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コラム:マテリアルデザイン

合金の特性計算ツールによるプロセス予測

材料・工学技術部 材料技術第2課 瀬川 正仁

[2021/06/24]

CTCでは材料設計やプロセス予測ソリューションを保有し、特に合金の組織計算では、材料開発に欠かせない熱力学計算ソフトウェアThermo-Calcを中心とした解析のご相談をお受けしています。Thermo-Calcは熱力学平衡計算を主としたツールですが、アドオンモジュールにより合金の製造プロセスに着目した種々の事象を予測するツールとしても発展しています。ここでは、合金開発を効率化する材料特性予測について紹介いたします。

Thermo-Calcは、各種合金の熱力学的な特性、平衡状態を算出することが可能であり、任意の元素の割合と温度の条件のもとで、液体となるのか固体となるのか、あるいは固体のどのような相となりどのぐらいの元素を含むのかといったような結果を得ることができます。このような情報より、実験の試行回数の削減や材料設計の指針を得ることができます。
最近では、鉄鋼向けプロパティモデルや冶金プロセスモジュールといったアドオンモジュールにより、合金の製造プロセスに着目した種々の事象を予測するツールとして発展しています。

例えば、

  • 鋼の焼入れ性の評価
    合金の焼入れ性を評価することで、最適な強度と靭性を有する鉄鋼材料を製造に役立てます。実験データと最新の熱力学データをもとに構築したモデルにより、鉄鋼中の合金元素に応じて、焼入れ時のマルテンサイト・パーライト・ベイナイト組織の開始・終了温度や各分率を算出することが可能です。
    弊社でも、焼入れ性を向上させる組成探索を効率的に行ったベイズ最適化を用いた鋼の焼入れ性向上のための組成最適化の例を取り上げています。
  • 製鋼プロセスの最適化
    製鋼プロセスの転炉において、有害な硫黄やリンを除去する最適な条件の探索、酸素量とスラグ量の組合わせや廃棄物料の予測をします。また、熱伝導・物質拡散を考慮することで炉内の反応を速度論的に考慮するモデルも導入されています。時間に応じた加熱やガス・スクラップの投入などのプロセススケジュールも設定でき、精錬プロセス全体を解析可能となります。

さらに、析出粒成長計算モジュールTC-PRISMAとThermo-Calcの降伏応力計算モデルを組み合わせた計算により、固溶強化、粒界強化、析出強化を考慮した降伏応力を算出することが可能となりました。そのほか、液相の粘性・表面張力、各相の熱伝導・電気伝導や凝固割れの生じにくさを評価するためのクラック感受性係数など多岐にわたる情報を得ることができます。また、先のベイズ最適化の探索事例のように外部の機械学習ライブラリと連携するように拡張することも可能としています。このように熱力学特性評価の充実とともにプロセス設計の指針に役立つツールとして開発が進められています。
CTCでは上記のような事例やソリューションをご提供し、導入検討時だけでなく導入後もサポートを行い、お客様の材料開発にお役に立てるよう取り組んでいます。

プロパティ予測例:Al-Si合金のクラック感受性係数

プロパティ予測例:Al-Si合金のクラック感受性係数

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