高マンガン鋼におけるポテンシャル図

Fe-17.8Mn-9.5Cr-1.0Ni-0.27C(wt%)における酸素分圧を軸としたポテンシャル図を計算した事例です。この計算結果は実験での報告とよく一致しており、表面のコランダム（M₂O₃相）リッチな層の下にスピネル（M₃O₄相）が形成されています。

高マンガン鋼における平衡相の酸素分圧依存性

• Wang, Rosie, Mark J. Straszheim, and Robert A. Rapp. "A high-temperature oxidation-resistant Fe-Mn-Al-Si alloy." Oxidation of metals 21.1 (1984): 71-79.
• Douglass, D. L., F. Gesmundo, and C. De Asmundis. "The air oxidation of an austenitic Fe-Mn-Cr stainless steel for fusion-reactor applications." Oxidation of metals 25.3 (1986): 235-268.
• Nanni, P., et al. "Air oxidation of a Mn-Cr austenitic steel of potential use for fusion reactor structural applications between 1073 and 1473 K at 105 Pa." Journal of nuclear materials 182 (1991): 118-127.
• Kurokawa, Hideto, Kenichi Kawamura, and Toshio Maruyama. "Oxidation behavior of Fe–16Cr alloy interconnect for SOFC under hydrogen potential gradient." Solid State Ionics 168.1-2 (2004): 13-21.

ニッケル基合金におけるポテンシャル図

Ni-18Cr(wt%)における硫黄分圧を軸としたポテンシャル図を計算した事例です。
酸素や硫黄などのガス種を計算に考慮することで、ガス雰囲気下での熱処理の影響を予測できます。

Ni-18Cr(wt%)における平衡相の酸素分圧依存性

計算にはTCNI10データベースを使用

Goebel, J. A., and F. S. Pettit. "The influence of sulfides on the oxidation behavior of nickel-base alloys." Metallurgical Transactions 1.12 (1970): 3421-3429.

オーステナイト系ステンレスの電位-pH図

Fe-19Cr-9Ni(mol%)における200℃、100気圧での電位-pH図を計算した事例です。
電位-pH図（Pourbaix Diagram）はある温度において、化学種が安定に存在できる電位-pHの領域を示します。この事例では1kgの水にNaClを3mol添加しており、海水腐食にも適用可能です。

Fe-19Cr-9Ni(mol%)における電位-pH図

計算にはTCFE10, SSUB6, AQS2のデータベースを使用

水素の拡散計算

鉄における水素の拡散を計算した事例です。近年水素社会の実現に向けた取り組みが加速化している一方で、水素が金属内部に侵入すると靭性が低下し脆くなることが問題となっています（水素脆化）。一部のデータベースでは水素の溶解や移動度が考慮されており、水素侵入や脱水素の計算に適用できます。拡散モジュールDICTRAを使用して、境界条件に水素濃度を設定することでこれらのシミュレーションが可能です。

各時間における水素濃度プロファイル

計算にはTCFE12, MOBFE7のデータベースを使用