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コラム:AI・OR・最適化

デジタルツイン向けシミュレーションモデルの自動生成

科学ビジネス企画推進部 プロダクトサービス第2課 黒澤 明洋

[2023/12/22]

デジタルツインは、実空間上の出来事をサイバー空間上に模擬したもので、辞書には以下のように掲載されています。

“実世界における物理的対象の状態や挙動を、IoTやセンシング技術で取得し、その物理モデルを仮想世界にリアルタイムで再現する仕組み。CAEによる設計開発、産業用ロボットの動作シミュレーションのほか、スポーツ中継で各選手の動きをコンピューター上で再現する技術などに応用される。”
松村明監修、「大辞泉」第二版(デジタル大辞泉)、小学館、2023年6月版(Ver.22.0)

CTCでは、シミュレーションをサイバー空間として活用することを提案しています。シミュレーションを使うことで、見える化だけではなく、センサーを設置できない箇所の推定や、改善案を導入した場合の効果検証など、分析・最適化を行うことが可能になります。
デジタルツイン×シミュレーションに関する論文数は2019年から増加しており、注目度が増している分野になります。

”Digital Twin”と”Simulation”をタイトルに含む英語論文数。論文検索サイト(Google Scholar)にて調査

”Digital Twin”と”Simulation”をタイトルに含む英語論文数。
論文検索サイト(Google Scholar)にて調査

生産・物流の分野では、プロセスシミュレータが有効なツールになります。プロセスシミュレータは、部品、リソース(機械、コンベア、オペレータなど)および部品が流れる経路で実世界を模擬するもので、工場新設前の効果検証や、サプライチェーンマネジメントの最適化などに利用されています。

プロセスシミュレータ (WITNESS)のメイン画面

プロセスシミュレータ (WITNESS)のメイン画面

デジタルツインでプロセスシミュレータを利用する際の課題の一つに、人手によるモデルの構築が挙げられます。モデルの構築にはシミュレーションのスキルを持った人員が従事する必要があり、人員不足の場合は活用が困難になります。

今回は、この課題を解決する手法としてタイムスタンプからモデルを自動構築する手法について紹介します。品番などのID、処理した設備名、処理の開始時刻と終了時刻などが記載されたタイムスタンプを入力値とし、WITNESSモデルを出力します。

モデルの自動構築は、(1)生成、(2)チューニング、(3)パラメータマッチングの3ステップで行います。

図

(1)のモデルの生成においては、プロセスマイニングの技術を活用します。プロセスマイニングはイベントログからパラメータ、因果関係、優先順位など論理的な関係性を推定するもので、製造プロセス向けの分析手法も考案されています。

(2)のチューニングではモデルの修正を行います。プロセスマイニングを利用したモデル生成では、誤差や外れ値の影響で、実世界と生成されたモデルの間に乖離が発生する可能性があります。設備数、人員数などの数量や数値が決まっている場合は、この値に合うようにモデルを再生成します。

(3)のパラメータマッチングでは、実データとシミュレーション結果を比較し、誤差がある場合はモデルのパラメータを修正します。比較する対象は製品タクトタイムや出荷タイムラインなどになります。また、修正するパラメータは設備のサイクルタイム、製品の最大保管数などになります。

このフローで生成された情報をプロセスシミュレータ (WITNESS)用に変換することで、デジタルツインで利用可能なモデルを作成することができます。

CTCでは、デジタルツインソリューションだけではなく、導入の手助けになるような取り組みも行っております。

お問合せ先

Intelligent Twinサービス(お問合せフォーム: ページの下部)
https://x-simulation.jp/IntelligentTwin

参考リンク

製造業のGXに向けたデジタルツインソリューションを提供
https://www.ctc-g.co.jp/company/release/20230901-01619.html

生産物流シミュレータ WITNESS
https://www.engineering-eye.com/WITNESS/