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衝撃波の科学寄稿 高山 和喜 氏

第4回:衝撃波の医療応用

2006/08

31. 水ジェットメス

図31-1 マイクロポンプ切開装置とその兎肝臓への試行(仙台市立病院、中川敦寛博士、エプソン(株)瀬戸毅氏提供)(動画) 脳血栓血行再建装置の開発で、パルスHo:YAGレーザー光で駆動する水ジェットを空気中で直径100μmのノズルを介して生体軟組織に作用させた。生体軟組織は容易に切開され、直径200μm以上の血管を切断しなかった。また、切開に要した水量は高々数ミリ立方程度なので、処理部位は水没することなく、また、軟組織はほとんど非観血的にまた選択的に切開された。
 ロボットアームに使うマイクロポンプはピエゾアクチュエータを使っている。マイクロポンプ内部の流れの可視化に関する共同研究で、マイクロポンプの水ジェットを空気中に排出して、20m/sを超える水ジェットを発生できた。アクチュエーター駆動のマイクロポンプの動特性は、伝統的に線形回路理論で論じられている。マイクロポンプ内の流れは、微小体積内の流動であるが、比較的大きな圧力変動とその結果気泡発生を伴い、線形回路理論の取り扱いを逸脱する要素を含んでいる。マイクロポンプを生体軟組織切開装置の動力源に結びつけるために、マイクロポンプ内流れを解明する研究も進行中である。
 マイクロポンプを積み込んだ生体軟組織切開の実験機は重量約20g、万年筆程度の大きさである。図31-1はこの装置で兎の肝臓を切開したビデオ画像で、ほとんど出血を伴わずに切開されている。




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