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新・解析クラブ10周年記念インタビュー

インタビュー (2) 池上 泰史さん

アプリケーションサービス部 CAEサービス1課 大場 一輝

[2019/03/13]

はじめに

前回の阿部さんインタビューに続き、今回は池上泰史さんのインタビューをお届けします。池上さんは新・解析クラブの現編集長 (4代目) であり、昨年度はメールマガジンであった新・解析クラブのwebコラム化に尽力いただきました。また執筆者としてもこれまで11本の記事を投稿いただいており、この数は阿部さんに続く第2位となっています。池上さんには新・解析クラブの最近の取り組みと今後の課題に加え、記事の執筆者としてのお話もお伺いいたしました。

池上さんインタビュー (1) 編集長として

インタビューをさせていただいた池上泰史さん

インタビューをさせていただいた
池上泰史さん

――新・解析クラブ10周年です。ご存知でしたか?

いえ、今回の10周年企画の提案をいただいて初めて知りました。昨年度 (2017年度) に新・解析クラブの編集長として編集委員の方と過去記事の整理をした際、結構長く続いているんだな、という印象を持ちましたが、まさか今年が10周年ちょうどだとは思ってもみなかったです。

――そういえば昨年度、新・解析クラブの編集委員が集まって会議を開いているところを何度か目撃しました。過去記事の整理はその中で実施されたのですか?

そうです。昨年度の編集委員の皆様には例年と違う取組みにご協力いただき、感謝しています。

――編集委員が集まっての会議というものは、私が記憶する限りでは一度もなかったように思いますが、どういった経緯で開かれたのですか?

昨年度、新・解析クラブの編集長を拝命したときに過去のメールマガジンを読み返したのがきっかけです。改めて読み返すと、皆さん結構気合いを入れていい記事を書いていらっしゃるんですね。しかしその一方で文字の詰まった長文テキストメールであり、かなり見づらいことに気付きました。最後の記事に到達する前に読み疲れてメールを閉じてしまう人も多いのではないか…と思ったり。このままではもったいないと思い、てこ入れすべく編集委員の皆様と議論させていただくことにしました。

――編集委員の方のご意見はどうだったのですか?

当時の新・解析クラブの課題全般についてご意見をいただいたのですが、マンネリ化しているというご意見が多かったですね。一方的にメール配信するだけなので読者の皆様からのフィードバックが薄くなりがちという理由も大きいと思いますが、その一方でプロダクトによっては独自のメールマガジンを配信しているところもあり、そちらとの差別化という問題もありました。

――かなり厳しいご意見が多かったのですね。

はい。しかし、様々な業界に対し様々な専門分野のソリューションを展開しているCTCとしては、プロダクトごとの狭い世界で完結してしまってはいけないかと思います。読者の方々にCTCの幅の広い取り組みを知っていただく機会を提供するため、横断的に記事を配信する新・解析クラブは十分に存在意義があると思います。

――創刊時のコンセプトにつながる内容ですね。しかし課題山積のように聞こえます。

はい。それら課題の解決に向けて編集委員の方と議論させていただきました。その結果の1つが新・解析クラブのwebコラム化です。web掲載は一昨年の2016年あたりから始まっていましたが、当時はメールマガジンとして配信した後に1〜2ヶ月遅れでwebに掲載しており、あくまでも主体はメールマガジンでした。しかしweb上で見る記事はスッキリとして読みやすいですし、画像があるのもメリハリになって非常に良いと思いました。そのため、むしろこれをメインに据えてしまえば良いかな、と思い、webコラム化を決断しました。

――webコラム化は新・解析クラブ史上、最大の改革だと思いました。後追いでのweb掲載だと、配信時はメール文章だけなので結局全て文字で説明せざるを得ませんが、web主体になると、画像ありきの説明ができたりして、表現の幅がぐっと広がります。

確かに、そういった副次的効果も得られましたね。あと、engineering-eye(webサイト)を訪問いただける方が少しは増えたのではないかと思います。

――webコラム化するにあたり、他に工夫したところはありましたか?

なかった、と言うよりできなかったですね(笑)。予算的に。webコラムにしても、webページを新たに追加することになるので、webサイト管理スタッフにしてはそれなりの負担です。以前からの後追いweb掲載を前倒しするだけだから…とかなり無理を言ってお願いしました。それだけに、工夫をする余地がほとんどなかったです。

インタビューの様子

インタビューの様子

――webコラム化以外の取り組みは何かありましたか?

アンケート回答ページを設置しました。読者の皆様からのフィードバックは他の何よりも大きな励みになります。メールマガジンと違いwebコラムだとアクセス数の統計を取ることができ、これ自体が大きな進歩ですが、やはり生の声には敵わないです。

――阿部さんも読者の皆様からのフィードバックは非常に重要だとおっしゃっていました。アンケート回答は寄せられましたか?

