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数理最適化ソルバーによる試薬品梱包計画の最適化

DSビジネス推進部 シミュレーションビジネス課 綛 宜史

[2021/05/27]

「試薬品」とは、使用用途に応じた品質が保証され少量使用に適した供給形態の化学薬品のことであり、工業化学薬品とは区別して取り扱われます。
化学薬品は危険物に該当するため、取り扱いや梱包・輸送方法に関する細かなルールを守る必要があります。統一的なガイドラインとして国際連合が定めた「危険物輸送に関する勧告」があり、日本でも海上輸送や航空輸送については国際連合の勧告に準じた法律となっています。陸上輸送については日本が他国と陸続きでないことから国際条約に加盟しておらず、危険物の陸上輸送を規制している消防法等の危険物区分は国際的なルールとの違いが大きいことが知られていますが、近年国際的な分類に合わせる方向で改定が行われています。
危険物は品名毎に包装しなければならないのが原則ですが、「少量危険物」の場合には品名の異なる危険物を同一外装容器に収納することが可能です。ただし、危険度合いが高いものは少量であっても「少量危険物」として扱うことはできません。
多くの試薬品は「少量危険物」として扱えますが、梱包する数量や梱包する危険物の組合せに制限があり、人手でその制限を考慮して梱包計画を立てることは大変手間のかかる業務となっています。
本稿では、試薬品梱包最適化問題の概要と、数理最適化ソルバー「Gurobi Optimizer」を用いて試薬品梱包最適化問題を扱った事例をご紹介します。

危険物の分類

「危険物輸送に関する勧告」では危険物を大きく9つのクラスに分類しています。また、クラスの中で危険度に応じてさらに分類されています。

表1 危険物クラスの分類

クラス 危険物 区分 詳細
クラス1 火薬類 1 火薬類、爆発物
クラス2 高圧ガス 2.1 引火性高圧ガス
2.2 その他高圧ガス(非引火性ガス)(非毒性ガス)
2.3 毒性高圧ガス
クラス3 引火性液体類 3 引火性液体類
クラス4 可燃性物質類 4.1 可燃性物質
4.2 自然発火性物質
4.3 水反応可燃性物質
クラス5 酸化性物質類 5.1 酸化性物質
5.2 有機過酸化物
クラス6 毒物類 6.1 毒物
6.2 病毒をうつしやすい物質
クラス7 放射性物質 7 放射性物質等
クラス8 腐食性物質 8 腐食性物質
クラス9 その他の有害性物質 9 その他の有害性物質

このうち、クラス1(火薬類)、クラス7(放射性物質類)、クラス4.2(自然発火性物質)、クラス6.2(病毒をうつしやすい物質)、およびその他の危険物の一部は「少量危険物」として取り扱うことはできません。また、危険物の中には複数の危険物クラスに属するものや、どの危険物クラスにも属さないものがあります。

少量危険物を混載するときの条件

少量危険物を混載する場合には以下の条件を満たす必要があります。

  1. 容器容量
    当たり前ですが、容器の容量を超えて梱包することはできません。
  2. 数量制限
    危険物の中には輸送許容量に制限があるものがあり、それを超えて梱包することはできません。複数の危険物を混載する場合は、各危険物の許容量に対する割合(Q値)の合計が1を超えてはいけません。
    数量制限
  3. 容器等級
    危険物には危険度に応じて容器等級が定められており、容器等級を満たさない容器には梱包することができません。
  4. 混載不可クラス
    少量危険物は原則として混載可能ですが、危険な物理的又は化学的作用を起こす恐れがあるものは混載することができません。例えば以下のような危険物クラスの組合せは混載することができません。
    • 3(引火性液体類)と5.1(酸化性物質)
    • 4.2(自然発火性物質)と5.1(酸化性物質)
    • 4.3(水反応可燃性物質)と8(腐食性物質)
  5. 危険物クラスの種類の数
    容器内の危険物クラスの種類の数に制限がある場合があります。例えば危険物クラスが3種類までに制限される場合は、クラス3、クラス4.2、クラス6.1、クラス8に属する4種類の危険物クラスを同一容器に梱包することはできません。

数理最適化ソルバー「Gurobi Optimizer」による梱包容器数の最小化

CTCでは最適化ソルバー「Gurobi Optimizer」を用いて、梱包容器数を最小化した試薬品梱包計画を自動的に生成するプログラムを開発しました。このプログラムの解(各容器に梱包された試薬品の組合せ)は、危険物の混載条件を満足する組合せになっています。

図1 試薬品梱包最適化計算の結果例

図1 試薬品梱包最適化計算の結果例

図1は22種類の試薬品梱包最適化計算の結果例です。別の試計算では120種類のべ470の数の試薬品に対して、計算時間10分以内に最適解を得ることができました。

近年、ハードウェアおよびアルゴリズムの進歩によって複雑な組合せ最適化問題に対して数理最適化ソルバーの応用範囲が広がってきており、過去に解けなかった問題も解けるようになったという事例が増えています。今後もさまざまな問題への適用を検討しております。

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