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株式会社 日建設計シビル 様都市再生を目指す再開発プロジェクトに、耐震/リニューアル分野で挑戦
-耐震診断や地盤の交通振動解析でDINASを利用-

お話を伺った方(写真左より)

  技術部 技術開発グループ
副部長 博士(工学)・技術士 :川満逸雄様
設計主管博士(工学)・技術士・一級建築士:西山誠治様
博士(工学):本田道識様


(株)日建設計の土木部門は、1919年住友によって創設された「大阪北港株式会社」に源流を発する。その生い立ちから、民間事業での臨海部の工業立地や石油化学コンビナートの設計など、わが国の産業基盤整備関連のプロジェクトに携わる一方、道路、鉄道など公共事業による社会基盤整備にも積極的に参画してきた。現在は独立した土木設計事務所として、駅施設・駅前広場、地下街、地下駐車場、歩行者施設、公園などの都市基盤施設や、住宅団地・工業団地などの面的整備・開発のコンサルティング業務を中心に、都市再生、環境、情報など新しい課題にも挑戦し、優れた技術・サービスを提供し続けている。

株式会社日建設計シビルは、高度な土木技術をもとに都市・環境・地盤などの広範な分野において、企画・計画から設計監理までの業務を行う総合設計事務所です。2001年7月に、わが国最大級の設計組織である株式会社日建設計の土木部門の業務一切を引継ぎ分社独立されました。

同社技術部ではCRCの構造物・地盤連成応答解析システム「DINAS」、地震動作成/波形処理システム「D-WAVE」を、また地盤構造設計部では地盤FEM解析システム「Mr.SOIL3D」を導入いただいています。

今回は、技術部技術開発グループの川満逸雄、西山誠治、本田道識の3氏に、主に耐震分野でのCRCソフトウェアの活用状況についてお伺いしました。

耐震診断やリニューアル関係で高度な解析を実施---技術開発グループ。

最近、都市の再生を目指す再開発プロジェクトがよく行われていますが、日建設計グループの特色は、そうしたプロジェクトに建築と土木の両面からアプローチできるところです。日建設計シビルが建築と土木の隙間を埋める分野を担うことも多いのです。 また、原子力や先端技術分野などの特殊な土木工事を必要とするプロジェクトでも多くの実績があります。

技術部には監理/工務/技術開発の3つのグループがあり、技術開発グループでは主に耐震関係、リニューアル関係の業務を担当しています。

耐震分野では、耐震診断、地盤・構造物の地震応答解析、地震動作成、地震リスク解析などを行っています。設計基準の範囲内のことは設計部で対応しておりますが、基準外や高度な解析を必要とする困難な問題、そして調査、研究的な業務については技術開発グループで対応しています。

地盤の交通振動解析も行っています。交通振動とは、列車や自動車が走ったときに周辺に伝わっていく地盤振動のこと。最近は環境問題として取り上げられることも多くなっており、メカニズムや理論をはっきりさせて対策を立てたいということから、解析の依頼が増えています。例えば、列車の本数を増やしたりスピードアップしたりすることで、振動に変化があるのか事前に確認したいといようなときは、解析の面から判断するしかありません。振動の影響の及ぶ範囲も地盤条件で千差万別です。鉄道から20mのところより50m離れたところのほうが、振動が大きいということもあるのです。

また、最近注目を集めているリニューアル関係、例えば、RC構造物のメンテナンスや長期耐久性、それに対する補修・補強工法の検討なども当グループで行っています。例えば、事業者が高架橋の桁を補強したいというときに、補強工法にはどういう方法があるかを調べ実験のコーディネートもするなど、特定の技術にかたよらずに中立的な立場で事業者の判断を手助けするような立場の活動をさせていただいています。

大宮市/さいたま新都心東西連絡人道橋   広島高速道路公社/広島西大橋
大宮市/さいたま新都心東西連絡人道橋
「大宮ほこすぎ橋」
  広島高速道路公社/広島西大橋

地盤に強い構造解析ソフトウェアとしてDINASを導入、地震被害解析にも活用。

もともと建築設計部門ではコンピュータをよく使うので、当社でも種々のプログラムを社内開発しており、土木でもそれらを使用していました。しかし、建築物の解析には強くても土や地盤の解析は、あまり得意ではありません。それで地盤の解析に強いソフトウェアを探していたのです。そんなとき、CRCのDINASを使う機会があり、良い感触を得ました。特に3次元の有効応力解析や複素応答解析、軸対象問題が1本のソフトウェアでできるというのが大きなアドバンテージとなりました。DINASを導入したのは2001年8月です。その後、地震動の策定のためにD-WAVEも導入しました。また、Mr.SOIL3Dは地盤構造設計部で導入し、パイルドラフト基礎などの3次元解析等で使用しています。

