カーボンフリーやカーボンニュートラル、カーボンオフセットやカーボンポジティブ、そして脱炭素や水素社会など、二酸化炭素削減に関係するこれらキーワードのニュースをここ最近特に耳にし、エネルギー変革の大きな波を感じます。
このような二酸化炭素を排出しないあるいは抑制する社会を実現させるには化石燃料を極力使用せず、水素H2やアンモニアNH3など燃えても水や窒素となる燃料の利用と再生可能エネルギーの活用等が必要になります。
またエネルギーはエネルギーを作る（製造）、運ぶ（輸送）、貯める（貯蔵）そして使う（利用）の大きく4つのフェーズに分かれ、各フェーズは複雑に関連し、DX（デジタルトランスフォーメーション）を活用し最適性や効率性を加味したサプライチェーンも検討しなければなりません。
そこで本コラムはカーボンフリーを実現する為のグリーンアンモニアの製造に先ずは着目し、1DCFDの適用例を紹介します。

グリーンアンモニア

アンモニアNH3はもちろん物性として1種類ですが、その製造方法と製造時に生じる二酸化炭素の系外への排出有無により、以下のように主に3種類に分類されます。

• グレーアンモニア
  天然ガスなど化石燃料から製造される従来の方法で作られたアンモニアをグレーアンモニアと呼びます。
• ブルーアンモニア
  CO2を系外に排出せず回収した二酸化炭素を油田に圧入し、油田に残った原油を押し出しつつCO2を地中に貯蔵するなどの技術を活用したアンモニアです。
• グリーンアンモニア
  太陽光や風力といった再生可能エネルギーを使用し、製造されたアンモニアです。フロー図は以下となり、次節に1DCFDの適用を示します。
  

  グリーンアンモニア製造のブロックフロー例

グリーンアンモニア製造における1DCFDの適用

グリーンアンモニア製造のブロックフロー例に示した各系統、すなわち空気や水の系統、窒素や水素の系統、そしてアンモニアの系統に対し1次元熱流動解析ツールであるSimcenter Flomasterを使用しモデルを作成、物理法則に従った挙動を表現、予測する事が可能です。以下に代表的な検討例を示します。

• アンモニア輸送システムにおけるバルブ急閉鎖
  バルブの閉鎖やポンプのトリップなどのシステム操作は、システムの安全性と信頼性そしてコストに大きな問題を引き起こす可能性があります。このような安全上重要なイベントの影響を効果的にモニタリングでき、高速で正確な検討環境をSimcenter Flomasterは提供する事ができます。
  下図はアンモニア輸送システムの供給制御バルブが閉鎖された際の系統内圧力の検討例です。このように急激なバルブ閉鎖に伴う圧力が予測でき、系統を満足するようなオペレーションを容易に検討する事が可能です。
  

  アンモニア輸送システムにおけるバルブ急閉鎖

• アンモニア生成プラントと供給システム
  下図はアンモニア生成プラントから制御バルブを介して8ヶ所にアンモニアを供給するシステム例となります。アンモニアの需要と供給のバランスはアンモニア生成プラントの効率的な運用に必要不可欠であり、システムの最適な流量を確保し、またパフォーマンスを最大化する為に様々な運用を検討する必要があります。
  

  アンモニア生成プラントと供給システム例

  下図はアンモニア生成プラントと供給システムの検討例となります。画面左側の8個のスライドバーから制御バルブの開度を解析実行中に変更でき、各供給ラインのバランス等を設計者がダイレクトに変更、解析に反映させ検討する事が可能です。
  一方で自動制御の実装やPIDなどの制御、そして他システムと連成させる事が可能である為、DXを活用した検討にも対応しております。
  

  アンモニア生成プラントと供給システム検討例

今回のコラムでは、カーボンフリーを実現するグリーンアンモニアに着目し、1DCFDの適用を紹介しました。カーボンフリーを実現させる為のエネルギーキャリアとしてアンモニア以外に水素やMCH（メチルシクロヘキサン）も大いに着目されており、CTCでは今後これらのキャリアについての事例やソリューションをご提供し、今後ともお客様のサービス向上に取り組んでまいります。