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コラム:再生可能エネルギー

再エネNon-FIT(非FIT)に対するCTCのソリューション
(その2)

エネルギービジネス推進部 GXビジネス推進課 佐治 憲介

[2023/03/30]

※本コラムは過去の関連記事を一部改編・追記することで作成されたものです。

FITの果たしてきた役割と課題

世界的なカーボンニュートラルに向けた動きを背景に(関連記事)、再生可能エネルギー電源の更なる導入拡大を目的として、2012年からFIT制度(Feed-in Tariff;再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の運用が始まりました。電力市場価格は天気や燃料費等の変動により常に変動します(図1参照)が、FIT制度では変動に関わらず一定の価格で売電できるため、売電収入の予測が立てやすく融資が受けやすいことから、再エネの導入が一気に進みました。2020年度時点では、日本における発電電力量に占める再エネの比率は21.2%にまで達しています。

図1 直近1年間(2022年3月~2023年2月)の電力市場価格の変動 (JEPX取引結果データより作成。システムプライスの日平均[円/kWh])

図1 直近1年間(2022年3月~2023年2月)の電力市場価格の変動
(JEPX取引結果データより作成。システムプライスの日平均[円/kWh])

このように、FIT制度は価格変動リスクから切り離すことで再エネ発電事業への参入障壁を引き下げるという効果はあったものの、再エネ賦課金による国民負担の増大や、再エネの更なる導入(2050年のカーボンニュートラル実現に向けて)に対する取組が進みづらいという状況になってしまっています。再エネの更なる導入に対する取組が進みづらいというのは、太陽光・風力発電出力の変動に伴い電力市場価格は変動するものであるのに対して、FIT制度では売電価格が変動しないためです。例えば太陽光発電について、売電価格が一定の条件下では、天気の変動そのままに晴れていれば発電し曇りや夜では発電しない状況となり、このままでは導入量が増えても晴れの昼間で余分に発電した電力は利用されず、曇りや夜間は火力発電で温室効果ガスを排出し続けるという状況は変わらないことになります。しかし、売電価格を電力市場価格に連動させることで、電力が余りがちな時間帯(電力市場価格が低い)の発電を電力が不足しがちな時間帯(電力市場価格が高い)にシフトさせるインセンティブが働き、再エネ電力が有効利用でき温室効果ガス排出も抑えられることになります。また、そのために必要な技術要素としては、蓄電池の利用や予測による発電・需要調整等が挙げられます。

現在のNon-FITの状況

現在、FITの売電価格は太陽光・風力発電を中心にかなり低下してきており、またFIT制度が適用できる発電所は限定されてきているため、FIT制度によらない、いわゆるNon-FIT(非FIT)の取り組みが始まっています。

まず、FIT制度の後継とも言えるのが、2022年度から運用が始まるFIP制度(Feed-in Premium)です。FIP制度では、売電価格が市場価格に連動するようになります。また、電力市場取引では前日や1時間前に発電電力の計画値も提出することになりますが、実績値が計画値から外れた分はインバランス料金の支払いが生じるため、発電電力の予測が重要となります。ただし、このような市場取引を各発電事業者が行うのは煩雑なため、アグリゲーターと呼ばれる仲介事業者が複数の発電事業者をまとめて代行取引する動きがあります。多地点の発電所をまとめることで発電変動が抑えられる(均し効果)だけでなく、蓄電池の活用や需要側も含めた需給調整を行うことで、インバランスリスクを抑えることが期待できます。

また、電力市場を介さず需要家へ直接電力を販売する、コーポレートPPA(Power Purchase Agreement;電力販売契約)が増えてきています。前述の通り、FIT価格は低下してきており、また現在はFIP制度への移行期に当たり、FIP制度の運用で詳細が今後変更される可能性もありFIP制度下での収支が見通しにくいことから、FIP移行の検討は行いつつ当面はコーポレートPPAでの再エネ導入を進めるという事業者が多いようです。また一方で、環境価値(非化石価値とも呼ばれます)を調達したい企業側から見ると、FIT・FIPの環境価値はまだ使いづらい(現時点ではRE100の証明に使える容量は限られている)ため、手っ取り早く環境価値を調達する手段として採用されています。基本的には、電力会社からの買電よりもできるだけ再エネ電力を利用する方が環境価値として有利となることから、需要と発電の日変動・季節変動パターンの想定とそれに応じた設計・運用が重要となります。

CTCの再エネアグリゲーションビジネス

CTCは2021年より伊藤忠商事とともに再エネアグリゲーションビジネスに取り組んでいます(図2参照)。前述の通り、FIT制度の期間をすぎた卒FITの増加や、FIP(Feed-in Premium)の導入に伴い、再生可能エネルギーの発電事業者自らが需給管理の責任を担う必要が出てくるため、その需給管理を代行するアグリゲーションビジネスに取り組むものです。

図2 再エネアグリゲーションビジネスのイメージ 伊藤忠商事の電力の需給管理に関する知見と、CTCのデジタル技術の知見を組み合わせて、共同でアグリゲーションビジネスに取り組んでいます。

図2 再エネアグリゲーションビジネスのイメージ
伊藤忠商事の電力の需給管理に関する知見と、CTCのデジタル技術の知見を組み合わせて、
共同でアグリゲーションビジネスに取り組んでいます。

CTCがこれまでに培ってきた発電量予測・最適化などのデジタル技術の知見と、伊藤忠商事の電力需給管理に関する知見を融合させて実現しています。具体的には、①太陽光および風力の発電量予測技術の検証、②発電及び需要の計画と実績の差異であるインバランス回避手法の検討、③再生可能エネルギー需給運用最適化の手法の検討、④事業サービス化に向けた検討などを実施しています。

現在、複数の太陽光発電所を対象に取り組みを行っており、今後も発電所規模や地域の拡大を図り、事業拡大を含め、再生可能エネルギーの普及と脱炭素社会の実現に貢献していきます。

関連ソリューション・プロダクトについてはこちら

再生可能エネルギーアグリゲーションビジネス
https://www.ctc-g.co.jp/company/release/20211015-01358.html

再生可能エネルギー
https://www.engineering-eye.com/category/19/index.html