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コラム:マテリアルデザイン

分子動力学法を用いた金属樹脂界面における界面熱抵抗の解析

材料・工学技術部 材料技術第2課 加藤 信彦

[2021/11/25]

近年、異なる素材を適材適所で複合的に使用することで、構造物の機能を向上させる、マルチマテリアル化が注目されている。マルチマテリアル化においては、異なる材料の接合部がウィークポイントとなるため、異種材料接合技術の進歩が求められている。金属-樹脂の接合もその一種であり、自動車ボディへのCFRPの適用や、軽量化を目的とした金属のプラスチックへの置換を進める上で、重要な要素である。また、金属-樹脂接合部では界面の剥離に伴い熱抵抗、電気抵抗が上昇することが知られており、パワーモジュール等の電子デバイスへの適用において接合部の特性がデバイス性能に与える影響は大きい。本研究では、界面の熱特性として重要となる界面熱抵抗を、MD法を用いて解析し、界面の微視的状態と界面熱抵抗との関係を調査した。

本研究では熱可塑性ポリマーであるPA6およびMXD6をモデルとして使用した。また、金属表面はα-Al2O3を採用し、表面形状の性状の差異を調べるために、面方位が(0001)面の清浄表面とアモルファス表面を考慮した。図1に金属-樹脂界面モデルを示す。界面の熱特性の評価には非平衡MD法(NEMD法)を用いた。NEMDより得られる金属-樹脂界面の温度ギャップを評価することで、界面熱抵抗に関する知見を得ることができる。

図1 金属-樹脂界面モデル

図1 金属-樹脂界面モデル

図2に表面方向温度プロファイルの計算結果を示す。図2の界面(図中の破線位置)の温度差より温度ギャップを見積もることができ、PA6とMXD6を比較すると、MXD6の方が界面の温度ギャップが小さく 界面の熱伝達がよいことが分かった。これはMXD6の方が金属表面との密着性がよいことを表している。また、Al2O3表面が清浄表面の場合とアモルファスの場合を比較すると、アモルファス面の方が界面の温度ギャップが小さくなり、密着性が高くなることが確認できた。

図2 複合モデルの温度プロファイル(左上:PA6/Al2O3(0001)、左下:MXD6/Al2O3(0001)、右上:PA6/Al2O3(アモルファス)、右下:MXD6/Al2O3(アモルファス))

(b)MXD6/Al2O3(0001)の温度プロファイル (d)MXD6/Al2O3(アモルファス)の温度プロファイル

図2 複合モデルの温度プロファイル
(左上:PA6/Al2O3(0001)、左下:MXD6/Al2O3(0001)、
右上:PA6/Al2O3(アモルファス)、右下:MXD6/Al2O3(アモルファス))