発熱による組織凝固の解析
概要
目的
HIFUにより腫瘍を凝固する際の凝固前と腫瘍の凝固後のエコーを比較することを目的とします。
PZFlexでは超音波伝播-温度解析連成解析により超音波照射に伴う温度分布の解析が可能です。さらに、超音波照射による温度上昇による組織凝固を判定し、凝固後のモデルを生成凝固に伴う組織物性値変化を考慮した超音波伝播解析を実施することができます。
今回は、以下の組織モデルに超音波を照射した場合の発熱分布を計算し、最高温度分布から組織の凝固判定を行います。そして、凝固後の材料分布を使用した場合のエコーと、凝固前のエコーとを比較します。
使用している機能
- 熱解析
- 凝固判定
解析方法
PZFlexの超音波伝播-温度解析連成解析の手法は,超音波伝播と温度解析を同時に行う密連成と超音波伝播と温度解析を交互に行う疎連成の2つの方法を扱うことができます。超音波の伝わる速度はμ秒のオーダーなのに対し、熱の伝わる速度は秒のオーダーと大きく異なりますので、通行はこれら独立して交互に解析する疎連成でとりあつかうことが可能です。PZFlexでは、はじめに超音波の伝搬解析を行い、材料中で損失したエネルギーがすべて熱に変わったと考え発熱分布マップを作成します。次にこの発熱分布をもとにデューティーサイクルを指定して熱解析を実行します。
解析モデル
解析した組織の形状は、以下の通りです。

解析結果
続いて、熱伝導解析を行い、各位置での最大温度を計算しました。最大温度分布を以下に示します。

この最大温度分布を使用し、凝固判定を行いました。そのために予め、各材料に凝固温度と凝固後の物性値を決めておきます。ある点での最大温度が、その位置での材料の凝固温度より高い場合、凝固したとして凝固後の物性値に変更したモデルを作成します。凝固判定後の材料分布は以下の図のようになりました。今回は、腫瘍1全体と、筋肉1、脂肪1の一部が凝固して、それぞれ腫瘍2、筋肉2、脂肪2の材料に変更されています。
この処理は、PZFlexの後処理用スクリプトで自動的に処理しました。
続いて、熱伝導解析を行い、各位置での最大温度を計算しました。最大温度分布を以下に示します。1回目の照射の場合と比較すると、明らかに分布が異なっています。このモデル中の最大温度は1回目よりも低くなり、位置も凝固した脂肪部分の先端部となっていることがわかります。

この最大温度分布を使用し、凝固判定を行いました。その結果、凝固判定後の材料分布は以下の図のようになりました。1回目の照射で凝固した脂肪部分の先端部が凝固して、脂肪2の材料に変更されています。

この材料分布の状態で、さらに超音波伝搬解析を行いました。
解析結果(音圧の伝搬図)を以下に示します。このように、超音波伝搬解析→熱解析→凝固


以下に今回の結果を並べて比較します。
材料分布

温度分布

超音波伝搬図

最後に、腫瘍中心部での音圧の時刻暦データの比較を以下に示します。
それぞれ、赤:1回目照射、青:2回目照射、水色:3回目照射のグラフです。この結果を見ると、腫瘍中心部での音圧が1回目の照射と2回目では大きく異なり、2回目と3回目では比較的差が小さいことがわかります。このように任意の点での信号も比較することが可能です。
