応用事例
均質化・溶体化
7000系アルミニウム合金の溶体化処理の温度の予測
AA7093において、溶体化処理の温度を評価した事例です。本合金系では、FCC単相域は狭く、462~475℃と予測されます。実験結果においても単相域が470℃程度と報告されております。このように溶体化処理における熱処理温度の評価にも利用可能です。
AA7093における平衡相分率の温度依存性
Marlaud, T., et al. "Influence of alloy composition and heat treatment on precipitate composition in Al–Zn–Mg–Cu alloys." Acta Materialia 58.1 (2010): 248-260.
アルミニウム合金におけるSi粒子の溶解
拡散モジュールのDICTRAを用いて、Al-Si合金中のSi粒子が溶解する過程を計算した事例です。異なる熱処理条件となる500℃、530℃、560℃で比較しています。500℃では、3時間が経過してもSi粒子は完全に溶解しません。これに対し、560℃では15分、530℃では1時間以内にSi粒子が消失します。このように、プロセスに応じて適切な熱処理時間、温度を評価することができます。
Si粒子の体積分率の時間変化
Tundal, U. L. F., and Nils Ryum. "Dissolution of particles in binary alloys: part II. experimental investigation on an Al-Si alloy." Metallurgical Transactions A 23.2 (1992): 445-449.
鉄鋼材料におけるセメンタイトの溶解
拡散モジュールのDICTRAを用いて、Fe-Cr-C合金におけるセメンタイトが溶解する過程を計算した事例です。100秒が経過した時の図中の左側がセメンタイトの領域で、右側がオーステナイトです。セメンタイトの溶解により、セメンタイトの領域が少なくなり、オーステナイトの領域が広がるとともに、セメンタイト側にCrが濃化することを確認できます。
1183 Kにおいて100 sの熱処理後のCr濃度プロファイル
また、セメンタイト相の体積分率の時間変化も併せて示します。どちらの計算結果もプロットの実験値をよく再現できていることがわかります。
セメンタイトの体積分率の時間変化
Liu, Zi-Kui, Lars Höglund, and Björn Jönsson. "An experimental and theoretical study of cementite dissolution in an Fe-Cr-C alloy." Metallurgical transactions A 22.8 (1991): 1745-1752.
Cu-9Ni-6Sn合金の均質化
Cu-9Ni-6Sn合金の均質化熱処理プロセスを計算した事例です。デンドライトアーム間に生じた偏析について、均質化に要する時間を評価しています。計算設定として、初期組成分布(NiとSn)、デンドライトアーム間の濃度分布(黒点)、計算範囲は実験的に測定されたデータを使用しています。例えば、黒点は初期の濃度分布で、100秒1000秒と熱処理時間を増やしていった場合に、どの時点でどのような濃度分布になるか、均質化するかを予測しています。このように各溶質元素が均質化されるまでに要する時間や熱処理条件、ある熱処理時間点での濃度分布などを予測することができます。
各時間におけるNiおよびSnの濃度プロファイル
Basak, Chandra Bhanu, and Madangopal Krishnan. "Applicability of Scheil–Gulliver solidification model in real alloy: a case study with Cu-9wt% Ni-6wt% Sn alloy." Philosophical Magazine Letters 95.7 (2015): 376-383.