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コラム:熱流体

二次電池冷却における熱流れの1次元モデル化

材料・工学技術部 応用技術第2課 小山 敦久

[2021/10/28]

製品開発期間の短縮に対応するため設計の上流段階からシミュレーション等を活用し、設計の効率化、設計品質の向上を目指す動きが広がっています。形状(3D CAD)データのない設計の上流段階では形状をパラメータとして扱える1次元のシミュレーションが活用されていますが、適切な結果を得るためには3次元の現象をどのように1次元モデル化するかが重要となります。

そこで本コラムでは図1に示す二次電池ユニット空冷システムにおける熱流れを対象に1次元モデル化の例をご紹介します。

図1 二次電池ユニット空冷システムの回路図

図1 二次電池ユニット空冷システムの回路図

熱流れを1次元モデル化する場合、まず図2に示すように伝熱経路を検討します。

図2 二次電池ユニットの伝熱経路検討例(簡易版)

図2 二次電池ユニットの伝熱経路検討例(簡易版)

この例では単純化のため電池の発熱量を電池中央(A)に代表して持たせています。また電池は上下に2分割してモデル化することとし、電池の熱容量の半分をそれぞれ上下の代表点(C)に持たせています。もちろん電池の発熱量をC点に2分割して持たせたり、電池を2分割以上としたりすることも可能です。

電池内の熱伝導(B)は伝導距離が長い上下方向のみ考慮し、電池から空気への熱伝達経路は計6か所(D、E)としています。また空気から電池ユニット外部の雰囲気への放熱を考慮するため、空気から電池ユニットの外表面、電池ユニットの外表面から雰囲気への放熱(F、G、H、I)を設定しています。

このように伝熱経路を検討してから、その結果をもとに1次元の解析モデルを構築します。ここでは1次元熱流動解析ソフトウェアSimcenter Flomasterで作成したモデルを図3に示します。

図3 二次電池ユニットの熱流れの1次元モデル化例(1セル分)

図3 二次電池ユニットの熱流れの1次元モデル化例(1セル分)

このモデルでは電池の大きさや発熱量は入力パラメータになっているため、設計の上流段階でシステムの要件を満たすためにどれくらいの値が必要になるかを見積もり、設計の方向性検討に利用することができます。また各因子の相関関係が可視化されているため、要求に対してボトルネックとなっている箇所が容易に特定できる利点もあります。

さらにここではご紹介していませんが形状をパラメータで扱うことの利点として、今回のセルの並びのように同じような要素が複数並列で並んだ構造の場合、面積や発熱量の値を調整することで複数の要素をまとめ、モデルをさらに簡略化することも可能です。複数の要素をまとめると要素内の分布は見えなくなります(平均化されます)が、要素の個数もパラメータとして扱うことができるようになります。

今回は単純なモデル化例をご紹介しましたが、1次元モデル化のためには物理現象を十分理解し、3次元の現象を1次元にリダクションする能力が必要となります。CTCはこれまでに培った解析技術を基盤として、このようなモデル化の支援サービスも行っています。

関連製品についてはこちら

1次元熱流動解析ソフトウェア Simcenter Flomaster
https://www.engineering-eye.com/FLOWMASTER/