応用事例
溶接・接合
鉄合金-ニッケル合金の溶接部における拡散
鉄合金-ニッケル合金間の拡散を解析した事例です。異種金属の溶接部では、炭素の拡散により界面に局所的な欠陥が発生することがあります。これは溶接プロセス、溶接後の熱処理、または使用環境によるものです。炭素が鋼からニッケル側へ拡散することで、鋼の強度が低下し、ニッケル側に局所的な硬質領域が発生します。この特性の劣化の程度は炭素の拡散と関連しており、拡散モジュールDICTRAを用いて予測することができます。グラフはAISI 8630合金鋼を3種類のニッケル基合金の溶加材で溶接し、650℃-10hoursの熱処理後の接合部の炭素分布を示しています。グラフからわかるように、溶加材の選択は炭素の拡散挙動に大きな影響を与えます。
鉄鋼-種々の溶加材の溶接部における炭素濃度プロファイル
ニッケル基合金の溶接割れ
ニッケル基合金Alloy718における溶接時の偏析を予測した事例です。多くのニッケル基合金は添加元素の影響を受けやすいため、様々な溶接割れ現象が発生します。溶接金属が凝固する際に、溶質元素は液相または固相に偏析し、局所的な組成の違いを引き起こします。特にAl、Ti、Nbの偏析は、γ’およびγ’’の析出速度および体積分率に局所的な差異をもたらし、クリープ強度を低下させる原因となります。また、偏析によって低融点共晶が形成され、凝固割れが発生することがあります。偏析の程度はThermo-CalcのScheil凝固シミュレーションで予測することができます。
Alloy718におけるγ相中の溶質濃度
(左端がデンドライトコア部、右端が界面)
Ni/Ni-11P/Ni接合部のろう付け時の等温凝固
純ニッケル間をろう材(Ni-11P)でろう付けする際の等温凝固挙動を解析した事例です。1200℃-2.75時間の等温凝固時に、ろう材幅が異なる母相粒径によってどのように変化するかを拡散モジュールのDICTRAを使用して計算します。各母相粒径に対する共晶幅の変化を比較したところ、粒径が微細で、粒界が多いほど、ろう材領域の収縮が早いことが示されました。Kokawaら* による実験結果(プロット)とも比較しており、どちらの条件においても精度よく予測されました。
* 参考文献:Kokawa et al., Met Trans A 22 (1991), 1627-1631