いや、それほど得られていないのが実情です。アンケートページを設置する前、社内でよくアンケートを取っている事務担当の方に話してみたら「集まらないんじゃないですか?」と一刀両断されたことがあったのですが、実際やってみたらそうなりました(笑)。スパムメール対策のため記名式にしたのがいけなかったかもしれません。今後の課題の1つです。なお、アクセス数の統計からは、連成解析や新しい手法のような先進的なソリューションについての詳細な記事や、逆に基礎の教育的な解説がよく読まれていることがわかりました。

――マンネリ化の打破という点ではいかがでしたか?

いわゆる普通の雑誌のように特集を組んでみようと思い、2017年10月号〜12月号で基礎講座特集を実施してみました。しかし、その後が続きませんでした。

――どうして続かなかったのですか?

特集テーマに沿った記事を用意することが想像以上に難しかったです。新・解析クラブは社内技術者の皆様に仕事の合間を縫って記事を書いていただいているので、特集テーマに沿った記事がそうタイムリーに出せるわけではないです。記事の質を落としてまで特集を組んでも仕方ないと思い、やめました。しかし、何らかのテーマを設けたいという思いはずっと持っています。例えば歴史をまとめた記事、我々CTC科学・工学系のあゆみでもいいですし、特定の分野や製品の10年程度の発展を記したものでもいいのかな、と思います。

――様々な取組みにチャレンジされたのですね。私は今年度 (2018年度)、新・解析クラブの過去記事をweb上にアップロードする仕事に任命され、現在社内で活動していますが、これも昨年度の会議が発端なのですか?

そうです。昨年度はそこまで手が回らなかったので、今年度改めて担当者を決めていただくよう上層部へお願いしました。おかげさまでかなりきっちり整理いただき、10周年記事まで書いていただくことになりました。

――私が昨年度整理いただいた記事を再度整理し直していた際、過去の記事が2008年7月号からしか残っていなかったため、内容を確認してみたらそれが創刊号でした。そこから今年がちょうど10周年であることに気付き、折角なので10周年記事を是非、という具合にご提案させていただきました。

ありがとうございました。気付いていただけなかったら編集委員一同見逃すところでした。

新・解析クラブの改革案の提案文書

新・解析クラブの改革案の提案文書 (画像クリックで拡大)
日付が2017年8月末だが、この時点で既にweb移行のアイデアが提案されている。
しかし12月号におけるリニューアル施行までには数度にわたる打合せが行われており、
その間に少しずつwebデザインなどが固まっていったようである。

池上さんインタビュー (2) 記事の執筆者として

――ところで、池上さんは編集長としては今年が2年目ですが、新・解析クラブ創刊時より「超音波・電磁技術」分野で記事をご提供いただいておりました。今までで11本執筆いただいており、これは阿部さんに続き、全執筆者中第2位です。

全然知りませんでした。私以外にも結構執筆いただいているので、全く実感がないです。

――「超音波・電磁技術」分野は記事が全部で25本あるので、他の方の記事は合わせて14本ですね。阿部さんより前身の解析倶楽部のお話をお伺いした際、超音波・電磁技術分野も参加されていたとのことでしたが、解析倶楽部でもよく執筆されていたのですか?

たまに記事を提供していましたが、継続的に参加しているわけではなかったです。解析倶楽部はあくまでも構造・衝撃分野が中心でしたし。新・解析クラブの創刊時にちょうど私のチーム全体が原子力系の部署から製造CAE系の部署へ異動することになり、そこで初めて正式に製造系の一分野として参加するようになりました。記事執筆のルーチンに入れられた感じです(笑)。

2016年2月号の記事でご紹介した超音波探傷の実験装置(発電設備技術検査協会様にて)

2016年2月号の記事でご紹介した
超音波探傷の実験装置
(発電設備技術検査協会様にて)

――記憶に残っている記事などはありますか?

