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コラム:熱流体

非ニュートン流体の1次元解析

材料・工学技術部 応用技術第2課 石野 千恵子

[2020/10/29]

日常生活において歯磨きのペースト、トマトケチャップ、マヨネーズといったどろりとした液体を目にする機会が多々あります。一方、水やサラダ油などはさらっとしています。このように流れは、流れやすさによって分けることができます。流れやすさを表す1つ指標として粘度があり、粘度の高い流体は流れるのに大きな力が必要で、反対に低い流体はわずかな力で流すことができます。
さらさらの水やサラダ油などは、流す際に与える力が小さいだけでなく、力を大きくしても粘度は変わらず一定となります。このような流体を「ニュートン流体」といいます。下図のラインAがニュートン流体を示しており、傾きが常に一定(粘度が一定)である事が判ります。
一方歯磨きのペースト、ケチャップ、マヨネーズなどはニュートン流体の特性に従わない、すなわちラインAのように単純に比例関係にならならいため非ニュートン流体といいます。そして非ニュートン流体は下図のように複数種類に分けられ、以下に特徴を示します。

図
  • ビンガム塑性流体(Bingham Plastic Fluid):
    トマトケチャップや塗料などで、ある程度の力を与えないと流れださず流れだした後は、一定の粘度となる流体です。
  • 非ビンガム塑性流体(Yield-pseudoplastic Fluid):
    マヨネーズ、アスファルトなどで、ビンガム塑性流体と同様にある程度の力を与えないと流れだしません。そして流れ出した後はビンガム塑性流体と異なり粘度は一定とならず、力によって大きくなったり小さくなったりする流体です。
  • 擬塑性流体(Pseudo-plastic Fluid):
    でんぷんのり、溶融プラスチックなどで、力が大きくなると粘度が減少し、流れやすくなる流体です。
  • ダイラタント流体(Dilatant Fluid):
    水溶き片栗粉などで、力が大きくなるほど粘性が増加し流れにくくなる流体です。

このような様々な非ニュートン流体において、例えば分岐する管路に対し各管路の流量配分を適切に調整したい、またポンプ選定で仕様がオーバースペックではないか適切に確認したいなどの要望が増えてきました。
そこで1次元熱流動解析ソフトウェアであるSimcenter Flomasterではこれらの要望に対応するため、バージョン2019.3からニュートン流体だけでなく非ニュートン流体が解析可能なパイプ要素が加わりました。直管のみの対応ですが、基本設計フェーズにおける系統全体の配管サイズや長さの検討での活用が期待されます。

モデル化可能な非ニュートン流体の種類は、ダイラタント流体・擬塑性流体・ビンガム塑性流体・非ビンガム塑性流体の4種類です。非ニュートン流体の特性は、せん断速度とせん断応力の関係のグラフの作成、ダイラタント流体・擬塑性流体といった粘性係数がせん断速度のべき乗として表せる流体の場合はパイプ要素にべき乗の係数の入力を行うことで設定できます。

それではSimcenter Flomasterを用いて、水(ニュートン流体)、アップルソース(擬塑性流体)、コンクリートスラリー(ダイラタント流体)の入口圧力を10秒で2barから4barに変動させた場合に経過時間と体積流量の関係がどのようになるか解析してみましょう。以下のモデルを作成します。

図

解析結果を以下のグラフに示します。

図

アップルソースの解析結果からは、低流量では粘性が高く、流れにくい状態であることがわかりました。約5.5秒にて流量の増分の向きがなだらかになっています。これは、層流から乱流への遷移が起こったものと考えられます。またコンクリートスラリーは入口圧力が4barでもほとんど流れない事が確認できます。
この解析結果から、ニュートン流体と非ニュートン流体では圧力変動時の流量変化の挙動が異なることがわかりました。そのため、非ニュートン流体に対してより適切な解析を実施したい場合には非ニュートン流体に対応した解析を実施するのが良いと考えられます。

Simcenter Flomasterは非ニュートン流体の取り扱いが可能となりました。開発元及びCTCはこのような機能の改良・改善に取り組んでまいります。

関連製品についてはこちら

1次元熱流動解析ソフトウェア Simcenter Flomaster
http://www.engineering-eye.com/FLOWMASTER/