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コラム:再生可能エネルギー

再エネNon-FIT(非FIT)に対するCTCのソリューション
(その3)

エネルギービジネス部 エネルギー営業第1課 佐治 憲介

[2023/10/31]

※本コラムは過去の関連記事を一部改編・追記することで作成されたものです。

FITの果たしてきた役割と課題

世界的なカーボンニュートラルに向けた動きを背景に、再生可能エネルギー電源の更なる導入拡大を目的として、2012年からFIT制度(Feed-in Tariff;再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の運用が始まりました。電力市場価格は天気や燃料費等の変動により常に変動します(図1参照)が、FIT制度では変動に関わらず一定の価格で売電できるため、売電収入の予測が立てやすく融資が受けやすいことから、再エネの導入が一気に進みました。2021年時点では、日本国内の再生可能エネルギーの発電量は、全発電電力量のうち22.4%を占めています。

図1 直近2年間(2021年10月~2023年9月)の電力市場価格の変動 (JEPX取引結果データより作成。システムプライスの日平均[円/kWh])

図1 直近2年間(2021年10月~2023年9月)の電力市場価格の変動   
    (JEPX取引結果データより作成。システムプライスの日平均[円/kWh])

このように、FIT制度は価格変動リスクから切り離すことで再エネ発電事業への参入障壁を引き下げるという効果はあったものの、再エネ賦課金による国民負担の増大や、再エネの更なる導入(2050年のカーボンニュートラル実現に向けて)に対する取組が進みづらいという状況になってしまっています。再エネの更なる導入に対する取組が進みづらいというのは、太陽光・風力発電出力の変動に伴い電力市場価格は変動するものであるのに対して、FIT制度では売電価格が変動しないためです。例えば太陽光発電について、売電価格が一定の条件下では、天気の変動そのままに晴れていれば発電し曇りや夜では発電しない状況となり、このままでは導入量が増えても晴れの昼間で余分に発電した電力は利用されず、曇りや夜間は火力発電で温室効果ガスを排出し続けるという状況は変わらないことになります。しかし、売電価格を電力市場価格に連動させることで、電力が余りがちな時間帯(電力市場価格が低い)の発電を電力が不足しがちな時間帯(電力市場価格が高い)にシフトさせるインセンティブが働き、再エネ電力が有効利用でき温室効果ガス排出も抑えられることになります。また、そのために必要な技術要素としては、蓄電池の利用や予測技術を活用した発電・需要調整等が挙げられます。

現在のNon-FITの状況

現在、FITの売電価格は太陽光・風力発電を中心にかなり低下してきており、またFIT制度が適用できる発電所は限定されてきているため、FIT制度によらない、いわゆるNon-FIT(非FIT)の取り組みが始まっています。

まず、FIT制度の後継とも言えるのが、2022年度から運用が始まったFIP制度(Feed-in Premium)です。FIP制度では、売電価格が市場価格に連動するようになります。また、電力市場取引では前日や1時間前に発電電力の計画値も提出することになりますが、実績値が計画値から外れた分はインバランス料金の支払いが生じるため、発電電力の予測が重要となります。ただし、このような市場取引を各発電事業者が行うのは煩雑なため、アグリゲーターと呼ばれる仲介事業者が複数の発電事業者をまとめて代行取引する動きがあります。多地点の発電所をまとめることで発電変動が抑えられる(均し効果)だけでなく、蓄電池の活用や需要側も含めた需給調整を行うことで、インバランスリスクを抑えることが期待できます。

また、電力市場を介さず需要家へ直接電力を販売する、コーポレートPPA(Power Purchase Agreement;電力販売契約)が増えてきています。前述の通り、FIT価格は低下してきており、また現在はFIP制度への移行期に当たり、FIP制度の運用で詳細が今後変更される可能性もありFIP制度下での収支が見通しにくいことから、FIP移行の検討は行いつつ当面はコーポレートPPAでの再エネ導入を進めるという事業者が多いようです。また一方で、環境価値(非化石価値とも呼ばれます)を調達したい企業側から見ると、FIT・FIPの環境価値はまだ使いづらい(現時点ではRE100の証明に使える容量は限られている)ため、手っ取り早く環境価値を調達する手段として採用されています。基本的には、電力会社からの買電よりもできるだけ再エネ電力を利用する方が環境価値として有利となることから、需要と発電の日変動・季節変動パターンの想定とそれに応じた設計・運用が重要となります。

CTCの再エネ発電出力予測サービス

CTCでは、エネルギー分野で20年以上にわたり、再生可能エネルギー事業開発の技術コンサルティングサービスを提供しており、中でも、風力・太陽光発電の出力予測(以降、「再エネ発電出力予測」と呼ぶ)については、長年の技術開発を経て、多くのお客様にご利用いただいております。

2010年には、東北電力株式会社様(現:東北電力ネットワーク株式会社様)向けに、風力発電出力予測システムの本運用を開始しました(https://www.ctc-g.co.jp/company/release/
20101001-00056.html
)。この取り組みは、電力系統制御エリアを対象として風力発電出力予測システムを本格稼働させた国内初の事例となりました。

2014年には、複数の国内の研究機関・大学・電力会社とともに、電力系統出力変動対応技術研究開発事業(NEDO)に参画し(https://www.ctc-g.co.jp/company/release/20140612-00378.html)、将来の再エネ大量導入時代に備えた電力需給運用上の課題解決に向け、再エネ予測・制御・運用技術の高度化に関する検討を行いました。

2021年には再エネ発電出力予測技術を活用した新規ビジネスとして、2021年より伊藤忠商事とともに再エネアグリゲーションビジネスに取り組んでいます(https://www.ctc-g.co.jp/
company/release/20211015-01358.html
)。前述の通り、FIT制度の期間をすぎた卒FITの増加や、FIP(Feed-in Premium)の導入に伴い、再生可能エネルギーの発電事業者自らが需給管理の責任を担う必要が出てくるため、その需給管理を代行するアグリゲーションビジネスに取り組むものです。

このような取り組みに加え、これまで、多くのお客様に対し、再エネ発電出力予測サービスを提供してきましたが、そのほとんどがオーダーメイド型での提供、つまり、都度、お客様毎に仕様・価格を設定しサービス提供してまいりました。個々のニーズにきめ細やかに対応できるメリットはあるものの、サービス提供までの期間やコスト面で課題となっておりました。

そこで、この課題解決に向けて、現在、CTCでは、再エネ発電出力予測サービスの標準化に取り組んでおります。これまで培った再エネ発電出力予測に関するノウハウを十分に織り込みつつ、サービス提供体系の整備、提供期間の短縮、契約体系等の簡素化、等を図っております。

前述の通り、FIT制度の期間をすぎた卒FITの増加や、FIP(Feed-in Premium)の導入等の変化により、再エネの自立電源化が求められる中、再エネ発電事業者、小売電気事業者、アグリゲータ、等のお客様から、再エネ発電出力予測に関するニーズが非常に高まっている状況です。今秋、再エネ標準予測サービス(仮称)としてリリース予定としておりますので、是非ご期待下さい。

図2 再エネ標準予測サービス(仮称)の概要図

図2 再エネ標準予測サービス(仮称)の概要図

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