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株式会社RISE構造設計事務所 様「AutoPIPE」と「STAAD.Pro」を有機的に連携し、
配管の熱応力解析と架台の耐震解析の高効率化を実現

お話を伺った方

株式会社RISE構造設計事務所 株式会社RISE構造設計事務所
代表取締役社長 野口 英孝 様


株式会社RISE構造設計事務所(以下、RISE構造設計)は、野口英孝社長が2005年4月に設立、小所帯ながら建築構造物の設計、プラント構造物の構造設計、配管応力解析業務を行っている。野口社長は建築物、工作物、設備機器、設備配管、原子力設備など各種構造物の設計・構造計算の経験を踏まえて、同社を設立した。これまでに原子力プラントの煙突設計、大スパン構造の倉庫設計、工場の機械基礎設計、天然ガスや石油プラントの架台・基礎設計、タンク基礎設計など幅広い分野で業務を展開している。既に経験済みの業務をこなすとともに、新たな業務にチャレンジすることにより技術とノウハウを蓄え同社は成長を遂げてきた。
こうした中で、近年、増加傾向にあるのがプラント構造設計と配管応力解析である。特に最近は、海外向けプラント構造物の設計をはじめ配管熱応力解析・耐震解析が増えている。構造物の安全性に対する関心が高まる中、同社は精緻で信頼性の高い設計・構造解析を通じて、安全な社会実現の一翼を担っている。

2005年に発覚した耐震強度偽装事件は建築物に対する信頼性を損ねると同時に、事件を契機に構造設計の確認申請の厳格化が図られるようになりました。プラント構造物には、一般の建築物のような審査機関はないものの、その性格上、一般の建築物よりはるかに高い安全性が求められています。
プラント配管は、配管の形状、ルートが各プラントにより全く異なり、配管種別によって耐力も異なります。それら配管を支える架台は、配管のみならずそのプラントが設置される場所の地盤、風なども考慮する必要があります。RISE構造設計では、米国Bentley Systems, Inc.が開発しCTCが販売する配管系応力解析システム「AutoPIPE」および3次元架構モデルの骨組構造解析・設計支援システム「STAAD.Pro」を導入、配管の熱応力解析と架台(パイプラック)の構造解析を連携させることで効果的な解析を行っています。
インタビューではRISE構造設計における最近の業務概要、AutoPIPESTAAD.Pro導入の経緯や活用状況について伺いました。

建築物、プラント構造物、配管の3分野をメインに
設計・解析業務を展開

設計事務所は代表者個人の力量に負うところが大きいことから代表者の名前を社名に付けることが多いのですが、組織として何かできないか、また、常に成長していきたいという思いからRISE(昇る)という社名にしました。この"RISE"には会社だけでなく社員の皆が成長し、次代を担って欲しいという願いも込められています。
当社は今期で5期目を迎えました。私自身は設計事務所勤務時代に工場やプラントの鋼構造物の設計、その後マンションやオフィスビルなどのRC構造物の設計を経験しました。次にエンジニアリング会社で配管やプラント関係の構造解析に携わりました。その会社では私が構造解析業務を立ち上げ、構造解析と配管設計をリンクさせるようにしました。当時は配管のルート設計が主業務で、配管の種類や配管の使い方を覚えました。このように一般建築物からプラント構造物までひととおり経験したのち、RISE構造設計を設立したのです。
当社の業務は大きく建築物、プラント構造物、配管の3つのカテゴリーに分類できます。また、メーカーからの依頼で、機器自体の構造解析業務も請け負っています。それぞれのカテゴリーごとに設計・解析ソフトウェアを導入、社員には3つのカテゴリーをすべて経験させています。3分野を経験することで知識を広げるとともに、考え方が多面的になり、設計のバリエーションが増えてくるからです。
従来、当社の業務は建築物とプラントが半々でしたが、最近はプラント、配管の業務比率が高まる傾向にあります。それはプラントの分野でも耐震設計の重要性が再認識され、これを受けて高圧ガス基準も厳格化されるなど、従来にも増して安全性が求められるようになったからです。その一環として配管応力解析のニーズも高まり、蒸気配管や高温配管などの解析に耐震解析を合わせた解析依頼が増加、より安全な設備をつくることの手助けになればとの思いから、配管の熱応力解析業務を行うことにしました。
配管設計の流れは、エンジニアリング会社から提供されるP&IDと呼ばれる配管のルート図(各機器をどんな配管で繋ぐかという基本設計)を基に現地での機器配置のプロットプランを決め、その上で配管の繋ぎ方、サポート方法を決定します。これは一般にルート計画と呼ばれています。当社ではこのルート計画を基に、配管内の流体を考慮して熱応力解析と耐震解析を行います。次に、材質、管厚、サポート位置などを示したものをフィードバックし、それをルート図に反映して提供します。

