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株式会社 ニュージェック 様高度なモデリング技術と評価で3次元解析に数々の実績
複雑な地盤モデリング・解析に3次元ツールをフル活用

お話を伺った方

  都市地域整備部 上下水道計画室 係長 
中野歩 様(写真左)
河川・海岸部 海岸室長 
家村健吾 様(写真右)


(株)ニュージェックは1963年、「世界でも屈指の黒四ダム建設」で活躍した建設、土木の中核技術者が結集し、(株)新日本技術コンサルタント(英文名:The New Japan Engineering Consultant, Inc.)として創業。以来、国内・海外の大型プロジェクトにおいて主力コンサルタントとして実績をあげ、次第にニュージェック(NEWJEC)の呼称が定着し、国際化が進む中で1991年に社名を現在のニュージェックに変更した。 事業分野の総合化により、現在では、河川、道路、橋梁、上下水道、港湾・空港、都市計画、環境、建築、情報、電気、機械等、幅広い分野でハイレベルな技術陣を擁している。 ニュージェックは、「優れた技術で社会に貢献する」を企業理念に、21世紀の地球環境コンサルタントとして総合力を発揮するとともに、新しい挑戦を続けている。

 株式会社ニュージェックの西日本事業部技術開発部は、ダムなど電力施設に代表されるエネルギー産業設備の設計から耐震設計に用いる強震動評価まで、幅広い建設コンサルティング業務を展開されています。同部では、CRCの2次元/3次元地盤FEM解析システム「Mr.SOIL3D」、浸透流解析システム「CatsFLOW」、個別要素法解析システム「UDEC」を導入されており、3次元のダム築堤解析など非常に高度なモデリング技術で行った実績をお持ちです。 同部でシミュレーション解析に取り組み始めたのは、もう20年近く前だそうです。それ以来、自社開発や市販品など各種のソルバーを利用してこられましたが、以前はきちんとしたプリポストツールは2次元解析用のものしかなく、3次元モデルは手作業で作成していたといいます。しかし、次第に3次元解析が増えてきたため、1998年11月、プリポストツールとして優れた機能を持ち、3次元解析のソルバーも備えた「Mr.SOIL3D」を導入されました。

導入当時から昨年3月まで、技術開発部において地盤解析などで高度な事例を手がけてこられた中野歩氏、家村健吾氏にお話をお伺いいたしました。 (注) 現在、中野氏は配水池など上下水道関係施設の設計に携わっておられ、家村氏は波浪、漂砂、津波などの解析に携わっておられます。

従来の2次元解析では過大設計になった。「法面対策」事例を3次元解析で設計。

Mr.SOIL3Dを導入して1年ほどたったころに、ダムやシールドトンネル、不整形地盤上のコンクリート構造物などを、3次元で解析する必要が生じてきました。
例えば、敷地のコーナー部の切り土斜面の対策工を設計するという事例がありました。当該箇所は、2つの法面が90度で向かい合っていたため、互いの法面の影響を考慮する必要がありました。これを、従来の2次元解析で設計すると対策が過大になる可能性があります。そのため、3次元解析を行って対策工を設計することになりました。

このモデルの作成は非常に難しく、Mr.SOIL3Dを使用しても2ヵ月以上かかりました。オートメッシュ機能を用いると、見た目にはきれいに表現できるのに、各々の物性値の境界で節点が連続していないのです。現在のMr.SOIL3Dのバージョンでは、そうしたケースでも使いやすく改良されていますが、当時はだいぶ苦労しました。ただ、他のソフトウェアではこのモデルは作れなかったでしょう。複雑な3次元のメッシュを作成するためには、モデルを3次元で視覚的にとらえることができるMr.SOIL3Dのようなツールが絶対に必要です。

この事例の場合、2次元と3次元による解析の結果、必要な対策にかなりの差がありました。しかし、その間のどこが最適な値なのかは、まだよくわかっていなかったので、3次元で評価した対策を施しながら、データの計測を続けて十分に地盤が安定したことを確認し、工事を終了することができました。結果的に2次元解析で必要とされた数量までは対策をせずに済みました。

 
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  法面の3次元安定解析
※画像をクリックすると拡大画像がご覧になれます。

