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コラム:
イベントセミナー開催報告

【LS-DYNA活用 Webセミナー】 CAEシミュレーションで取り組むSDGs
~防災・減災・再エネ分野での活用事例~

材料・工学技術部 応用技術第1課 早川 尊行

[2021/12/21]

去る11月12日、「CAEシミュレーションで取り組むSDGs ~防災・減災・再エネ分野での活用事例~」と題してWEBセミナーを開催しました。
以下、簡単にその開催報告をさせていただきます。

今回は、「シミュレーション技術で社会貢献したい」という機運が社内で高まっていたこともあり、若干の紆余曲折を経て、最終的には以下のSDGsの目標に関わる事例を紹介することになりました。

  • 目標7【エネルギー】すべての人々の安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーのアクセスを確保する
  • 目標11【持続可能な都市】包括的で安全かつ強靭(レジエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
  • 目標13【気候変動】気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

発表では、「そもそもSDGsに取り組む必要があるのか?」という疑問に対し、気象庁のレポート(気候変動監視レポート 2020)や環境省の関係する法律(気候変動適応法)を引き合いに出し、すでに「温暖化の緩和策から、気候変動への具体策(適応)へと遷移」していることや、「法整備も進み、具体的な取り組みが開始されている」といったことを根拠にその必要性を訴えました。また、アメダスで見た大雨発生頻度も確認し、「これまでのインフラでは被害を防ぎきれない可能性が高まる」といった角度から、防災・減災への取り組みの必要性を確認しました。

続いて、シミュレーション技術の可能性として、「AI×CAE(蓄積データからのAIによる予測)」×「観測点からの情報(IOT)」→「リアルタイム予測情報伝達」で社会に貢献できる可能性を示しました。今回はLS-DYNAを念頭に置いていましたが、弊社で扱っている地盤系のシミュレーションソフトウェアも相性は良いかもしれません。

将来像の1つ:シミュレーション技術のポテンシャル

チラシやメーリングリストで皆様にお声がけを行いました。
今回の事例ではまだまだ役が不足している側面もありますが、お送りしたメーリングリストでのご案内に含めた【今年のノーベル物理学賞が「地球温暖化を予測する地球気候モデルの開発」によるものであったことから、「SDGsの大きな柱となっている気候変動問題とシミュレーションが早期から深く結びついていたという事実」】について述べた部分は、シミュレーションに関わる皆様に知っておいていただきたいポイントでもありました。

チラシ

以下は、紹介した事例の絵+一言説明です。
全体としては、あえて簡素な内容にしてあります。今後、皆様と共により発展的な内容に取り組んでいくことを目指しているためです。言い換えるなら、取り組みの方向性を確認させていただく意味合いもありました。

  • 洋上風力:以下の1、2について紹介しました。3は都合により間に合わず・・申し訳ありません。今後は海底の地盤を解析対象として含めてみたり、日本で主流である浮体式へのトライであったり、あるいはタービンの構造をしっかり考慮した解析もやってみたいと考えています。
    洋上風力 概要図
  • 落石防護ネット:ビーム要素&接触で網目を再現し、重錘を落下。(破断あり、なし)
    技術的には、ビーム要素同士の接触で、MORTAR接触が問題なく使えることを確認したものになります。
    ネットの破損を防止する種々の機構は未実装です。最終的にはそれらを組み入れたモデルとしたことを目指しています。
    落石防護ネット 概要図
  • 砂防ダム:スリット式の砂防ダムへの土石流(DEM)、岩(1つの大きなDEM粒子)の衝突。
    少し粒子が粗かった感もありますが、挙動そのものはそれなりのものが見れていたと思います。
    コンクリート部分はコンクリート用の材料モデルを適用していましたので、大きな剛球をぶつければ右側のようにクラックが入る様子を再現できます。
    砂防ダム 概要図
  • 土石流:2021年7月3日に熱海で発生した土石流災害のシミュレーション。土砂(土石流)をSPHで再現。地形データの差分をSPHとしました。
    摩擦係数の他、SPHの粗さなどが課題として残っている。この計算例では岩に相当するDEMは省略していますが、今後、そういったものも考慮していく予定です。
    土石流 概要図
  • おまけ:ダミー人形とDEMによる、屋内の土砂流入vs人間をイメージした解析。
    土砂とダミー人形

以上、開催報告でした。

関連製品についてはこちら

非線形・動的・流体構造連成シミュレーションツール LS-DYNA
https://www.engineering-eye.com/LS-DYNA/