訪問インタビュー:ユーザー訪問:「AutoPIPE」と「STAAD.Pro」を有機的に連携し、配管の熱応力解析と架台の耐震解析の高効率化を実現

業界標準の「AutoPIPE」を導入し
配管の熱応力解析業務に進出

プラント構造物が一般の建築物と構造面で大きく異なる点は、例えば、マンションの場合は屋上に高架水槽を設けたり、工場の場合は機械やクレーンを載せたりするだけなのに対して、プラント構造物は300トン、400トンという桁違いに重い機器が載ることです。このようにプラント構造物は荷重が大きい上に、細部にわたり壊れないように設計しなければなりません。
配管応力解析のビジネスを始めるにあたっては、まず、配管を支える架台の構造設計と配管の熱応力解析をリンクさせられないかということを考えました。そこで配管の熱応力解析用ソフトウェアを探ししたものの、どこを探しても最終的に「AutoPIPE」に行きあたりました。
AutoPIPEは、静解析、動解析等の配管専用のソフトウェアとして十分な解析機能を備えており、また、部品関連、材料関連のデータライブラリも充実しています。さらに、ASME、JSMEをはじめ高圧ガス設備等耐震設計基準・指針、消防法、設計に必要な各国の評価基準に対応しています。多くの同業者はAutoPIPEを使用していて、業界標準として使われていることから当社もAutoPIPEを導入することにしました。
導入してみると精度的にも予想以上のものがあり、使い方も容易で、配管の熱応力解析は基本的にすべてAutoPIPEを使用しています。
プラントの配管内は、流体、蒸気、熱風などが通りますが、AutoPIPEではそういうものが流れる高温配管の熱応力解析と耐震設計を行っています。熱解析で重要な要素は応力を十分に逃がすことです。できる限り拘束点を少なくし応力の集中を緩和します。これに相反して地震や風圧力の解析で重要な要素は、拘束点をできるだけ多く取り、過大な変形を抑えることです。地震や風圧力は常時作用しているわけではありませんが、熱応力は常に運転時に作用します。よって、地震等が起きた場合は熱と地震荷重が同時に作用することとなります。この相反する状態を満足させて、どこを、どのようにサポートするのかが配管設計の難しさであり醍醐味でもあります。双方から配管を守るためにはサポート形状とサポート位置のバランスが重要になってきます。当初はその見極めがなかなかわからず苦労しましたが、いろいろなケースを経験することでノウハウの蓄積ができ、また、サポート架台の構造解析も同時に行なっているため、最適な配管計画・サポート計画ができるようになりました。

STAAD.Pro」の導入で
海外向けプラント業務も活発に

当社はもともと鋼構造物の設計、構造解析を行っており、その中でプラントの架台設計も行ってきました。応力解析ソフトウェアも数種類導入し架台の設計に利用していましたが、近年、海外プラント構造物の設計が増えてきて、それらのソフトウェアでは十分に対応できなくなってきました。海外の場合は、国によって地震の係数や風に対する考え方が異なるため評価基準も異なりますが、従来使用していたソフトウェアには海外の評価基準が装備されていなかったのです。そこで海外の評価基準を備えているソフトウェアを探したところ、CTCが販売する「STAAD.Pro」があることを知り、導入することにしました。STAAD.Proは海外の評価基準が網羅されていることに加え、AutoPIPEと同じBentley Systems, Inc.が開発しているため、AutoPIPEとの連携が取れ、連成解析ができることも将来有効だと考えました。さらに、有限要素法による解析もできるため、設計の幅を広げられることも魅力でした。
STAAD.Proは米国のACIやAISC、英国のBS、欧州のEC2/EC3といった各国・地域の評価基準を有しているため、それらの機能を使うことで海外プラントにも容易に対応できるようになりました。現在、海外プラントの架台設計はすべてSTAAD.Proを使用、米国のACIやAISC基準をメインに、欧州基準などを必要に応じて使い分け、これまでにサウジアラビア、オマーン、アルジェリア、米国テキサス州、メキシコの業務を手掛け、現在進めているマレーシアのプラントでは、英国基準を適用しています。
プラント設計は、一般の建築物のように確認申請を出すための細かな規定は定められていません。そのためにどういう設計がベストかを判断するのが難しいという問題があります。また、架台に振動を発する大型の機械が置かれる場合も多々ありますが、それを抑えるためにどういう設計がよいかなど、一般の建築物にはない問題があります。こうした問題には、STAAD.Proを使って振動を抑えるために外力を考慮してモデル化するなどして最適な解を求めています。
さらに、STAAD.Proの有限要素機能を利用して、コンクリートスラブの開口に対する応力分布の検証を行っている他、AutoPIPEとの連携により国内の架台や配管サポートの設計にも活用するなど、従来より設計の幅を広げることが可能になりました。

