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コラム:製造・構造

ランダム振動下での疲労寿命の評価法について

科学・工学技術部 複合材技術課 津田 徹

[2016/04/15]

疲労は、材料の降伏点より小さい荷重の繰り返しによるダメージの蓄積のプロセスであり、き裂の発生と進展に分解できます。疲労は、機器の構造設計者らにとって非常に重要で未だにチャレンジングな問題です。ここでは、ランダム振動下での疲労寿命の評価法について簡単にご紹介します。

悪路走行

実働荷重は、実際の使用状態で機械構造物や部材に作用する荷重であり、その荷重は複雑で、例えば、自動車の走行中の振動、エンジン振動、モータ振動、更に気象事象(風荷重)など多々あります。一般に、この実働荷重は、不規則で非確定的である運動によるランダム振動であることが多く、例えば、悪路を走行する自動車が受ける振動のように、先の挙動が正確には予測できません。そのため、この実働荷重の多くは実際の測定から求められるわけですが、信頼のある実働荷重の把握には長時間測定を行う必要があります。

このランダム振動下で疲労寿命を評価する場合、一般に、時間領域で計算する手法と周波数領域で計算する手法を選択することができます。時間領域で計算する過渡応答解析では、実働荷重を時系列波形として直接与え、解析結果として得られた構造物の評価対象部の応力の時系列波形に対し、レインフローなどの信号処理により応力振幅と頻度分布を求め、これに材料疲労特性曲線(S-N線図)とこれにマイナー則を適用して疲労寿命が求められます。しかしながら、この手法は、通常、非常に長い時間を時々刻々とシュミレートすることになるため、余り現実的ではありません。

ランダム振動

一方、周波数領域で計算する手法であるランダム応答解析は、これに統計的手法を組み合わせた手法であり、幾つもの周波数の波形が複雑に重なりあった不規則振動に対する応答を、統計や確率論的なアプローチを使って解析する手法であるため、処理が速くて効率的に応答を求めることが出来ます。このランダム振動解析では、実働荷重を時系列波形として直接与えるのでは無く、高速フーリエ変換による周波数分析と平均化などのスムージング処理を行ってパワースペクトル密度(PSD)に変換した形で与えます。解析結果として、応答のPSD、単位時間当たりのゼロ交差回数、応答の二乗平均平方根(RMS)が得られます。ランダム振動下での構造部品の疲労寿命は、ランダム応答解析で得られた応答応力パワースペクトル密度関数に対し統計的な手法により確率密度関数(PDF)を求め、これにS-N線図とマイナー則を適用して推定されます。その際のPDFを求める方法として、3バンド法、Dirlik法、ナローバンド法などが良く知られています。

弊社が取り扱っている製品では、LS-DYNAおよびSIMULIA fe-safeにて、ここでご紹介したランダム振動下での疲労寿命の評価を行うことが出来ます。 LS-DYNAでは、NVH (Noise,Vibration,Harshness) の計算機能として周波数応答解析、ランダム振動解析、ランダム疲労解析、応答スペクトル解析、音響解析が可能で、振動編のトレーニングコースも新設しましたのでご活用下さい。

汎用非線形構造解析シミュレーションツールLS-DYNAについてはこちら
http://www.engineering-eye.com/LS-DYNA/index.html

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