ガス田におけるLNG 供給事業（SHTOKMAN）

モデル挙動

Gazprom社とLannerグループは、2009年に、Shtokmanガス田からのLNG供給における、例えばガス田からLNGを輸送するための様々な輸送手段編成の評価、気象条件を考慮した各種輸送ルート、受け入れターミナル側での操業条件、供給施設の運用に影響するような環境条件など、あらゆる側面をカバーするシミュレーションモデルを構築しました。

信頼性の高いガス供給事業者としてのGazprom社の評価を落とすことはできません。そこで、Gazprom社がShtokmanガス田の地理的条件による具体的な課題や、複雑な上流工程の特殊性を厳密に評価できるよう、モデルはさらに微調整されました。北極圏の海象および気象条件は厳しいため、輸送船が取りうるすべてのルートの気象データなどを十分に取り込むことが必要でした。このチームが構築したモデルには、ガス田の上流工程で使用する装置の性能に関する詳細な研究結果も取り込まれています。通常のモデルでは、一定期間における性能統計が平均化されますが、Shtokmanガス田モデルはLNGプラントとガス生産能力まで網羅しています。

Frederik Smits van Oyenは、次のように述べています。「Shtokman Development社の協力を得て、価値連鎖全体に関する正確なデータだけでなく、下流工程をモデル化する上で十分なデータを取得することができました。これにより、重要な不確実性要素もモデルに反映させて、供給における大きなリスクに対する適切な対応策も準備できます。」

メリット

このシミュレーションを実行したことで、Shtokmanガス田の開発チームはモデルを使用して、価値連鎖のあらゆる操業内容を予め厳密にテストすることができます。例えば、異なるルートをとる輸送船をタイプ別あるいは編成ごとにシミュレートすることができます。

モデルの実行時には、プログラムによって割り当てられた輸送期限や手動で定義した納期を輸送船が厳守できるかどうか、さらには輸送船の利用を分析するための各種パラメータが記録されます。加えて、遅延、荷役時間、遅延理由、引き渡しできなかったスロット、遅れて到着したスロット、早く到着したスロットなど、より詳細な結果も得られるため、さらに細かい分析でサプライチェーンにおける具体的なボトルネックを特定することができます。

こうしたシミュレーションが実行できたことで、チームは輸送船の選択や投資を詳細な情報を得た上で決定できるようになりました。そして何よりも、Gazprom社と第1段階パートナーの2社は、スケジュールの設定や見込み客との契約を確実に実現できるという確信を得ることができました。

Frederik Smits van Oyenは、次のように説明しています。「このプロジェクトの成功は、操業方法と考慮すべき要素をどれだけ把握して理解できるかにかかっています。顧客との契約上の義務を確実に履行できるように、提案されたスケジュールや計画の信頼性をテストすることができます。操業内容が拡大し、より具体的な各種シナリオが明確になれば、さらに厳密なテストが行えます。最も重要なことは、事実に基づく科学的な分析によって、複雑な環境での操業の信頼性を最適化できるため、潜在的なリスクを把握できることです。」

Shtokmanガス田のようなプロジェクトに対してシミュレーションモデルがもたらす価値は非常に大きなものです。輸送に遅れが生じれば、ガス供給事業者とその顧客の純利益に大きな打撃となります。世界最大級の規模を誇るShtokmanのプロジェクトは、他の多くのプロジェクトよりも投資額が高いため、リスクも大きいといえます。

Shtokmanガス田開発プロジェクトの目標は、他のシミュレーションプロジェクトと同様、最適な供給の信頼性、投資、および投資収益を実現できるように、コスト、パフォーマンス、サービス、収益のバランスを取ることです。唯一、このプロジェクトが特殊なのは、ガス田の過酷な環境条件を含む様々な変数が存在する中で操業しているということです。

将来

Gazprom社は、今後もLanner社によるシミュレーションモデルを使用して各種シナリオを試し、Shtokmanガス田の開発に影響を与える要素が確実に取り込まれるようにしていく予定です。

Frederik Smits van Oyenは、最後に次のように述べています。「我々は、事業の信頼性をさらに向上できるよう、常に高い目標を掲げて挑戦を続けています。ガス供給事業を仮想環境でシミュレートできることで、今後遭遇する可能性のある事柄に対処できます。それにより、世界中の市場にLNGを高い信頼性と自信をもって確実に供給できるようになります。」