容易な入力、詳細な計算、迅速な解が特徴のAutoPIPE
海外プラントの構造解析に欠かせないSTAAD.Pro

プラント配管の熱応力解析はゼロからのスタートでしたが、AutoPIPEは荷重や温度を入力すると解析結果がすぐに出てきます。その上、計算内容を追っていくと、内部のことがすべてわかる仕組みになっています。地震が発生したときに構造物は横に変形するとともに、初期軸力によって、たわみが生じますが、AutoPIPEはこのような細部まで計算でき、しかも作用荷重の順番を変更することも可能です。このようにAutoPIPEは入力の容易さ、詳細な計算ができること、そして計算スピードの速さに特徴があります。このため、さまざまなケースをシミュレーションでき、そこから出てきた何十というパターンから最適な方法を選ぶことができます。また、AutoPIPEでは、例えば配管が3mm動いたらストップをかけられるなど、ギャップと呼ばれるクリアランスが考慮できます。これは他のソフトウェアでは対応できない機能であり、より実情に近い結果を得られる点もAutoPIPEの大きな特徴と言えます。
一方、架台の応力解析は国により評価基準が異なるものの、解析そのものは万国共通です。しかし、断面算定のプロセスが国により違います。STAAD.Proは、世界各国の評価基準が装備されているだけでなく、断面算定のプロセスの違いを考慮した上で計算できるため、いろいろな方法を試すことができるというメリットもあります。例えば、柱の太さの基準が日本とアメリカで違う場合、柱の鉄筋の数も異なってきますが、STAAD.Proはそうした基準の変更もボタン1つでできます。このようにSTAAD.Proは、いま増えつつある海外プラントの構造解析を非常に効率よく計算できるとソフトウェアだと言えます。

原子力プラントの配管解析を
AutoPIPEに移行するための検証業務を実施

現在、当社では、原子力プラントの計装配管の解析ソフトウェア移行の検証業務も行っています。
AutoPIPEは、配管熱応力解析のデファクトスタンダードといえるものであり、AutoPIPEで計算すれば、発注側のチェックも入力項目だけで済むと言われるくらいこの分野では信頼性の高いソフトウェアです。ただし、原子力分野だけは客先指定のソフトウェアを使用することが求められ、SAPという解析ソフトウェアを使用していました。近年、様々な分野で振動解析の必要性がうたわれるようになってきて、原子力プラントでもその重要性が問われています。しかし、SAPは熱解析および耐震解析を行えますが、振動解析は行えません。従来は、SAPで熱解析および耐震解析を行い、別のソフトウェアで振動解析を行っていましたが、2つのソフトで解析を行うことは煩雑です。
AutoPIPEには、振動解析機能はありましたが、これまで日本の原子力プラントで解析を行う際の評価基準としてMITI-3(通産省告示501号 第3種管-1980年版)しかありませんでした。しかし、AutoPIPE V8i からはJSME(発電用原子力設備規格)が追加され、現状使用されている評価基準で解析を行えるようになったので、熱解析および耐震解析とともに振動解析を行えるAutoPIPEへと使用ソフトウェアを移行するための検証業務を、当社にいただき、そのお手伝いをさせていただいています。
当初、SAPの入力状況に合わせてAutoPIPEでも入力をしなければならず、その入力方法を模索するのにたいへんな苦労がありました。SAPは線形解析を行うソフトウェアであるのに対し、AutoPIPEはサポートの非線形を考慮した解析が行なえるソフトウェアで あるからです。また、SAP独特の入力方法を解読し、その入力方法がAutoPIPEのどの入力方法に適しているか模索しなければならないからです。
現在では、AutoPIPEの応力値がSAPの応力値とほぼ同じ値になるまでに入力できるようになり検証作業もスムーズに行えるようになってきています。今後は、振動解析の検証業務を展開することを考えています。

