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事例紹介:応用事例Thermo-Calc:統合型熱力学計算システム

応用事例

リサイクル

6000系アルミ合金中有害相の評価

鋳造材には不純物許容度が高いという特徴がありますが、世界のアルミ合金の需要として、鋳造材よりも展伸材が大幅に伸びています。水平リサイクルないしはアップサイクル技術の開発が強く望まれていますが、水平リサイクルの課題の一つに、各種成分が混合されたスクラップとして回収されてしまうことがあります。
代表的なスクラップ中の不純物元素として、自動車スクラップに多く含まれる鉄や鋳造材中のシリコンが挙げられます。強度、耐食性に優れた6000系アルミ合金(Al-Mg-Si)において、SiやFeで構成される有害相(β-AlFeSi相)が生成し、粗大で針状・プレート状に晶出することで延性が低下してしまいます。
6000系アルミ合金(Si:3.0, Fe:1.0, Cu:0.8, Mg:0.5)の溶体化処理温度を検討します。Step計算により、各熱処理温度に対する平衡相分率を評価します。処理温度に応じたβ-AlFeSi相の生成量を推定することが可能です。

6000系(AlMgSiFeCu)のプロパティ図

6000系(AlMgSiFeCu)のプロパティ図

溶体化温度を773Kと仮定し、系の成分(FeとSi量)に対する有害相の割合を評価します。各相(FCC, β-AlFeSi, Al19Fe2Mg7Si10)の生成量を等高線で示します。青い線で示すβ-AlFeSiは、Si量に対してほとんど変化は見られません。一方でFe量に対しては、リニアに反応する傾向にあることが示されています。

溶体化温度(773K)の有害相に対するSi,Feの影響

溶体化温度(773K)の有害相に対するSi,Feの影響

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アルミニウムスクラップからの鉄の除去

アルミニウムスクラップ中の鉄を除去するために、最適なMn添加量と熱処理温度を予測した事例です。
アルミニウムのリサイクルでは、特にFeの処理が大きな課題で、β-Al9Fe2Si2のような特定の有害相を生成する可能性があります。この問題に対して、Mnの添加によりFeを含むα-Al15Si2Mn4を形成させることで有害相の生成を抑制する方法があります。この際に溶融物の歩留まりをアルミニウムが生成しないような条件が望ましいため、L+αとなる条件が最適です。また、熱処理温度が低ければエネルギー消費量を抑えることができることから、計算状態図より熱処理温度は604℃付近が最適値であると考えられます。このことは実験結果からも示されています。

Thermo-Calc:応用事例 リサイクル Al-1.6Fe-9.5Si-xMn(wt%)における平衡状態図

Al-1.6Fe-9.5Si-xMn(wt%)における平衡状態図

計算にはTCAL8データベースを使用

また、下記のグラフでは最適な熱処理温度604℃における液相中のFe量のMn添加量依存性を計算しています。Mn量が増えるほどFeの除去率が上がることがわかります。一方で液相中のMn含有量は増加するため、最適なMn添加量は所望の合金組成に基づいて決定することになります。

Thermo-Calc:応用事例 リサイクル Al-1.6Fe-9.5Si-xMn(wt%)における604℃での液相中の組成

Al-1.6Fe-9.5Si-xMn(wt%)における604℃での液相中の組成

計算にはTCAL8データベースを使用

Flores-V, A., et al. "A kinetic study on the nucleation an d growth of the Al8FeMnSi2 intermetallic compound for aluminum scrap purification." Intermetallics 6.3 (1998): 217-227.

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鉄スクラップからのSnの除去

鉄スクラップ中のSnの除去に関与する、Snと硫化スズ(SnS)の蒸気圧を予測した事例です。電炉製鋼法では濃縮されたCuやSnが融解し、結晶粒界へ拡散することによる表面赤熱脆性(液体金属脆化)が問題となります。このような問題に対して、残留元素と鉄の蒸気圧差を利用することで残留元素を取り除くことができます。Thermo-Calcでは各化学種の蒸気圧を予測することができます。Sがスクラップ中に存在することでSnSの蒸気圧が大きくなり、系からSnを取り除きやすくなることがわかります。

Thermo-Calc:応用事例 リサイクル Fe-4C-0.7Si(wt%)におけるSn/SnSの蒸気圧のS濃度依存性

Fe-4C-0.7Si(wt%)におけるSn/SnSの蒸気圧のS濃度依存性

計算にはTCFE12, SSUB6のデータベースを使用

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