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株式会社小松製作所 様建設機械改良のための掘削シュミレーションに
粒状体挙動解析コード「PFC」を応用

お話を伺った方

 生産技術開発センタ
主任技師  :天野昌春様(写真中央)
上級主任研究員 :寺坂裕二様(写真右)
主任研究員 :加納慎也様(写真左)



(株)小松製作所(コマツ)は、建設・鉱山機械分野で国際的なリーダーとしての地位を確立しており、シリコンウェハ、半導体製造関連機器などのエレクトロニクス分野や、プレス機械、フォークリフトなどの産業用機械の分野でも幅広い商品とサービスを提供している。今年度は、「環境・安全・経済性」をキーワードとして、独自技術による従来にない特長を持った戦略商品を発表していく計画とのことで、これに合わせ、企業広告などのイメージキャラクターとしてNYヤンキースの松井秀喜選手を起用している。これは日本の野球界をリードし、さらに世界にチャレンジする松井選手の姿が、グローバルに事業の発展をめざすコマツの方向性と一致するため。

建設・鉱山機械/産業機械メーカーとして世界のトップグループに位置するコマツ。国内外で、油圧ショベルやミニショベル、ホイールローダーなど多種多様な機械が活躍しています。コマツは市場の要望に応え、商品の改良・モデルチェンジを重ねており、そのための研究開発を行っているのが大阪府枚方市にある生産技術開発センタです。
同センタでは、CRCが米国ITASCA社と業務提携して提供している個別要素法(DEM)による 「粒状体挙動解析コード:PFC(Particle Flow Code)」を開発ツールとして利用されています。 同センタの天野昌春氏、寺坂裕二氏、加納慎也氏に生産技術開発の最先端で、PFCをどのように活用されているか伺いました。

トップレベルのコスト競争力と他社を圧倒する特徴を持った商品の開発-生産技術開発センタ

コマツは商品の機能やコストの大幅改善を目ざして、研究開発を推進しています。コマツグループ全体の研究開発拠点としては研究本部があり、中長期的視野に立った基礎・基盤研究を中心に、次々世代をどうするかといった先を見越した研究を行っています。
私たちが所属する生産技術開発センタは、生産本部の中の研究部門として、CAD/CAM/CAEなど製造分野のコンピュータシステム技術開発や、機械加工・溶接・組立・塗装・検査などの生産技術および材料の研究・開発を行っています。 具体的には、各工場と連携して、建設機械を主体にモデルチェンジや部分改良を検討するなどを行っており、トップレベルのコスト競争力と他社を圧倒する特長を持った商品の開発に力を注いでいます。

建設機械は土砂との相互作用と考え、PFCでシミュレーション。 

CRCとは、10年ほど前にPFCの開発コンソーシアムに参加したとき以来のお付き合いです。当社では粉末冶金も手がけており、当時は粉体など粒子が扱えるソフトウェアがあればと思い参加しました。その後しばらくブランクがあり、その後、1995年ごろに橋脚の解析でコンクリートと鉄筋を粒状体でモデル化したという話を聞き、私たちの仕事にも応用できるのではないかということになり、3~4年前から本格的に使い始めました。
当センタでは建設機械の部品の磨耗を減らす研究もしています。油圧ショベルのツメは、掘削のときに岩や土と接触する頻度が高いところほど早く磨耗します。こうした部品を粒子の集合体としてモデル化し、磨耗すると粒子がとれていくように設定したら磨耗のシミュレーションができるのではないかと考え、CRCに相談したのですが、これはちょっと難しいということでした。
その後磨耗だけに限らず、もっといろいろなことに使えるようにするにはどうしたらいいかと考えていくうちに、建設機械は土砂との相互作用である―この相互作用を解析することはできないか、と思いつきました。どうしたら掘削効率が上がるか、土質が変わったらどれだけ作業量が落ちるかなどは、これまでは実際に機械を動かして測定していました。これがシミュレーションで解析できれば、開発設計に応用できます。
土を運んでいるときの反力のデータをもとにNASTRANなどで構造解析を行うことにより、どれだけ機械に負荷がかかっているかがわかります。その結果を設計へも応用できます。こうした方向でPFCの利用を進めてきました。

建設作業機械のブレード部へ作用する応力を求める手法の確立の向けて。

Fish言語

PFCの機能で開発元(米国ITASCA社)コードのオリジナル言語です。このFISH言語により、以下のようにユーザーは新しい変数や関数を定義できます。

  1. モデルの作成。
  2. 新たなコマンドの作成。
  3. 荷重条件や境界条件のコントロール。
  4. 独自の材料特性の定義(時間依存、荷重依存など)。
  5. パラメトリックスタディの自動化。
  6. 任意プロット関数の作成。
・・・・・・ など。

