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画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス)東京都市大学 工学部 都市工学科 災害軽減工学研究室 吉川 弘道 教授

第1回:似ている!「橋脚と歯科インプラント」

土木構造物が、他分野のものに酷似することは意外に多い。その好例として、橋脚と歯科インプラントを紹介したい。先ずは、(大きさを忘れて)画像を御覧あれ!

画像左は、単柱式橋脚(単純な基礎形式で、上部の橋桁を支える)であり、画像右は、歯科インプラント(骨に直接人工歯根を埋込んで、歯を再生するもの)である。橋脚は土木構造物の代表選手であるが、歯科インプラントも、人工歯根による歯の再生で、我が国でも定着している。

テクニカルレポート:Web講座:画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス) ※画像提供(歯科インプラント):若林歯科医院

施工手順(施術の段取り)としては、橋脚の場合,杭を地中に設置してから、フーチング、橋脚躯体、上部工となる。一方、歯科インプラントでは、ドリルで硬い骨に穴を開けて、人工歯根(フィクスチャー)を埋めこみ、そこに土台を設置し、最後に噛み合わる歯(人工歯)を装着する。インプラントにアバットメント(abutment)があることは驚きであったが、メカニズムは一緒であろう。両者の工期も、(大雑把だが)1年前後ということで、だいたい同じではないか。

また、外荷重としては、橋脚は、上部工(橋桁と舗装)重量による鉛直荷重と稀に地震荷重により水平力が作用し、片や、歯では噛みしめる力であり、ともに3次元的に掛かることも共通する。歯科インプラントでは、堅牢な骨と歯茎を必要し、橋脚の場合、周辺地盤または杭先端の支持地盤の強度と共通することも酷似する。

両者を比べると、驚くほど似ていることに気が付くが、一方では、メカニズム的に必然的でもあるのでは。ただし、大きく相違するのは、橋梁は巨大な建造物であるのに対して、歯科は、生身の人間のサイボーグ化であり、あの狭隘空間での施工(ではなく,歯科施術)には、驚くに他はない(ともに、経験豊富なエンジニアまたは歯科医が主役であることも、付記したい)。

最後に、メンテナンス(日頃の手入れ)を怠ると著しい劣化/損傷を招くことは、案外共通しているのでは….。維持管理と長寿命化が、目の前の課題である。


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