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コラム:製造・構造

ノンパラメトリック最適化

材料・工学技術部 応用技術第1課 田村 茂之

[2021/02/25]

機械部品の設計では、なるべく少ない質量で、荷重を支える等の目的で、形状最適化は、必要なプロセスですが、これを自動化させるのが、最適設計支援ソフトと呼ばれるプログラムです。寸法等を変化させる、パラメトリック最適化の他、部品に穴を空ける等でトポロジー自体を変えてしまう、ノンパラメトリック最適化(トポロジー最適化)と呼ばれる手法が有ります。ノンパラメトリック最適化の場合、ドラスティックな形状変更が可能で、容易に想像できないような複雑な形状が出てくる等の特徴があります。ノンパラメトリック最適化は、古くは、ミシガン大学の菊池教授が発表されているように、1980年代から使われてきた手法ですが、いくらでも複雑な形状が出来てしまうため、加工の制約等から、なかなか効果的に使うのは難しい状況でした。最近では、3Dプリンタ等で、例えば、機械加工の難しい、アンダーカットのあるような部品も自在に製造できるようになり、再び注目を集めています。今回は、ノンパラメトリック最適化を行うソフトである、ダッソー・システムズ社製のTosca Structureについて紹介します。

ノンパラメトリック最適化では、体積を削減、追加することにより、トポロジーを変化させます。例えば、少ない重量で最大剛性を得るような最適化を行う場合は、まず、Abaqus等の構造計算ソフトで解析を行い、ひずみエネルギーの分布を見ます。このうち、ひずみエネルギーの大きい部位は密度(ヤング率)を追加し、小さいところは削減していくことで、ひずみエネルギーの集中を解消しながらトポロジーを変化させて行きます。ここでは、実際に有限要素を削除するのではなく、要素の密度およびヤング率を変更していきます。変更した解析モデルを使い、再び構造計算を行います。これを繰り返し計算することで、ひずみエネルギーの集中を抑え、同じ重量で最も剛性の高い形状を得ることが出来ます。

図は、コントロールアームのトポロジーを最適化した例です。赤色の部分は非設計領域(変化しない部分)、目的関数は剛性の最大化、制約条件は体積70%、面外方向への型抜き可能な形状を維持、という条件で計算したものです。この例では、十数回の繰り返し計算で、トポロジーの最適化が実施され、70%の体積で最も剛性の高い形状が得ることが出来ました。

図1

得られた形状は、メッシュ等の都合で、凹凸が生じ、そのままでは、設計に利用することが出来ませんので、CAD形状や、メッシュへフィードバックするため、スムージングを実施します。スムージングを実施すると、以下のような形状が得られます。

図2

制約条件には、加工の制約から、スタンピング可能な形状にする、鍛造可能な形状にする、カット角度の制限を指定する等の制約を付けることが出来ます。

Tosca Structureには、下図に示すように、形状最適化(Shape)、サイジング最適化(Sizing)、ビード最適化(Bead)の機能が有ります。形状最適化は、応力の高い所は増肉し、低い所は減肉し、応力集中をなくし、バランスを取る機能です。サイジング最適化は、板材の板厚を変更して重量を最適化する機能です。また、ビード最適化は、ビード形状を変更し板材の固有振動数や剛性を最適化する機能になっています。

図3

Tosca Structureの最適化モジュール

Tosca Structureのライセンスは、SIMULIA Abaqus Extended Tokensにより、Abaqusと同じTokenタイプのライセンスで、動作させることが可能で、また、Abaqus/CAEから問題の設定することが可能で、Abaqusユーザーには大変使いやすい設計になっています。

このように、Tosca Structureは、Abaqusと一体化し、比較的簡単な操作で、トポロジー最適化が実行出来、機械部品の軽量化と耐久性向上に大きく役立てることが可能です。みなさまの業務に、お役立て頂ければと思います。