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コラム:熱流体

非圧縮性流れ専用ライセンスのリリースと
対応する解析事例のご紹介

材料・工学技術部 応用技術第2課 北岡 佳貴

[2021/02/25]

1次元熱流動解析ソフトウェアであるSimcenter Flomasterは水やオイル、LNGなどの非圧縮性流れ、空気や天然ガス、水素などの圧縮性流れ、そして冷媒や蒸気などの気液二相流など様々な作動流体を使用した検討が可能なCFDシミュレーションツールです。

最新版であるSimcenter Flomaster 2020.2では、これら作動流体の中から特に汎用性が高い非圧縮性流れに限定したLiquid Systemsライセンスが新たに追加リリースされました。このライセンスでは下表の解析が可能です。

表組

本コラムではこの新ライセンスを使用して検討可能な主な事例を紹介します。

○圧力損失/流量配分の検討

ビル内の消火栓設備や空調設備(流速が比較的遅いケース)、そして上下水道設備、また工場やプラントなどのスプリンクラー設備や冷却系設備など各種配管系の流れに対し、圧力損失や流量配分を検討するのは設計する上で重要な因子となります。

設計として導いた圧力や流量が各種法令を遵守できるのか、ポンプ仕様や配管サイズが妥当であるのか、冷却流量は確保できているのかなど、比較的簡単な配管系の場合は手計算でも検討ができると考えますが、複数の分岐合流を有する配管系の場合、検討に時間がかかると思います。下図はビル内の消火栓設備の流動解析を検討した例となります。モデルは地上5階、地下1階建ての室内消火栓を表現しており、5階部分の消火栓が動作した際に、十分な放水圧と放水量を維持できるかを検討しています。

図

下図はスプリンクラー設備の流配を検討した例です。設計では、24箇所のスプリンクラーヘッドから同じ放水量を維持する必要がありました。しかし供給元からヘッドに到達するまでのパイプ長の違いや分岐の影響などにより、ヘッド部までの圧力損失は個々に異なりヘッド調整用絞りが同じ場合、放水量が個々に異なる事が想定されます。

この場合下図左側に示したように必要な放水量を個々の調整用絞りに入力し、解析を1度行うだけで入力した流量に合致する調整用絞りの径を得る事が可能です

図

○熱バランスの検討(Excel VBAを使用したパラメトリックスタディ)

下図は冷却回路の熱バランスを検討した例です。本例ではポンプ回転数、機器の発熱量そして空冷である熱交換器の風量の3つの変数を変化させ、冷却水の温度や熱交換器の仕様が十分であるかどうかを検討します(パラメトリックスタディ)。複数の変数そして各変数の値が複数ある検討の場合、逐次Flomasterを起動するのは効率良くありません。そこで下図のようにExcelシート上に変数や各変数の値を設定し解析を実行することで、検討に必要な結果を自動的にExcelシート上に出力でき、効率よく検討できます。

またこのExcelVBAシートは弊社より無償提供され、熱バランスだけでなく圧力損失/流量配分の検討やポンプトリップの検討でも利用できます。

図

○ポンプトリップ(液サージ)の検討

電源消失によるポンプトリップやバルブ急閉鎖などにより、流れが急変する事で圧力変動が生じます。この圧力変動が伝播し各機器や配管系統を形成するパイプ、バルブなどに及ぼす影響(許容圧に耐えるのか、また負圧はどの位置で生じるのかなど)を事前に机上にて検討する必要があります。

下図はクーリングタワー管路系におけるポンプトリップ時の過渡圧力事象の検討です。ポンプがトリップした際にタワー頭頂部の負圧や負圧を回避する為のAir弁設置の検討、そしてポンプがトリップした際に、自動起動ロジックを含むポンプ予備機の起動検討などが可能です。

図

また、ポンプ起動時に液体が気体を押し出す液充填解析で、系統内の制御弁に液が達した際の圧力が制御弁の耐圧以下であるのかなども新ライセンスで検討可能です。

CTCは上記のような事例やソリューションをご提供し、今後ともお客様のサービス向上に取り組んでまいります。

関連製品についてはこちら

1次元熱流動解析ソフトウェア Simcenter Flomaster
https://www.engineering-eye.com/FLOWMASTER/