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コラム:熱流体

二重管の伝熱を考慮した解析について

材料・工学技術部 応用技術第2課 石野 千恵子

[2022/01/27]

二重管の伝熱を考慮した解析を敷居が高いと思ったことはありませんか?

伝熱を考慮する代表例としては、図1①に示すように、二重管の内側を高温の流体が流れ、外側を低温の流体が流れる場合があります。熱は高温から低温に伝わるため、二重管の内側から外側に移動します。

熱交換器における流体の流れとして、1次側と2次側が同じ方向に流れる並流(図1①)、1次側と2次側が対向する向きに流れる向流(図1②)などがあります。これら並流と向流の流れにて、入口側温度を等しくした場合(並流T1=向流T1、並流t1=向流t2)の出口側温度及び温度分布の変化を比較します。

並流では、高温流体の温度は向流と比較し緩やかに減少、低温流体の温度は向流と比較し急激に上昇する様子がわかります。したがって、低温流体の加熱に向いているといえます。一方向流では、高温流体の温度は並流と比較し急激に減少、低温流体の温度は向流と比較し緩やかに上昇する様子がわかります。したがって、高温流体の冷却に向いているといえます。

この様子を解析から確認してみましょう。

図1 二重管の模式図と温度分布の様子

図1 二重管の模式図と温度分布の様子

初めに、伝熱についての理論式を確認します。
以下の式を用いると、伝熱を考慮した場合の温度等が求められます。

計算式

ここで、
計算式
となります。

二重管の内側の流体温度の場合、周囲雰囲気温度となる二重管の外側温度が変化するため、理論式を直接解くことは難しくなります。そこで、上記の式を使用し伝熱を解くSimcenter Flomasterを使用し、図1にて説明した並流と向流を模擬した解析を行ってみましょう。

解析用に作成したモデルを図2に示します。モデルの上側には高温の流体が流れ、モデルの下側では低温の流体が流れます。これは、図1における内側に高温流体、外側に低温流体が流れる状態と同様となります。配管の間に配置した要素によって熱を受け渡します。熱の受け渡しを行う地点はパイプ要素に設定した内部ノードとなります。内部ノードを細かく設定しますと熱の交換点が増え、より精度の高い分布となります。(a)は並流となっており、高温流体も低温流体も同じ方向へ流れます。(b)は向流となっており、高温流体と低温流体は反対方向へ流れます。

図2 One D Heat Transferを使用したモデル化。(a)並流、(b)向流

図2 One D Heat Transferを使用したモデル化。(a)並流、(b)向流

解析を行った結果を図3に示します。グラフの赤色の線は高温流体を表し、青色の線は低温流体を表します。(a)は並流の場合の、(b)は向流の場合の温度分布を表します。図1②(a)(b)で示した温度分布の傾向と同様となっていることが分かります。

図3 配管内での温度分布。赤色が高温流体、青色が低温流体を表す。(a)並流、(b)向流

図3 配管内での温度分布。赤色が高温流体、青色が低温流体を表す。(a)並流、(b)向流

このように、伝熱を考慮した解析を実施でき、複数点での熱交換も容易になりました。本例では二重管の伝熱を検討しましたが、Simcenter Flomasterに実装されたOne D Heat Transfer要素では並列に配置されたパイプ同士の熱伝達や雰囲気との熱伝達が容易に検討できるような新機能が続々と追加されています。CTCではこのような機能をタイムリーにお伝えすることで、お客様の生産性向上のお役に立てるよう取り組んでまいります。

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1次元熱流動解析ソフトウェア Simcenter Flomaster
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