コラム:再生可能エネルギー
エネルギービジネス推進部 早﨑 宣之
[2021/09/28]
地球温暖化の脅威を背景として、世界的にカーボンニュートラルに向けた動きが進んでいます。カーボンニュートラル実現に向けた再エネ主力電源化の課題とデジタル技術活用の必要性についてご紹介いたします。
2021年8月に公表されたIPCC報告書では、人間活動の影響が大気・海洋および陸域を温暖化させてきたことは疑う余地が無い、と初めて明記されるに至っており、持続可能な社会に向けて、2050年に向けて可能な限り早期にカーボンニュートラルを目指す事が必要とされています。それでは世界のCO2排出量は現在までどのような変遷をたどってきたのでしょうか?国際エネルギー機関(IEA)がまとめた、世界のエネルギー起源CO2の排出量の推移の資料からは、これまでの経緯が確認できます(図1参照)。
世界の経済発展に伴いCO2排出量は年々増加しており2020年のCO2排出量は約30Gtでした。2020年からコロナ禍において世界的に経済活動の抑制を余儀なくされましたが、それでも前年との差では約3Gt程度しかCO2排出量は下がっていません。現在のCO2排出量を半減させるためには1980年レベルの排出量に抑える必要があり、CO2排出量ゼロに向けては1900年レベル以下の排出量に抑える必要があります。単なる経済活動の抑制だけでは、カーボンニュートラルの実現は非常に困難であることは想像に難くありません。
このような課題のある中で、再エネ電源をはじめとした非化石電源の更なる導入拡大と、その活用に向けた技術革新や業界横断的な社会構造の変革:グリーン・トランスフォーメーション(GX)が求められています。カーボンニュートラルを社会的責任として捉えるだけでは無く、成長の機会として捉えた動きが始まっています。
日本においてもカーボンニュートラルに向けたエネルギー基本計画の見直しが進んでいます。再エネ電源を2030年に向けて今後10年以内に倍増させる一方で火力発電などの化石電源を減少させることを通じて、再エネ主力電源化が計画されています(図2参照)。
従来は火力発電の出力調整などを通じて、電力需要の変動は吸収され電力の安定供給は実現されてきましたが、今後の再エネの主力電源化に伴い、気象現象の動きに応じて不確実に変動する太陽光や風力などの再エネ電源の導入が更に進む一方で、火力電源などの調整電源が減少するため、電力の供給(発電)と需要のバランスをとることは、より困難となる見込みです。今後、より高度な電力システムへの変革が必要とされています。
再エネ主力電源化に向けた電力システムの変革に向けた方向性としては、電力システムの柔軟性(フレキシビリティ)の向上が挙げられます。天気の変化に応じて不確実に変動する太陽光・風力発電などの再エネ電源の出力状況に応じて、電力システム全体で電力をより柔軟に融通させ、電力の安定供給とCO2削減を同時に目指す取り組みが必要なためです。
電力システムの柔軟性向上に向けては、電力システム全体(発電~需要)のビッグデータ基盤の整備やAI・IoTなどのデジタル技術の活用が求められます。例えば、太陽光・風力発電の変動を適切に把握することで、気象予測技術とAI・IoTを連携した太陽光・風力の出力変動の出力予測や、設備故障の予兆検知なども可能になり、電力システム全体の最適化に向けた制御・運用につながります。今後、カーボンニュートラルという大きな目標に向かって、業界横断的に全体最適化を目指したデジタル化の推進も求められます。
CTCは過去20年以上にわたって再エネ分野での技術蓄積をおこなっており、最近10年は電力エネルギー分野の業界動向に対応したデジタル化を支援するべく、データ収集から活用までの全工程を支援する先端技術を活用したソリューションの提供を進めてきました。今後、これまで蓄積した技術・経験・知識をもとに、カーボンニュートラル実現や再エネ主力電源化に向けた貢献を進めるべく、更なるソリューションの高度化を進めていきます。
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