AMモジュール
Additive Manufacturing(AM)モジュールは、主にレーザ粉末床溶融結合法(LPBF:Laser Powder Bed Fusion)を対象とし、積層造形プロセスにおける温度分布や溶融池形状を予測するThermo-Calcのアドオンモジュールです。
熱力学データ、材料特性、プロセス条件などのパラメータを統合的に扱い、熱源の移動を伴う金属粉末の溶融・凝固に関わるマルチフィジックス問題を解きます。マルチフィジックスの計算には、熱伝導、流体流れ、蒸発損失、放射損失、対流熱損失が含まれます。さらに、得られた温度分布を、拡散モジュール(DICTRA)や析出モジュール(TC-PRISMA)と連携して、入力パラメータとして使用することや、その他の有限要素ソフトウェアに活用いただけます。
Thermo-Calcユーザーの方は一部例題でデモ計算を行うことが可能です。是非お試しください。
データベース要件
Additive Manufacturingモジュールは、以下にリストされているバージョン以降のデータベースで使用できます。
TCFE13、TCNI12、TCMG6、TCCU6、TCTI5、TCNOBL3、TCHEA6、TCAL9、TCSLD5、TCMO1、TCNB1
計算に考慮可能なAMプロセスパラメータ
スキャン(走査)速度、層厚、スキャンパターン、ハッチ間隔、粉末充填時間、熱源(出力密度、吸収率、熱分布)、チャンバー圧力、ベースプレート温度
計算モードに応じた評価内容
定常状態(Steady-state)
- 溶融池のサイズ
- ピーク温度
- 流体の流速
- 溶融池の物性(粘度、熱伝導率、密度)
過渡現象(Transient/Transient with heat-source from Steady-state)
- 造形体の選択位置における温度-時間変化
- 定常状態で記載した特性値の時間変化
- 得られた温度-時間変化をDICTRA/TC-PRISMAと連携
Transientモードでは、ナビエストークス方程式を各時間ステップで解きますが、Transient with heat-source from Steady-stateモードでは、溶融プール内の温度分布・流体流れが早くに定常状態に達すると仮定し、定常状態で得られる熱源を使用します。
計算例
316Lに対するキーホールモデルを使用した溶融池形状の評価
キーホールモデルを使用して、溶融池形状を評価します。レーザのエネルギー密度が高い場合に、局所的に液体金属の蒸発が生じます。その蒸発の反動で空洞:キーホールが形成されます。キーホールが形成されると、レーザはキーホール内部で反射・吸収を繰り返しながら材料深部まで伝達され溶融していきます。
多重反射を含むキーホールの影響を考慮するキーホールモデルが実装されています。
IN718に対するレーザスポット周辺における溶融池の評価
定常状態の計算モードにて、溶融池の形状や温度分布を評価します。ある定常状態における溶融池サイズやマッシーゾーンの測定が可能です。また、注目する距離線上に沿って、温度がどのように変化するかを示します。
IN718に対するシングルトラック造形
過渡状態の計算モードにて、シングルトラック造形を実施した計算結果を示します。溶融池サイズやマッシーゾーンの測定が可能のほか、任意の場所において特性値(温度、粘性、表面張力など)の時間変化を評価することができます。
Ti64に対する積層造形
過渡状態の計算モードにて、積層造形(2層分)を実施した計算結果を示します。任意の造形パターンを選択可能です。任意の場所(深さ方向も)・時間における特性値を評価可能です。