HOME技術コラム積層造形用材料の造形条件最適化(Thermo-Calc2024bの新機能)

コラム:マテリアルデザイン

積層造形用材料の造形条件最適化
(Thermo-Calc2024bの新機能)

科学エンジニアリング第2部 技術第4課 小笠原 大樹

[2024/07/11]

レーザ粉末床溶融結合法(LPBF)に代表される金属積層造形プロセスにおいては、温度分布、溶融池形状、欠陥の予測を精緻に予測することで、造形条件を最適化することが求められます。熱力学計算ソフトウェアThermo-Calcは、CALPHAD法に基づいた状態図計算からその発展を始め、現在では拡張モジュールの追加によって冶金プロセスや積層造形プロセスなどの様々な計算に役立てられています。ここでは、今夏リリースされたThermo-Calc2024bで可能となった、積層造形プロセス向けの新しい解析機能をご紹介いたします。

  1. キーホール欠陥の計算モデルにおいて溶融金属の流れを考慮することが可能となりました。キーホール欠陥とは、溶融金属中にガスが混入して生じる空隙状の内部欠陥のことを言います。本モデルでは、マランゴニ効果により対流が生じる環境下でもより正確に溶融池の形状を予測することができるようになりました。
    SUS316L溶融池の温度分布(左図、右図)および流速分布(右図)(熱源の出力P=60W、走査速度v=400mm/s)
    SUS316L溶融池の温度分布(左図、右図)および流速分布(右図)(熱源の出力P=60W、走査速度v=400mm/s)

    SUS316L溶融池の温度分布(左図、右図)および流速分布(右図)(熱源の出力P=60W、走査速度v=400mm/s)

  2. 欠陥予測の手法として、プロセスマップが使用可能となりました。横軸に走査速度、縦軸に熱源の出力をとったグラフ上に、キーホール欠陥および溶融不良の発生領域をカラーで図示するもので、適切な造形条件を探索するのに役立ちます。下図はSUS316のプロセスマップであり、青の領域ではキーホール欠陥が、緑の領域では溶融不良が予測されます。Huら1)によるキーホール欠陥(K)および溶融不良(C)の実験結果を重ね合わせており、赤は欠陥がある点、緑は欠陥がない点を表しています。計算は実験結果とよく一致しており、ここではマップ上の白の領域に相当する造形条件が好ましいと言うことができます。
    SUS316Lのプロセスマップ

    SUS316Lのプロセスマップ

参考文献

1)[2019Hu] Z. Hu, B. Nagarajan, X. Song, R. Huang, W. Zhai, J. Wei, Formation of SS316L Single Tracks in Micro Selective Laser Melting: Surface, Geometry, and Defects. Adv. Mater. Sci. Eng. 2019, 1–9 (2019).

製品情報