DINASの使用実績には様々なものがありますが、その中に兵庫県南部地震で大きな被害を受けた神戸市営地下鉄・大開駅の地震被害解析があります。解析の結果、構造的な配筋がよくなくて柱のせん断耐力が不足していたために大きな被害となったということがわかりました。しかし当時、地下構造物は耐震設計の必要がないと考えられていたのですから、これはやむを得ないことともいえます。あの地震をきっかけに耐震設計は大きく変わりましたが、地下構造物の耐震設計もしっかりと行うようになったことが一番大きな変化といえるでしょう。

大開駅の地震被害解析   橋台・盛土:盛土上交通による振動伝搬解析
大開駅の地震被害解析   橋台・盛土:盛土上交通による振動伝搬解析
(20Hz定常加振鉛直変位最大値分布)
     
高架橋:3次元解析(固有値解析結果   機械基礎:点加振解析モデル
高架橋:3次元解析(固有値解析結果   機械基礎:点加振解析モデル
 
盛土:地震解析(有効応力)
盛土:地震解析(有効応力)

とはいえ、すでにある地下構造物は、強度が不足しているのがわかっても中柱以外の補強は困難であるのが現状です。土木学会の中の委員会でもこうした構造物を今後どうしていくべきかが課題となっています。

DINASは耐震分野だけでなく、地盤振動の計算や一般の設計の支援にも使用しています。同じソフトウェアで様々な解析を実施できる利点は大きいです。以前はそれぞれ別のソフトウェアに慣れる必要があり、たまにしか使わないのでパラメータの入れ方を忘れていて動かないとか、そういう苦労もありました(笑)。いまはDINASのおかげで解析に取り組む精神的なバリアーが小さくなりました。

より大規模で高度な解析を行うために、DINASの使いやすさと機能アップに期待。

必要であれば、3次元の解析も積極的にお客様に提案しています。特に地盤振動については3次元解析でないと本当の答えは出ません。ただ3次元解析の比率を1とすれば、2次元解析は10くらいの割合です。したがって2次元解析をいかに効率的に実施するかも重要です。この点でDINASのモデラーは使いやすいのですが、CADで書いたものがそのままモデリングのデータになるような機能があるとより便利だと思います。DINASは、解析に慣れていない設計者にとってはまだ少し敷居が高いソフトウェアなので、もっと楽に入力できるようなオプションがあっても良いのではないでしょうか。

また、結果のチェックをどのようにするかという問題もあります。もちろん経験が必要なのですが、解析の経験が少ない担当者では出てきた答えが正しいかどうかわからないことがある。固有振動数や変形モード図、断面力分布などを見たときに、何を基準にしておかしいと思うか、判断を助けるようなものがあればいいなということです。これはソフトウェアではなく、講習会などで対応することかもしれませんが、便利になればなるほどそういうことが重要になってくるはずです。

技術開発グループでは、今後の方針として、耐震診断結果の高度利用ということを考えています。例えば、耐震診断をして建物がもつ/もたないだけでなく、その結果をどのようにお客様に活かしていただくか、もっと踏み込んだ提案をしていきたいということです。例えば、多数の構造物の維持管理を行いつつ、どのような順序でどの程度補強をしていくことが合理的かといったことです。また、その他に、コンクリートの非線形解析、初期応力状態、土構造物の耐震性能照査、断層変位への対応などの課題にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

そのためにもDINASの機能も、土の非線形構成式の追加/段階施工解析/大変形解析/10万点以上の大規模問題解析等、いま以上に充実させ、他のソフトウェアとの連携も強化していただけたら、と願っています。

インタビューを終えて │ 後 記 │Editor's notes
日建設計シビル様は、官型が多い土木分野の中で民間プロジェクトの業務が多く、数々の優れた実績を有されています。保有している技術、そしてたゆまない技術革新がプロジェクトに生かされている印象を受けました。そうしたプロジェクトにCRCで開発してきたソフトウェアを使用していただいていることを感謝するとともに、大いに責任も感じます。これからも良き協力関係を継続し、ソフトウェアに対しての機能拡張について様々なご意見、アドバイスをいただきますようお願い申し上げます。

最後に、川満様、西山様、本田様には大変貴重なお時間を頂戴致しまして誠にありがとうございました。(聞き手:CRC亀岡)

名称 株式会社 日建設計シビル
 
http://www.nikken-civil.co.jp/
本社所在地 大阪市中央区高麗橋4-6-2
設立 2001年7月1日(日建設計の創業は1900年)
代表取締役社長 三栖邦博
資本金 6,000万円
役員・職員数 206名(関連会社含む)
主な事業概要 土木施設に関する調査・ 企画・コンサルティング、 土木施設の設計・監理・ 引渡し後付帯サービス
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