特別記憶に残っているようなものはないですが、例えばこの「フェーズドアレイ超音波探傷研究委員会活動報告」(2016年6月号) は、社外の委員会活動をさせていただいていた際に、その活動を紹介した記事ですね。委員会の幹事などもやらせていただいたのですが、弊社製品のComWAVEをお使いいただいている方がかなりいらっしゃって、持ち回りで計算して論文化したりと、有意義な活動をさせていただきました。そういった活動を他で紹介する際にこの記事をよく使用した覚えがあります。

――その時々のトピックスをタイムリーに発信するには、新・解析クラブは最適の場ですよね

そうですね。あとその前の「超音波探傷技術者向けシミュレータ(ComWAVE for NDE)の開発」(2016年2月号) は、普段実機に触れることのない私たちが実際に超音波探傷の実験装置を触らせていただいたときの様子を記事にしました。こちらも超音波探傷におけるComWAVEの活用例として、製品販売の幅を拡げる良い記事でした。

――単なる読者への情報提供に留まらず、実際のビジネス活動にも記事をかなり活用されているのですね。

そうですね。私たちのチームではComWAVEやMAGNA/TDMなどの自社製品を抱えていますが、自社製品ですので、自分たちで情報発信しないと誰も宣伝してくれません。そういった状況なので新・解析クラブも自然と情報発信の場として利用するようになったのではないかと思います。

池上さんインタビュー(3) 今後の新・解析クラブについて

――編集長の役職はいつまでつづくのですか?

編集長に任命された際に「2年は続けてね」と言われたので今年度いっぱいで終了ですかね。

――任務終了までもうすぐですね。昨年度からの改革の成果はいかがですか?

まだまだ道半ばです。来年度に編集長を交代すれば、様々な取組みも含めて引継ぎさせていただく形になると思います。

――しかしまだ温めているアイデアが何かあるのではないですか?

やってみたいことは色々とあります。最低でも昨年度の取り組みの結果をレビューし、もう一歩何か提案をしたいと思っています。

――今後の課題については今までも何度かお話が出ましたが、改めて教えていただけないでしょうか?

まずはマンネリ化の雰囲気を何とかしたいです。読者の皆様からのフィードバックが薄くなりがちなので、執筆者もどうして記事を書いているのか分からなくなります。その辺りの動機付けとして何か企画できればと思います。あと、分野を固定して担当を回しているので、新しい取り組みを行っている方が参加しづらい体制となっています。

――私もそれは気になっているところです。

特定のお客様向けの企業活動だとあまり新・解析クラブのような場は向いていないと思いますが、汎用製品のような、幅広い企業様とお付き合いのある方は情報を発信することで得られるチャンスは必ずあると思います。そういった観点で社内を見渡し、新しいことをやっている方々を柔軟に取り込めるような体制に変更していければいいですね。

――阿部さんからは若手にも記事を書いてほしい、というご意見をお伺いしました。

そうですね。若い技術者にも積極的に書いてもらいたいですね。文章が苦手と思っている人も多いかと思いますが、こういったのは訓練ですから。訓練の場としては非常にいい機会だと思います。執筆は頭の中を整理するいい機会でもありますし、自分の活動がCTCという企業活動の中でどういう位置付けになるのかなど、一段上からの視点で考えるきっかけにもなりますね。

――確かに、私も執筆時に関連する文献を調べたり関係する技術について周りに話をお伺いしたりすることを通して、曖昧な理解を整理するようにしています。直接的にはいい加減な記事を書けないという動機ですが、結果的に自分の理解を整理する良い機会となっているように思います。

まさにそういうことですね。

――ありがとうございました。

インタビューを終えて

阿部さんのインタビューで予想を超えて幅広いお話をお伺いした後だったので、インタビュー内容が重複しないか少し心配していたのですが、実際にお話をお伺いすると阿部さんとはまた違った視点で新・解析クラブについてお話をいただくことができ、ほっとするというよりむしろ驚きの方が大きかったです。また現編集長として様々なアイデアを企画し実行に移している様子は非常に感銘を受けました。阿部さんのおっしゃる「熱意」がまたここにも1つあった、といったところでしょうか。

終わりに

前半・後半の2回にわたり、阿部さんと池上さんのインタビューをお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?一見コンスタントに発行し続けてきたように見えた新・解析クラブですが、順調に見えたその陰には、ともすれば顔を出すマンネリ感とその先に見え隠れする廃刊の危機が幾度となくあったことがお分かりいただけたと思います。しかし、ネタ探しに苦労しながらもコンスタントに記事を提供してくれる執筆者の皆様、少しでも多くの方に記事をお届けしたいという編集長・編集委員の皆様の尽力、並びに継続して購読いただいている読者の皆様のご愛顧により、新・解析クラブ創刊から10年、前身の解析倶楽部からだと実に15年の長きにわたり、記事をこの活動を続けることができました。改めて読者の皆様にお礼申し上げます。これからも新・解析クラブは継続して様々な分野の話題をご提供させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

最後に、両名のインタビューでともに話題になりましたが、ご意見・ご感想などありましたら些細なことでも良いのでお寄せください。アンケート回答フォームでもお待ちしておりますし、執筆者に一声かけていただけるだけでも大変励みになります。何卒よろしくお願いいたします。

アンケート回答フォームはこちらから:
https://www.engineering-eye.com/inquiry/q191/