擾乱(地殻のクラックから発したガスによる電荷異常、地表面に集まった電荷と逆電荷を上空に形成するコンデンサ効果による理由)
  4. 超高層大気(電離層など)に生じる変動。

トンネル内ではFM放送が聞き取れないように、観測されたシグナルは、震源から直接到来した電波とは考えにくい。断層面あるいは海上から突出している島、陸上の山などが送信源となった2次的な電波を捉えている可能性や、電離層あるいは対流圏・成層圏における局所的な擾乱により、遠方にある放送局の電波が増幅され聞こえている可能性もある。

特に、奇異に写るのは3.4であろう。3.4が原因として考えられているのは、観測事実から電波異常のルーツを方位探査などでたどってみると、そういった上層大気の擾乱を考えざるを得ないからである。ただし、そのカップリングのメカニズムの詳細は現段階でわかっていない。 地震という現象が大気圏・電離圏との何らかの相互作用・関係があろうことは、地震電磁気を研究する者の中では常識になりつつあるが、地震研究者にとっては荒唐無稽に感じられるところかもしれない。

最後にこれは理論的な裏付けとは多少離れるが、大局的な見方として、自然現象のスケールにおける地震の位置付けをおさらいしておきたい。
自然現象の時空間スケールを図にプロットしてみると、大きく以下のように分かれる。

X:地球電磁気現象グループX(オーロラ、雷など)
A:大気現象グループA(大気循環、低気圧、台風、海陸風など)
B:海洋グループB(深層循環、海流など)
C:固体地球グループC(大陸移動、島弧形成、地殻変動など)

自然現象の時空間スケール

この時空間の中で地震は、直感的に考えてしまう「固体地球グループ」ではなく、むしろ「地球電磁気グループ」に属するのである(福島2003)。このことは、地震に敏感なセンサーとして、地殻変動や微小地震といった監視に加えて地球電磁気学的なセンサーが有効であることを示唆するものと言えよう。地震予知を行うには、地震前に確実に反応するセンサーの発見あるいは開発が不可欠である。 しかも、降雨や人工ノイズなどを容易に切り離せるものでなくてはならない。 本校が行っている電波放射の連続観測は、今までの観測実績(地震との相関、Webにて公開中)が示しているように、地震先行現象をとらえる選択肢の1つとして有効な手段となりえると考える。そして、微力であるかもしれないが、地震予知学への貢献、しいては"リアルタイム地震予測学"の道を切り開くものではないかと考えている。

参考文献

池谷元伺,1998年
「地震の前、なぜ動物は騒ぐのか」日本放送出版協会
上田誠也,2001年
「地震予知はできる」 岩波書店
榎本祐嗣,1996年
兵庫県南部地震による淡路島平林地区野島断層面の物理化学調査3 -断層面付近の異常磁化
旧機械技術研究所発表 '96-11-14(1)
長尾年恭,2002年
「地震予知研究の新展開」  近未来社
福島毅・小野祐司,1998年
VHF帯地震先行電磁波の観測とその展望―アマチュア無線機を用いた試み― 地学教育 51巻1号
福島毅,2003年
地学スケールから見た地球電磁気現象としての地震  地球惑星科学関連学会2003年合同大会予稿集
前田耕一郎,1997年
兵庫県南部地震の際に22.2MHzで観測されたパルス状の電波放射
地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集
弘原海清,1996年
「前兆証言1519!」 東京出版


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