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コラム:機構・切削

Lifecycle simulation workflow

材料・工学技術部 応用技術第1課 山崎 義昭

[2021/07/27]

機構解析を行なった後で、応力解析や疲労解析の結果が必要になる場合が少なからず発生します。これまでは、これらの解析結果を得るためには、機構解析の結果(システムの動的結果)から評価に必要な現象時間でのジョイント反力、加えられた力、または表面圧力などをポストプロセッサーから取得し、それを別途作成した有限要素法のメッシュモデルに手動で与えて解析を行う必要がありました。
これに関して、次期リリース予定のDAFUL新バージョン2021R2の中に興味深い機能が追加される様ですので紹介いたします。

DAFULの新バージョン2021R2に向けて、変速機解析における一連の作業の手間を大きく減らすためのシミュレーション・ワークフローが開発されました。このワークフローは以下の3つの機能で構成されています。

  1. 1D Vehicle Simulator(1D車両シミュレーター)
  2. Drivetrain Auto Modeler(ドライブトレインオートモデラー)
  3. Durability Analysis(耐久性解析)
図1 Durability Analysisへのワークフロー

図1 Durability Analysisへのワークフロー

ユーザーは、まず「1D車両シミュレーター」を利用することで時間領域における入出力トルクを容易に計算することができます。
次に機構解析のためのモデルが必要になりますが、モデルを作成するにあたって、「ドライブトレインオートモデラー」を利用すればCADから変速機のモデルを作成するのにかかる時間を節約することができ、作成されたモデルに「1D車両シミュレーター」から得られた変速機の入出力負荷履歴データを与えて動的解析を行うことで、ギヤ歯面の応力解析をおこなうために必要な歯面の接触力パターンを得ることができます。
その後、「Durability Analysis(耐久性解析)」機能を利用すれば、動的解析で得られた荷重を使用した各コンポーネントの応力解析をモデルの作成から解析実行まで自動処理が可能で、最終的に疲労解析につなげることができます。

ここでは、3つの機能のうち「Durability Analysis(耐久性解析)」に焦点をあてて紹介いたします。

図2 Durability Analysis

図2 Durability Analysis

Durability Analysis(耐久性解析)では、動的解析結果を使用して応力解析および疲労解析を実行します。

① ドライブトレイン ツールキットを利用することで、変速機における歯車やシャフトを弾性体の効果を考慮した剛体ボディを活用して高速で動的解析を行ない、各ジョイントや歯面に発生する力を計算します。

② 解析メニューの中の「Durability」を選択して、Durability Analysis(耐久性解析)を起動させます。

③ 変速機を構成するコンポーネントの中から応力解析をおこなうものを選択して、材料データを紐づけ、「Applied Load」ボタンを押すことで、動的解析から得られた力が選択したコンポーネントのモデルに自動的に設定されます。

④ 「Simulation」ボタンを押すと、コンポーネントのCADデータはEasyFlex機能により自動的に弾性体に変換され応力解析が実行されます。

⑤ 解析の実行が終了したら「Result」ボタンを押すことでポストプロセッサーを起動させて、解析結果を確認することができます。

図3 Durability Analysisの流れ

図3 Durability Analysisの流れ

耐久性解析では、剛体ボディはEasyFlexボディに変換されて自動的に応力解析が実行されます。この解析においては、選択したコンポーネントに対して動的解析から取得したすべての力を使用して解析が行われます。さらに、疲労解析では、この応力解析で得られた結果を基にして計算が行われます。

以上の解析例では、変速機解析のワークフローの中でドライブトレイン・ツールキットの計算結果を利用した剛体ボディのギヤ応力解析の流れに着目してみました。しかしながら、今回紹介した「Durability(耐久性)解析」機能は、上記のワークフローの計算結果のみならず、DAFULにおける一般的な機構解析の計算結果を利用して同様に応力計算をさせることができます。
つまり、剛体ボディを利用した通常の機構解析の検討を行った後で、容易に応力解析結果や疲労解析結果を検討することができるようになります。

現在、弊社ではDAFULに関する「体験セミナー」などをオンライン環境にて随時開催させて頂いております。さらに、解析関する相談会なども随時開催いたします。お気軽にお問合せください。

関連情報
参考文献
  • DAFUL 2021 R2 Release Note