モデルチェンジの開発期間短縮、コスト削減にシミュレーションが役立つ。

商品のモデルチェンジに際しては、まず試作図面を作成し、実際に試験機を作ります。実用試験部という部署があり試験フィールドを持っていますので、そこで試験機を動かしてデータを取って検討します。改良効果がなければ、また図面を書き直し、試作し、試験をして……という工程を繰り返し行うのです。これをシミュレーションによって絞り込めれば、試作の回数が減るので、開発期間やコストが短縮できます。また今まで経験的に設計していたものを、真の意味での最適設計に近づけることができます。
開発には納期もあるので、そう何回も試作はできませんが、こういうツールを用いればベストなものが短期間に作れる可能性が大きくなります。
競争力の強化のため、その期間を半減させたいし、費用も半減させたい。こうなると実機を作って試験する時間がなくなります。
機械のあらゆるところに工夫する余地はあり、ちょっとした手直しでコストダウン、機能アップできるところもあります。
お客様からの要望で、最も多いのが磨耗の問題です。生産機械ですから機械をできるだけ止めない、維持費が安いことが重要であり、消耗品の交換回数を減らすなどランニングコストに係わるところは、常に改良が求められているのです。

建設機械改良のための掘削シュミレーションに粒状体挙動解析コード「PFC」を応用

幅広く使える可能性のあるソフトウェア――PFC。 

PFCは社内で次第にその使いみちが見えてきたところです。開発の流れの中で一部使い始めており、PFCでの研究成果を織り込んだ機械がいずれは世に出るでしょう。社内でも研究していま すし、難しい問題はCRCに解析を依頼しています。
現状は、掘削シミュレーションの結果と実際の試験機での掘削データを照らし合わせるところが、まだなかなか難しいものがあります。試験フィールドの土の特性を解析で使える物性値に置き換えていかなければなりません。また、現実には土の粒子は細かすぎてモデル化できないので、解析に使える数値に変換します。ここが知恵の絞りどころで、土砂でもいろいろな表現の仕方があり、目的によってこうしたほうがいいということがいろいろ出てきます。今後の要望として、土質のデータベースで簡易的に使えるものが供給されるとありがたいですね。 また、いま石を割るクラッシャーのモデルを研究していますが、石をどうモデル化するかが難しい。現実のとおりにすると複雑になりすぎるのです。どうやってポイントだけモデル化するかが腕のみせどころです。 バケットの形状の検討などでも、どこにどのような荷重がかかるかなど、どういうデータで与えたらいいかわからなかったのですが、PFCを使って相互作用として出た結果を構造解析に持っていけるのではないかと思います。その仕組みはほぼできたので、あとは評価をどのように行うかの問題です。 個別要素法は以前からありましたが、コンピュータパワーが追いつかず、最近のハードウェアの進歩でようやく十分な計算ができるようになりました。PFCは、粉体のような不連続なものから、コンクリートの塊を破砕でバラバラにするようなのものまで、幅広く使える可能性のあるソフトウェアといえるでしょう。

インタビューを終えて │ 後 記 │Editor's notes
PFCは守備範囲が広いソフトウェアであり、様々な問題について目的に合った使い方をすることが可能です。掘削を土と機械の相互作用としてとらえ、機械にどういう影響があるかというところまで解析しようというのは全く新しいアプローチであり、今の時点では他に例がありません。また、PFCの結果を構造解析に持ち込み、連続体として計算するという手法も斬新です。コマツ様には、奧深いところまでPFCを使っていただいており、これによりCRCおよびITASCA社も共に最先端技術へのアプローチに取り組んでいます。

最後に、天野様、寺坂様、加納様には貴重なお時間を頂戴いたし、誠にありがとうございました。(聞き手:CRC岩崎)

名称 株式会社小松製作所
 
http://www.komatsu.co.jp/
本社所在地 〒107-8414 東京都港区赤坂2-3-6
創業 1921(大正10)年5月13日
代表者 代表取締役社長(兼CEO 坂根 正弘
資本金 701億円20百万円(単独)
売上高 3,769億12百万円(単独)(2003年3月期)
主な事業概要 建設・鉱山機械、エレクトロニクス、産業用機械、車両、環境関連システムなどの事業を中心に、住宅関連、運輸・物流などの事業を展開
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