3次元解析では評価の仕方も同時に考えていくことが必要。 

こうした3次元解析が増えてきた背景には、基礎地盤等の条件の悪い場所に構造物を設計することとなり、2次元解析だけでは十分に評価できないケースや、より詳細な解析が必要となるケースが増えてきたことがあります。また、2次元で設計すると基準ギリギリなので、3次元解析でチェックをして安全かどうか見ておこうというニーズもあります。

しかし、発注者側からみれば、いきなり3次元解析の結果を出されても評価に困ることも多くあると思います。挙動が複雑になると、3次元解析である数値が出たとしても、それが何を表しているのかよくわからないからです。 たとえば、現状では安全率が1.0の法面を、円弧すべり計算により安全率が1.2になるように対策工を設計したとします。この結果については、これまでの多くの経験から法面が安定するということはわかります。ところが、形状が複雑なすべりを3次元解析で安全率が1.2になる対策工を設計したといっても、実績が少ないため本当に大丈夫なのかという場合があります。

ですからまずは2次元解析を積み重ねて、それで解決できないときの手法として3次元解析をやってみようということになります。そして計測を続け、評価の方法も同時に考えていくことが必要になります。
ただ近頃は、設計基準にも特殊な場合はFEM解析でやるのが望ましいと書いてありますので、今後はもっと利用されるようになるのではないでしょうか。

モデル作成→解析→結果の出力の各過程で検証ができることも必要では?

ひとつ問題提起をするなら、モデルの作成から解析結果の出力までが、解析ツールの中で完全にブラックボックス化するのは少し怖い気がします。要所で人間の手が入るほうが間違いはなくなると思うのですが…。画面上でモデルを作って物性値を入れれば、次はいきなり答えが出てくるというのでは、何か1つ値を入れ忘れたりして、答えのどこかが変な挙動をしていても、変形や応力コンターになるとそれなりにきれいで気づかない恐れがある。

モデルを作成したところで、データが数値情報として出せて、それを確認してから計算を始めるとか、解析結果も絵で見るだけでなく理論的に計算したものと比べるなどの必要はあると思います。

開発費用低減に使いやすいツールは必須

とはいっても、最近は、設計費用の低減が求められるなかで、解析は設計のオプションとして付けることが多くなり、労力や時間をかけずに効率的に行うことが要求されています。つまりは「使いやすいツール」―プリポストが使いやすく、簡単にモデルが作れて、ソルバーの精度が高くて、さっと答えが出るというMr.SOIL3Dのようなツールは必須です。

Mr.SOIL3Dを使用すれば幾何学的な3次元解析ならすぐできます。ちょっと応力変形解析で検討してみたいと思ったら、1時間くらいですぐできるのでとても便利ですね。
現在、技術開発部では、土や地盤の解析を中心に行っている耐震防災室とコンクリート構造などの解析を行う構造室があり、Mr.SOIL3Dのモデリングや図化処理の機能は、当社開発の解析プログラムや他の動的解析ツールのプリポストとしても大いに利用させていただいています。その結果、モデル作成や図化処理にかかる労力を削減でき、考察や評価により多くの時間を割り当てることが可能になっています。CRCの浸透流解析ツール「CatsFLOW」を導入したのも、Mr.SOIL3Dのプリポストツールを使用することにより、解析にかかる労力を削減し、業務の品質を向上させたかったからです。

インタビューを終えて │ 後 記 │Editor's notes
解析ツールのパフォーマンスをフルに活かして、高度な解析技術を駆使する(株)ニュージェック技術開発部。導入いただいているMr.SOIL3D、CatsFLOWの将来のアップグレード機能についても、日頃より貴重なご意見をいただいており、まさに両ツールのパワーユーザーです。

最後に中野様、家村様には大変貴重なお時間を頂戴致しまして誠にありがとうございました。今後ともCRCに対する貴重なご意見、アドバイスをいただきますようお願い申し上げます。(聞き手:CRC村中)

※この記事は2002年11月15日のインタビュー内容に基づいて構成されています。


名称 株式会社ニュージェック
 
http://www.newjec.co.jp/
本社所在地 大阪市中央区島之内1-20-19
設立 1963年9月
代表取締役社長 吉村清宏
資本金 2億円
売上高 151億8,000万円(平成13年度)
従業員数 711名(うち技術者611名)
主な事業概要 土木・建築を中心に、電気、機械、情報通信、環境等を扱う総合コンサルタントとして、国内外で事業を展開。
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