地震予知新時代 電波の繊細な信号を見落とすな寄稿 福島 毅 氏
2003/09/08
地震前兆電波観測の概要
阪神・淡路大震災の発生する数時間前に、震源付近でラジオ放送が聞き取れないほどのノイズが混入していたことが報告されている(弘原海1996)。大学や天文台においても、同様の地震に先行した異常な電波が報告されている(前田1997他)。これらの報告を元に、常時電波をモニターしていれば地震前に何らかの電波異常が観測されるのではないかということが容易に想像される。
そこで、阪神大震災が起きて1年半後、筆者と小野祐司教諭(当時柏中央高校、現さわやか県民プラザ勤務)は電波を使った地震予知ができないかを検証するため、アマチュア無線を利用した電波観測システムを構築し、1996年10月より連続観測を開始した(福島・小野1998)。システム構成の略図は以下のとおりである。
観測の周波数は、アマチュア無線において使用されていない領域の周波数(49.5MHz)とし、1分サンプリングで24時間365日のリアルタイムの観測体制を敷いている(停電やメンテナンス時間を除く)。
また我々の観測全体のコンセプトとしては、誰もがわかる観測システムとするために特殊な回路設計等の開発は行わずに市販品を組み合わせたシンプルなシステム構成とすることと、本校の観測システムや得られたデータはインターネットを通じてすべてをあまねく公開することである。ただし、地震予知3要素(場所・規模・発生時期)は公表していない。実用に耐えられるだけのデータ蓄積や解析が進んでいないことが主な原因であるが、たとえ推定できたとしても、無責任な公表で社会不安を煽らないための配慮からである。
あくまで、電波データに異常が現れた場合に注意を呼びかける程度とし、データを利用した推定は各人の責任において行ってもらうことをWeb上に明記している。観測点付近で有感地震が起こった場合、それに関連したレポートやサマリーレポートを随時Webで公開している。また過去のデータは、グラフと生のデータをエクセル形式で提供し、誰もがダウンロードできるようにアーカイブしている。詳しくは本校のwebをご覧いただきたい。
上図は、現在、地震に先行する電磁気現象の観測手段をまとめたものである。観測波長は多岐にわたり、地電流の直接観測、ULF、ELF、VLF、LFなどの長波帯(10Hz~300kHz)を使ったもの、VHF帯(30~300MHz)の直接観測または見通し外FM局電波の観測、人工衛星による電離層擾乱観測(GHz帯)などが行われている。本校では市販の安価な装置でシステム構成できるVHF自然電磁放射の直接観測を行っている。
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