AutoPIPESTAAD.Proによる連成解析で
より精度の高い解析を目指す

今までは、配管と架構はそれぞれ別々に解析が行われてきました。そのため、配管のサポート点は変形を起こさない完全固定として解析されていましたが、実際は架構の上およびサポート架構の上部に載っているものがほとんどです。当社ではAutoPIPESTAAD.Proを使用し、架台と配管の連成解析を行うことで、より精度の高い解析を行いたいと考えています。まだ連成解析のニーズはあまり高くありませんが、今後は必要性が増してくると考えています。それに先駆けて、連成解析を行った場合と行わなかった場合の解析結果の比較をすべく、現在データを集めている段階です。例えば、サポート架台の剛性を考慮に入れて配管の解析をすることにより、完全固定となっている部分に応力が集まっていたものが架構の形状および部材を調整することで、その他の部分に応力を負担させることになり、配管も架台もより安全で経済的な設計が可能となります。
もう1つは配管の固有値解析、時刻歴応答解析など、振動についての解析を行っていきたいと考えています。例えば、非常に高い煙突では共振が起こり、それが最大の荷重になります。また、プラントでもさまざまな共振が発生します。こうした振動に対する解析精度が向上すれば、より安全で経済的な構造物をつくることができます。さらに、複雑な形状をした床、さまざまな形状の容器などについて有限要素法を用いた解析、高圧ガス指針のレベル2に対応した解析、原子力配管のJSME-S-NC1、NC2を使用した解析など、業務の拡充を図っていきたいと考えています。

訪問インタビュー:ユーザー訪問:「AutoPIPE」と「STAAD.Pro」を有機的に連携し、配管の熱応力解析と架台の耐震解析の高効率化を実現

CTCのコンサルタント的な立場での助言に期待

CTCとはAutoPIPEの導入以来、さまざまな連携をとらせていただいています。当社でわからないことがあって質問すると、かなり複雑な内容でも翌日には回答をいただけるなど、レスポンスが早いので非常に助かっています。また、この分野における社会の動向や技術動向などもこまめに知らせていただき、会社の方向性を定めるのに参考にさせていただいています。当社としては、AutoPIPESTAAD.Proを使い信頼できる設計をすることで、これらのプログラムが信頼できることをアピールすることでお役に立ちたいと考えています。
また、当社では、AutoPIPEを導入して間もない企業様に対し、AutoPIPEを使用した解析のコンサルティング業務も行っています。当社で今までに蓄えた知識や経験を基に、実際の業務を通して入力・解析上注意すべき事柄や問題解決の方法を提案させていただいています。
構造解析の重要性が再認識される中で、いま以上に細部にわたる構造解析が求められるようになってくると考えられます。当社としてもそうした時代の流れを見ながら、建築や配管以外に機械、土木関連を含めたエンジニアを募集しています。他領域の人材を募集するのは、専門分野にない視点から建築やプラント構造物を見ることができるからであり、そういう視点が求められるときが必ず来るものと考えているからです。
より安全でより経済的な構造物をつくるために、これからも常に最適な設計法を取り入れ構造物の安全性を高めることで、微力ながら社会に貢献したいと考えています。そのためにも、CTCには今後ともコンサルタント的な立場で助言をいただけるようお願いいたします。

インタビューを終えて │ 後 記 │Editor's notes
恵比寿駅近くのオフィスを訪問するのは、何回目になるでしょうか。今日こそは、お尋ねしようと考えていた質問がありました。社名の由来です。野口様は、相手の立場に立って、難しい内容を、正確性を損なわないで、わかりやすく説明できる建築構造家です。その人柄に基づき、建築構造士・構造計算適合性判定員として、建築、プラントなど幅広い分野で活躍されており、今回は、たいへん興味深いお話を伺うことができました。
今後もRISE構造設計事務所様のさらなる発展に、当社が寄与できれば幸いに存じます。
最後に、野口様には大変貴重なお時間を頂戴いたしまして誠にありがとうございました。
(聞き手:CTC小嶋)

