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構造物の耐風工学横浜国立大学大学院 工学研究院 人もの空間のシステム分野 勝地 弘 准教授

講座概要

風は空気塊の流れであり、空気流体中におかれた構造物に対してさまざまな作用を及ぼす。 そして、その作用によって構造物には変形、振動といった現象が生じることになる。 これらの現象は時として有害なものもあり、構造物の安全性を脅かすことにもなる。 風の作用は、例えば、地震時の強制振動と異なり、流体と構造物との相互干渉によって時に自励振動を引き起こすことが特徴的であり、問題を一層複雑なものにしている。 この相互干渉は、構造物からの流れの剥離と流れのパターンが大きく影響しているが、構造物まわりの流れの状況は流れのパラメータ(流速、密度、粘性など)に大きく支配される。したがって、例えば、風速が変化することで、構造物への作用が非線形的に変化したり、突然に変化するなどの特異な現象が生じることになる。 このため、風に対する構造物の安定性や応答を調べるためには、類型化された空気力モデル、あるいは空力作用モデルを使い分け、場合によってそれらの組合せを用いて、適切に評価しなければならない。 構造物を風の作用から安全に守るために、空力モデルの構築、構造物の応答予測とその制御、合理的な設計法の確立などの作業を総称して、構造物の耐風工学と呼んでいる。 本セミナーでは、まず構造物への風の作用とその結果生じる現象、そのメカニズムについて紹介し、次にそれらの設計における取扱い、すなわち耐風設計法について紹介する。 耐風設計法では、特に長大橋を例として、基本的な設計の手順とその内容、設計の基本となる強風の予測法、風洞試験法、および解析による予測法などについて述べる。 さらに、長大橋に関する耐風工学は、本州四国連絡橋とともに歩んできたといっても過言ではないが、この本州四国連絡橋が完成に至るまでの耐風工学に関するいくつかのturning pointsについて紹介する。 最後に、これまでの長大橋の耐風工学の歴史上でのいくつかの教訓についても紹介する。

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  第1章 概論 PDF
第2章 風の作用とメカニズム
第3章 耐風設計法
第4章 強風の予測法
第5章 風洞試験法
第6章 解析による予測法
第7章 本州四国連絡橋完成までのturning points
第8章 歴史上の教訓
 

目次

 
  第1章 概論 [公開中]
 
  第2章 風の作用とメカニズム [公開中]
2.1 静止した物体まわりの流れ
2.2 静的作用と動的作用
2.3 動的作用と振動現象
 
  第3章 耐風設計法 [公開中]
3.1 風の特性値とモデル化
3.2 風の作用
3.3 風の作用効果(風による現象)
3.4 照査基準
3.5 制振対策
 
  第4章 強風の予測法 [公開中]
4.1 平均風速の頻度分布
4.2 年最大風速の分布
4.3 極値統計に解析による基本風速の設定
4.4 地形因子解析による基本風速の設定
4.5 台風シミュレーションによる基本風速の設定
4.6 地形模型風洞試験による方法
4.7 数値流体計算による方法
 
  第5章 風洞試験法 [公開中]
5.1  風洞
5.2  風洞試験の種類
5.3  風洞試験の相似則
5.4  静的空気力測定試験(三分力試験)
5.5  バネ支持模型試験
5.6  タウトストリップ模型試験
5.7  全橋模型試験
5.8  塔の風洞試験
5.9  動的空気力試験
5.10 実験結果の評価と耐風対策
 
  第6章 解析による予測法 [公開中]
6.1  概説
6.2  フラッター解析
6.3  明石海峡大橋フラッター解析
6.4  ガスト応答解析
6.5  ガスト応答解析におけるポイント
6.6  ガスト応答解析の事例
6.7  渦励振
 
  第7章 本州四国連絡橋完成までのturning points [公開中]
7.1  耐風設計基準
7.2  耐風実験橋
7.3  垂水観測鉄塔
7.4  実橋振動実験
7.5  動態観測
7.6  大型風洞試験
 
  第8章 歴史上の教訓  [公開中]
8.1  はじめに
8.2  吊橋黎明期の失敗(見えない風の作用への模索)
8.3  テイ橋の落橋(風荷重の認識)
8.4  ブルックリン橋での事故(撓度理論の出現)
8.5  理論の盲信(プレートガーダー吊橋の出現)
8.6  タコマナロウズ橋の落橋(忘れ去られた剛性効果)
8.7  タコマ橋落橋がもたらしたもの(耐風工学の確立)
8.8  その後の吊橋の革新技術(箱桁吊橋の登場)
8.9  おわりに
 


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