名称 株式会社RISE(ライズ)構造設計
(2013年7月に上記の社名に変更)
本社所在地 〒153-0063
東京都目黒区目黒1-4-16 目黒Gビル 9階
(2017年1月に上記に移転)
代表者 代表取締役社長 野口英孝(1級建築士、建築構造士、構造計算適合判定士、構造計算一級建築士)
設 立 2005年4月1日
資本金 1,000万円
事業内容 【建築構造物設計業務】
・一般建築物、特殊建築物等の構造計算書作成・構造図作成
・工場・マンション・立体駐車場・福祉施設等の設計
・確認申請書類(構造部門)作成
・工作物申請書類(構造部門)作成
・煙突、モニュメント、看板、機器架台等の設計
(使用ソフトウェア:Super Build SS3、SEIN La CREA)
【プラント設計業務】
・国内・海外向けプラント構造物の設計
・パイプラック、機器架台、煙突支持架台、機器基礎の設計
・消防法、高圧ガス基準による構造物の設計
・圧力タンクの設計
・有限要素解析による応力評価業務
(使用ソフトウェア: STAAD.Pro、midas GEN、FAP-3)
【配管応力解析業務】
・配管熱応力解析
・配管耐震応力解析
・高圧ガス基準に準拠した配管耐震設計
・配管サポート設計
・シュー、ガイドの設計
・配管固有値解析・振動解析
(使用ソフトウェア:AutoPIPE)
業務実績紹介 株式会社 RISE(ライズ)構造設計事務所 業務実績紹介
1.建築分野
~薬品精製工場
薬品を取り扱うため、地震による揺れを最小限に抑えることを意図として設計を行い、まず1階に免震層を設け、地盤の揺れが直接建物に及ぼす影響を軽減しました。次に変形量が最小になるよう柱を鉄筋コンクリート造とし、地震荷重の軽減を計るため梁を鉄骨造とし、これにより大スパンの無柱空間が実現できました。設計のポイントとなったのは柱と梁の仕口部分でした。メカニズム時応力を算出し、保有耐力を算定する際、異種接合部である柱梁仕口部が先行して崩壊してしまうために、耐力の低減を起こしてしまっていました。仕口部の崩壊を押さえるためにコンクリート内にダイヤフラムを埋め込む特殊な工法を採用することで、その問題を解決することができました。これらの結果、地震時でも揺れが最小限でかつ広い空間を確保した薬品精製工場を設計することができました。
2.工作物分野
~煙突
一口に煙突と言っても、鋼製の煙突、鉄筋コンクリートの煙突、架台により支持されるもの、煙突のみの単体であるもの、建物の屋上より突き出ているものなど、多種類があり、各々、設計方法が変わってきます。煙突構造設計指針(2007年版)、塔状構造設計指針・同解説(1980年版)、建築物荷重指針・同解説(2004年版)などさまざまな基準があります。それぞれの基準には特徴があり、基準の採用に際し十分な注意を要します。また、設計条件としての判断では、固有周期の算定、減衰係数の設定、解析時の分割数などに拠っても結果が大きく変わってしまいます。よって、各係数を設定する際には十分な知識と経験が必要となります。当社では、年間5~10基程度のさまざまな煙突を設計しており、煙突にとって一番注意しなければならない風直角方向の共振現象についても詳細な検討を行ってきました。また、この知識は煙突のみでなく、アンテナの設計やモニュメントなどさまざまな工作物の設計にも応用しています。
3.プラント構造物分野
~機器架台
エネルギープラントなどの機器架台は大規模のものが多く、機器の配置によりさまざまなレベルに架台を作成し、解析を行うことが必要となります。また、配管ルーティングおよび点検時のアクセスルートによる制約を考慮しながら柱およびブレースを配置し、効率よく力を分散させ地震力に耐えられる架構を計画します。時には力を分散させるだけでなく、コアフレームを計画し、その部分に力を集約させることで、より良い構造計画ができる場合もあります。現在は解析ソフトが発達し、さまざまな解析が可能となりました。しかし、あくまでも解析ソフトはツールであって荷重条件、モデル化等、設計者の判断により、結果が大きく変わります。このようなことから上手にソフトウェアを利用していくことが重要だと思っています。
※2009年11月現在